⼤丸松坂屋百貨店が展開するファッションサブスクリプション事業「アナザーアドレス(AnotherADdress)」が3年目を迎えた。立ち上げ当初はウィメンズのみを取り扱っていたが、現在ではメンズ、アートと展開を拡大。12月1日からはアップサイクルブランド「リアドレス(reADdress)」を立ち上げ、一点物のレンタルに乗り出す。
年率約300%の成長 アナザーアドレスの現在地
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アナザーアドレスは月額5500円(ライトプラン)から展開ブランドのアイテムをレンタルできるサブスクリプション型サービス。「マルニ(MARNI)」「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」といったデザイナーズブランドも多数取り揃え、今年11月末時点で276ブランドをラインナップしている。クリーニング不要で返却できる点も魅力の一つだ。サービス開始から2年半で累計レンタル数は15万着を超えた。マルニやメゾン マルジェラに加えて、「アドーア(ADORE)」「マックスマーラ(Max Mara)」「アローブ(Arobe)」「セオリー(Theory)」といったブランドが特に人気が集中しているという。
現在の会員数は約6万人。デザイナーズブランドの服を定価よりも手頃に着られる点や、時間や空間の制約がある現代人のライフスタイルのニーズにマッチしたほか「ファッション潜在層を取り込みたい」という狙いが当たり、年率約300%の成長を継続している。会員の平均年齢は43.5歳。居住エリアでは関東圏をはじめ、関西圏、中部圏の三大都市圏で9割を占めており、都市に住む大人のワーカーからの支持が高い。平均解約率も1.11%と低水準を維持できており、3年目に入ってからは買い取り客数と追加チケットの購入率が上がったことで客単価が上昇するなど、好調に推移しているという。
アップサイクルで“本当の”循環型ビジネスを
当初はウィメンズのみ展開だったが、今年3月にメンズの取り扱いをスタート。男性会員がウィメンズを、女性会員がメンズを着用するケースも増えているという。9月からは現代アートのレンタルも開始するなど、カテゴリーの幅を拡大している。
これらに続いてスタートするのがアップサイクル商品のレンタルだ。アナザーアドレスでは返却された服に対し、チーム全員による検品の条件をクリアした服のみ、再びレンタルに出すことができるという判断基準を設けている。その結果、2000着ほどが検品基準を満たせず、社内セールなどに回されていたという。実際にはまだ着られるのにレンタルに出せない──「服は使い捨てではない」という信念で立ち上げた当初の思いとの乖離を感じた事業責任者の田端竜也氏は「サーキュラープロジェクト」と題し、アイテムの寿命を伸ばす施策に着手。リアドレスはその一環と位置付ける。
Image by: 大丸松坂屋百貨店
リアドレスでは、レンタル基準を満たせなくなったアイテムをクリエイターとともに一点物として蘇らせ、「JAPAN CRAFTSHIP(日本の手仕事の素晴らしさを継承し発展を目指す)」「TRACEABLE(商品に使われた技術、誰が手掛けたのかなど過程を透明性をもって伝える)」「CIRCULABLE(デザイナーが想いを込めたアイテムの寿命を伸ばし、仕入れたものを責任を持って循環させる)」の3つのコンセプトに基づき、再びレンタルを楽しめるように取り組んでいく。アップサイクルするのはアパレルのみならず、グループ会社のパルコで使われていた設備備品なども対象とする。
深黒染めしたアップサイクル品
Image by: 大丸松坂屋百貨店
第1弾となる12月は京都紋付による深黒染めを施したアップサイクル商品を実現。100着ほど用意する予定だ。2024年1月は、今年2月に閉店した津田沼パルコのエントランス扉ハンドルバーに、安野谷昌穂やwitnessといった8組のアーティストにより新たな価値を施し、廃材アートとして再生。2月にはパネル使いやパッチワーク技法を駆使したリメイクアイテムを30着弱ほど展開する計画で、詳細は同月に発表する。
Image by: FASHIONSNAP
これらの取り組みに関しては当然ブランド側にも拒否権があるが、「深黒染めに関してはほとんど断られていない」(同氏)という。ブランドによってはダブルネームで提供する。リアドレスで制作した一点物の買い取りについては現在検討段階だという。
また、検品チームによる条件をクリアできなかった商品でも品質がほとんど気にならないものは、価格を引き下げてレンタルができる「ロングライフアイテム」の展開も開始。2000着のうち、600〜700着が対象となっている。
目指すのは「ファッションニューライフ」の実現
この2年半、ブランド側から撤退を希望する声は現時点で届いておらず、参加を希望する声が相次ぐなど、サービス自体はポジティブな評価だ。男性会員は8000人で伸び率に若干苦戦しているというが、田端氏はこの2年半の業績について「計画通りで推移している」と総括。今後は1.5〜2倍ほどの成長率で次の中期(2024年度〜2026年度)の最終年度までに損益分岐点を超えることを目指す。
成長の鍵は「選びやすさ」だという。ブランド数や在庫量は倍で増えたが、今後は在庫に関して適正量を調整していく方針。事業収益性の確立に向けてはデータ販売、物流や修繕でのコストの見直しなどに取り組むことで利益の創出を狙う。リアドレスでは「会員が所有する服のアップサイクルにも挑戦してみたい」と語った。
アナザーアドレスで目指してきたのは、ただの“レンタルサービス”ではなく「ファッションニューライフ=ファッションの新しい消費スタイルの実現」。ローンチ時に“百貨店のファッションサブスク”として注目を集めた同事業は、本当の意味での循環型ビジネスへの挑戦を続ける。
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