■チェーンストア最大手のウォルマートのCEOであるダグ・マクミランしは昨年度の第4四半期(11~1月期)決算声明で「我々は従業員によって牽引され、ITパワーのオムニチャネルリテーラーだ(We're a people-led, tech-powered omnichannel retailer)」と述べた。
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CFOのジョン・デビッド・レイニー氏も「我々はオムニチャネル・リテーラーになりました(We have become an omnichannel retailer)」と宣言した。
今年3月にはSEC(証券取引委員会)に提出した10K(年次報告書)で同社のビジネスを「ウォルマートは、人々主導のテクノロジーパワー型オムニチャネル小売業者であり、世界中の人々のお金を節約し、より良い生活を送るために尽力しています- いつでもどこでも(Walmart Inc. is a people-led, technology-powered omni-channel retailer dedicated to help people around the world save money and live better ? anytime and anywhere)」と変更したのだ。
それまで同社は「ウォルマートは世界中の人々のお金を節約し、より良い生活を送れるよう支援します(Walmart Inc. helps people around the world save money and live better)」としていたことで大きくビジネスを変容していることが伺える。
オムニチャネル・リテーラーになったことで1月末から10月末の9ヶ月間でスーパーセンター24店舗を含む110店を閉鎖している。しかも3四半期連続して売上高に既存店・売上高まで前年を上回っている。
チェーンストア理論で成長したニトリが米国から1年前に撤退し、チェーンストア理論の鑑として一時代を築いたベッドバス&ビヨンドが半年前に崩壊した。
日本のメディアではオムニチャネルがすでにワードとして使われなくなっているが、アメリカの流通の現場ではチェーンストアからオムニチャネルに明らかに移っている。
死語になるオムニチャネルが支持される調査結果が新たに発表された。
食品マーケティング協会(FMI)らの協賛のもとで調査されたグローサリー・ドッピオ(Grocery Doppio)のレポートによると、買い物客の4人中3人の割合でネットスーパーを利用している。
店の売り場だけで買い物したり、オンラインのみで食品を購入するシングルチャネル客よりオムニチャネル客は支出が1.5倍にも上るのだ。
5,100人以上を対象にアンケートしたところによると、ネットスーパーでは最も購入される食品カテゴリーとしてペットフード(83%)、日用品(76%)、パーソナルケア(73%)、缶詰等のパントリー(73%)、飲料(53%)になっている。
オムニチャネル客は売り場で買い物する場合でも店に行く前から買い物リストの作成(77%)や売り場での商品有無の確認(76%)、商品のある売り場検索(69%)等を行っている。
売り場だけで買い物するお客は月に669ドル、オンラインだけで購入するお客は659ドル支出するのに対してオムニチャネルショッパーは月に1,043ドルも支出するのだ。
オムニチャネルショッパーはロイヤリティも高く、オンラインオンリー客は平均で1.3ポイントの悪い買い物体験で離脱するのに対して、オムニチャネル客は4.2ポイントと我慢強い。
つまりチェーンストアはネットスーパーなどECと店舗を組み合わせたオムニチャネル体験でオムニチャネルショッパーを育てることで顧客の生涯価値(Customer Lifetime Value)が最大化するだけでなく、お客をロイヤリティの高いコア顧客にさせるのだ。
一方、オムニチャネルショッパーの顧客体験でロイヤリティを最も揺るがすものとして欠品(84%)、決済(79%)、ピックアップ(77%)のそれぞれの体験がインパクトがあるとしているのだ。
日本では「チェーンストア理論の瓦解」を報じられることはほとんどない。それぞれの利害が関係しているため店舗の減少が売上増とは言えないのだ。
しかし米国流通の現実はウォルマートなど大手チェーンストアを中心にオムニチャネルショッパーに針路を定めているのだ。
⇒こんにちは!アメリカン流通コンサルタントの後藤文俊です。後藤はお店(売り場)とストアアプリの関係をテレビとテレビリモコンの関係に喩えています。テレビリモコンのおかげでテレビの場所までわざわざ行かずにチャンネルを変えたりボリュームを操作したりスイッチのオンオフができます。最近ではテレビリモコンにネットフリックスやプライム・ビデオの専用ボタンがついてサブスク視聴がさらにカンタンになりました。買い物でいうところのシームレスであり、手間もないフリクションレスな体験です。エントリー記事にあるのをテレビリモコンに例えれば、テレビの視聴時間が伸びるということです。テレビリモコンにネットフリックスのボタンが追加されたようにスマートフォンにウォルマート・アプリが固定化されることでロイヤリティの高いコア客にもなるということです。考えるまでもありませんが、スマートフォンを起動したらLINEやインスタグラム、TikTokのそばにストアアプリがあれば他の買い物のチョイスがないので「ウォルマート離れ」みたいな離脱がしづらくなるのです。
当ブログの読者はテレビリモコンにあるネットフリックス・ボタンを見るたびにウォルマートに思えてきますよ(笑)。
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