最近
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店は客のためにあり、店員と共に栄え、店主と共に滅びる
というタイトルの本が出版され、ずいぶん前にこの本のタイトルと同じ題でアップしたブログエントリーに再びアクセスが集まっています。
小売業に携わる方なら、聞いたことのあるであろう、このフレーズ
ホントに小売業の本質を、こんな短い言葉で表せるなんて
いつ読んでも、身が引き締まる言葉です。
先週、ユニクロが中国の販売員給与を最大4割引き上げることを決定し、正社員、パートの給与アップを10月から実施しているというニュースを目にしました。
成熟期も後半に入っていると思われる国内事業は現状維持?
(と言っても原価や人件費が上がる中でのコスパの維持は並み大抵のことではありませんが・・・)
一方、今後の事業拡大の伸びしろは特に
成長期真っ只中の中国本土、そして成長期に突入した東南アジアにかかっているでしょう。
先日同社が公開した地域別損益によれば、中国事業も東南アジア事業も日本よりも利益率が高いので、
出店拡大や更に販売効率を高めるためには、支払い余力のある人件費アップがユニクロの海外での成長に欠かせない人材集めの切り札のひとつだと思われます。
今回の報道に引用されている
「ユニクロでの仕事は時給が安い上に、清掃業務などもしなければならない」
という中国でアルバイト経験のある学生のSNS投稿が中国国内で話題を呼んだ
というくだりを読んで思ったのですが・・・
そもそも、中国で大卒採用で、例え小売企業であっても、
入社した社員が店頭に立ちたがらないというのは、多くの中国企業の本部研修をさせて頂いて、感じていることです。
かの地では、本部で働く人と店頭で働く人は別ものである、と考えているところが多いんです。
ましてや小売業が基本中の基本とする「クレンリネス」への参加は自分の仕事ではない、
ありえないと考える人も少なからずいることは想像に難くありません。
ユニクロやZARAのようなグローバルチェーンが上手く行っている理由のベースにあるのは、
言うまでもなく「店頭起点」です。
お客様が頂点にいて、お客様の近くでお買い物の手助けをする店舗スタッフをいかに本部が支援するかが徹底しているわけですが、
多くの中国のアパレル企業は本部員は偉くて、店舗スタッフは言われた通りに売るのが仕事って感じなんです。
僕の研修は、ベストプラクティスとして、ユニクロやZARAなどの成長企業の取り組みを題材にして考えてもらうことが多いのですが、
そんな方々がユニクロやZARAの表層的なオペレーションを見習ったところで、彼らのようになれるわけがないわけで・・・
彼らと我々の何が違うんだ?と言われても、店頭起点か否か、と問題提起しても、それを「店頭データを重視すること」と勘違いされることすらあります。
グローバルトップのZARAにしても、ユニクロにしても、H&Mにしても、
それらの企業の幹部たちは店頭販売経験を経て、本部の仕事をしているのが常識です。
特にZARAは、インナープロモーション(内部昇格)と言って、
世界各国の店舗で働いて、お客様のことを熟知したスタッフがスペイン本部に招聘され、
幹部職になるような昇格を理想的な形と考えているんです。
また、中途採用の社員も人事だろうが、ITだろうが、まずは、期限なしで店舗に放り込まれ、
本人が小売業(お客様のために働くこと)を楽しみ始めたころに、
本部においでと、声がかかって本部業務に携わるそうです。
そうしたら、本部に行っても、どうしたらお客様のためになるか、
店舗の仕事のしやすさを考えて本部業務をするから、
目的にかなった、誰もが納得する、ムダのない仕事ができるんですよね。
一方、店舗勤務を命じられ、その間、これは俺の、私の仕事じゃないって腐って止めてしまう人は、
どんなに優秀でもそれまでだと考えるところがあるようです。
なぜなら、そんな方が小売業の本部の仕事をしても、お客様のためになる仕事ができるかどうかわからないからです。
ちょっと話がそれますが・・・
国内でいろいろなプロジェクトにかかわっていると、
本部の方々に多いのですが、お客様のため、というより、自分たちの評価のために、部署を守るために、
責任を押し付け合っているケースが少なくなかったりします。
それって部分最適というか、部署最適?いずれにしてもお客様最適ではありません。
そんな時の魔法の言葉があって、「どちらの方がお客様にとっていいですかね~」と聞くんです。
店頭経験者の多い会社のいいところは、その言葉を聞くと「はっ」と思い出すんでしょうね。
歩み寄って最善案を考え始めます。
そんなメンバーのいる会社のプロジェクトは話が通じやすくて、比較的スムーズに進むのでありがたいです。
さて、話を戻して・・・
ユニクロの中国でのチャレンジはそんな中国の小売業の世界で、
店頭を経験した上で、お客様最適視点で、店舗を、事業を、運営できる経営者候補を
どれだけ増やせるかにかかっていると言えます。
もう既に中国内での市場シェアもナンバー1規模なので、
そんな、お客様最適で考える小売業のプロを育てる、
業界「新常識」を中国で広げることもできるのではないか、と期待します。
給与も伴うことで、仕事の常識、キャリアの常識を是非、変えて頂きたいです。
執筆:ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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