村上亮太が手掛ける「ピリングス(pillings)」が、2024年春夏コレクションを発表した。10月1日まで一般来場者も入退室可能な展示会を行っている。
昨シーズン数多く登場した縮絨をかけたデザインを継続し、今シーズンは布帛を用いることで「生活のどうしようもなさ」を表現。その他、シルクなどに施される塩縮を施すことで表地が縮み、デザインされた裏地が飛び出した不思議なシルエットのトップス、一般的にポケットの裏地に用いられるスレキを表地に使用することで「洗い終わった後に飛び出したポケット」を表現したワンピースなどをラインナップする。
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村上は「妻が長期間出張となり、初めて自分で洗濯をするようになった」と明かし、脱水や乾燥をかけることでシワクチャになった服が着想源になったと説明。
「本当に洗濯の仕方を知らなくて。ウール生地の服を乾燥にかけたりしてしまったんです。そういう『生活のどうしようもなさ』を表現できればと思いました」(村上)
同ブランドが得意とするニットアイテムでも、縮絨を用いたアイテムを複数展開。あえて曲線的に編んだニットに更に縮絨をかけることで、後ろ身頃や袖に奇妙な凹凸を生み出したベストや、糸屑をイメージしたほつれが特徴的なハンドニットアイテムなど、全18型を用意する。
ピリングスの2024年春夏コレクションは、サラ・マイノ(Sara Maino)の推薦で9月20~25日まで開催されたミラノ・ファッション・ウィーク(Milan Fashion Week)に参加。太宰治著の「鴎」が朗読される中、同コレクションの製作背景や、村上が撮影した写真や動画がスライドショー形式で流れる映像作品を発表した。投影されている村上が撮影した写真は「以前から北野武監督作品の『ソナチネ』が好きで、訪れたいと思っていた」と話す、沖縄県石垣島の風景。「観光地でもない石垣島の小さな浜辺は観光客も少なく、外出してもアウェーな雰囲気を常に感じ、せっかく旅行に来たのにビジネスホテルに閉じこもって仕事をしていた」と話す村上の姿は、朗読されている太宰治の「鴎」から容易く想像することができる。
いいとしをして、それでも淋しさに、昼ごろ、ふらと外へ出て、さて何のあても無し路の石塊を一つ蹴って転がし、また歩いていって、そいつをそっと蹴ってころころ転がしふと気がつくと二、三丁ひとつの石塊を蹴っては追って、追いついては、また蹴ってを転がし、両手を帯のあいだにはさんで、白痴の如く歩いているのだ。(中略)みずたまりには秋の青空が写って、白い雲がゆるやかに流れている。水たまり、きれいだなあと思う。(中略)この小さい水たまりの在るうちは、私の芸術も処よりどころが在る。この水たまりを忘れずに置こう。
ー太宰治「鴎」より
ピリングスがミラノ・ファッション・ウィークで発表した映像作品 Video by pillings
沖縄の綺麗な青空と、せっかく旅行に来たのにあまり外に出たくない村上の鬱屈とした気持ちは、「鴎」で綴られているように、無理に上を見て歩くのではなく、下を向いて歩いていたらたまたま水たまりに写り込んだ空で晴れやかに昇華されたのだろう。「近所の喫煙所で撮影した」と話す同コレクションのルックは、どこか海風の影響でボロボロになった沖縄の建物を思わせる。
フィジカルショー形式で発表した2023年秋冬コレクション以降、新規6店舗で卸が決まり、売り上げも前年同期比で約1.8倍に伸長。村上は「ショーでの表現が売り上げに繋がっている実感がある」とコメントし、2024年秋冬コレクションのフィジカルショー開催に意欲を見せた。
■pillings 2024年春夏コレクション展示会
※一般来場者も入退室可能
会期:2023年9月27日(水)〜2023年10月1日(日)
営業時間:12:00〜20:00
会場:東京都渋谷区神南 1-9-7 丸栄ビル 101
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