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髙島屋の購入型クラウドファンディング第1弾、「和紙100%ネクタイ」の魅力

髙島屋の購入型クラウドファンディング第1弾、「和紙100%ネクタイ」の魅力

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大手百貨店のひとつである株式会社髙島屋が、2019年に新しい試みとして独自のクラウドファンディングのサイトを立ち上げた。その名も「髙島屋クラウドファンディング」だ。クラウドファンディングとは、インターネットを使って企業や個人が魅力ある商品やサービスのアイディアを提示し、それに賛同した人々が資金的な支援を行うもので、近年人気を博している資金調達の仕組みである。

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先日「購入型クラウドファンディング」の第1弾が発表された。それが「和紙100%ネクタイ」だ。和紙100%というのもさることながら、この商品は文化学園大学の学生が主体となって企画したものというから驚きだ。これまでいくつものネクタイを扱ってきた髙島屋が推し出すほどの、魅力ある商品ということだ。

この度、同社MD本部の清水信宏さんと新宿店販売第2部の洞内浩さんに、今回のプロジェクトの概要をお聞きし、商品の魅力を語っていただいた。

PROFILE|プロフィール

左:清水 信宏(しみず のぶひろ )右:洞内 浩(どううち ひろし)

清水 信宏 株式会社髙島屋 MD本部 MD政策グループ洞内 浩 株式会社髙島屋 新宿店 販売第2部 紳士服・紳士雑貨 ストアマーチャンダイザー

クラウドファンディングの始まり

同社がクラウドファンディングを始めたのは、2019年のことだった。最初に立ち上げたのはクラウドファンディングの中でも寄付型と呼ばれるもので、社内の起業制度からの発案がきっかけだった。当時から将来を見据えた計画を立てており、購入型のクラウドファンディングの実施も検討していたとのこと。その結果、2023年10月に従来の寄付型と購入型を統合した自社サイト「髙島屋クラウドファンディング」をスタートした。

同社が本格的に取り組みを始めたクラウドファンディングということもあり、大きな注目の的になった。百貨店が何を扱うのか、他社のサービスとの差別化はどうするかなど、数々の課題があったと思われるが、そのようななかで発表されたのが「和紙100%ネクタイ」だった。しかも、その商品は同社が考案したものではなく、文化学園大学の学生が企画したものというから、さらに注目度は高まるだろう。

もともと文化学園大学のファッション社会学科のゼミナールで、商品企画をして販売するという企画があった。そこで以前から同大学と交流のあった株式会社キュアグループと同社にそれぞれ提案があったようだ。

清水さんは、「学生にスポット当てて、未来の人材育成に寄与するプロセスがまさに当社が目指す購入型クラウドファンディングの意義に合致していたため、1stローンチのコンテンツとして一緒に進めることにした」と振り返る。

「和紙100%ネクタイ」の魅力とは

大学のゼミナールでは、学生がいくつかのグループに分かれてキュアグループの「和紙繊維」を使用した商品企画を発案し、最終的にプレゼンテーションを行った。発表時にはシューキーパーやスリッパ、リュックサック型ぬいぐるみなど、多様な案が提出された。その中で、最終的に選ばれたのがネクタイだった。

長年ネクタイを扱ってきた百貨店の観点からすれば、「ネクタイはシルク素材が一般的なので、和紙100%で作るイメージが湧かなかった」と清水さんは語る。それゆえ、「自分たちでは思いつかない和紙100%のネクタイを発想する学生たちの感性に斬新さを感じた」ようだ。

こうした従来の枠にとらわれない商品の提案は、クラウドファンディングの魅力のひとつだろう。カジュアルなファッションでも楽しめるネクタイにしたいという熱い思いが学生にはあった。ネクタイはビジネスアイテムだから、ネイビーや落ち着いた色目にするべきと助言をすることは簡単だ。だが、そのような固定観念にとらわれた発言は、せっかくの学生が提案した商品の魅力も半減させてしまう。

そこで素材の選定や染色後のイメージなどは、百貨店としてのこれまでの経験から情報を共有し、その上で最終的な判断は学生に委ねたという。他方で、販売経験や新商品の開発の経験が長い洞内さんが、実際の販売までを見据えて、販売価格に関わる原価の仕組みや工程についてレクチャーをしたり、また家庭用品品質表示法と自社の基準に適う品質管理を担ったりした。

「カジュアルにも使えるネクタイというコンセプトから、適度に色が抜けたように染まる和紙繊維は商品の表情として面白いものができるのではないかという期待があった」と洞内さんは語る。

もともと本企画の中には、学生が自然素材を徹底的に追求し、染色も自然なものを探すという課題があった。通常なら色移りや色落ちを懸念して自然なものを使った染色は避けるのだが、今回はゼミナールの中でも自然をテーマに掲げていたこともあり、果汁をしぼった後のブルーベリーと、種子を搾油して得られるえごまの油の残渣から染料を作ることになった。商品としての仕上がりを見ても、ナチュラルで優しい色合いが春を迎える時季にぴったりだという。

洞内さんは「常識にとらわれていた私たちでは企画できない商品であり、意外だったのは予想以上にスーツにもジャケットスタイルにもマッチする商品になったことです」と語り、「既成概念にとらわれない自由な発想とものづくりの大切さを実感した」という。

「和紙100%ネクタイ」は、11月30日まで髙島屋新宿店の2階ウェルカムゾーンと6階のネクタイ売り場で展示されている。店頭で実物を見て、その場でクラウドファンディングのサイトから購入したお客もいるようだ。あくまでも本商品はクラウドファンディングが基本のため、店頭で直接購入することはできない仕組みになっている。プロジェクト自体は11月30日まで実施されているので、実物を確認したい人やこの取り組みが気になる人は、新宿店に足を運ぶといいだろう。

クラウドファンディングの今後について

今回、「髙島屋購入型クラウドファンディング」の第1弾として、文化学園大学とキュアグループの3者の協同プロジェクトとして「和紙100%ネクタイ」を発表し、その取り組みや商品の魅力などを語っていただいた。若い将来ある学生の企画を商品化するという魅力ある活動だが、それも同社の信念が関係している。

「これまで髙島屋グループが培ってきたお取引先や教育機関等とのネットワークや、世にまだ知られていない商品を発掘する目利き力を生かし、新たなアイディアから生まれた商品や生産者支援に繋がる商品など、社会的意義のある取り組みを提案していきます」

クラウドファンディングを通じた活動によって、百貨店に馴染みのなかった若者や新規顧客の獲得に繋がっていくことを目指すという。だが勘違いしてほしくないのは、この活動がただ単に百貨店の生存戦略のためにあるのではないということだ。

「次世代に残すべき商品や技術を発掘し、広く支援者を募ることで、文化・産業の発展にも寄与していく」と清水さんが語るように、私たちがもつ有形・無形の文化的な遺産を継承していくためのひとつの方法として、この「髙島屋クラウドファンディング」は存在するのである。

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