花王が、中期経営計画「K27」の成長ドライブの柱に据えている、化粧品事業とスキンケア事業の成長戦略を加速する。化粧品事業ではグローバル市場でのシェア拡大に向け、ファーストランナーとして「センサイ(SENSAI)」「モルトンブラウン(MOLTON BROWN)」「キュレル(Curel)」の3ブランドを掲げ、スキンケア事業ではUVケア・セルフタンニング・環境プロテクションの3つを軸に推進。スピーディな変革を目指した、「グローバル・シャープトップ戦略」を実行する。
同事業の課題として地政学リスクを鑑み、1つのエリアに集中せずグローバル全体でバランスの取れた事業拡大を目指す。一方で日本市場では市場で拡大するEコマースや、GMSの縮小などに対応する戦略を取る。また今後の市場動向として、アジア市場の活性化、ジェンダーレスな美容意識の高まり、フレグランスやダーマコスメ市場の成長といった変化が見込まれることから、それらに投資を集中し、各地域および各カテゴリーでNo.1を獲得できるブランドを、M&Aも視野に入れ複数育てる計画だ。花王 上席執行役員 化粧品事業部門長の前澤洋介氏は、「成長市場である中国・アジア、すでにセンサイやモルトンブラウンで基盤を持っている欧州を中心に強化し、地球全体を市場として捉えたグローバルな事業部門へと本気で成長させ、グローバルセールスでベスト10入りを目指す」と意気込みを語った。
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化粧品事業では、今後の全社的なグローバル人材の育成およびインフラ整備に向け、ファーストランナーのブランドで海外実績を積む。欧州発で40年の歴史を持つセンサイは、国産シルクや「丁寧に繊細に生きる」といった独自の世界観を付加価値に、中国を中心にアジア地域での富裕層をターゲットにした戦略を強化。まずは上海で3ヶ年計画として、年内に上海に旗艦店を出店するほか、百貨店やモールへの出店、高級ホテルでのアメニティ導入などラグジュアリーなタッチポイントを創出し、ドミナントモデルを構築。中国のそのほかの大都市部にも同モデルを拡大し、2030年までに売上3倍に成長させる。現状約90%を占める欧州売り上げを半分にしグローバル化を進める計画だ。
英国発のラグジュアリーフレグランスブランドのモルトンブラウンは旗艦店のほか、高級ホテルでのアメニティでラグジュアリーな体験を提供するほか、Eコマースでも購入できる利便性を兼ね備えた「モルトンブラウン・ヴィレッジ」戦略を、日本を含むアジアで洗練されたホテルライクなライフスタイル志向の層に向けて展開。ソウル、台北に続き11月にマレーシアへの進出を予定し、2024年に香港・マカオ、タイ、シンガポール、インドネシアの出店を計画、欧州以外のアジア比率を高め、2030年までに1.5倍の売上拡大を目指す。
キュレルは世界的なダーマコスメ市場の拡大を背景に、日本で培った乾燥性敏感肌へのソリューションをグローバルに発信。各地域の肌悩みを踏まえた商品開発も視野に入れ、中国を中心としたアジア市場、欧州での展開により、2030年までに売上1.5倍を目指す。
このファーストランナー3ブランドの次のブランドとして、グローバル戦略ブランド「G11」から、「カネボウ(KANEBO)」と「ケイト(KATE)」を掲げた。カネボウは日本で実行し好調な、“希望”を発信するパーパスドリブンなブランディングをアジア全体に波及させ、ケイトはアジアの若年層のファン獲得に向けて体験拠点の設立を計画するほか、メタバースなどでの発信にも力を入れる。
当初予定で化粧品事業の売上3000億円規模の達成の期間を2025年としていたが、新たな戦略を踏まえて2027年までに達成予定とした。一方で利益率13%については、積極的な投資を行うことなどを理由に達成の約束できない状況とした。
スキンケア事業では、肌を外的環境から守る「スキンプロテクション」を軸にグローバルを見据えた戦略を打ち立てる。グローバルで市場規模が1兆円を超えるUVケア事業で、花王独自の技術を強みとし、「ビオレ(Biore)」のUVケアシリーズの海外進出を加速。紫外線ダメージを浴びずに日焼けしたような肌のトーンを演出する、セルフタンニング(セーフカラー)市場に向け、今年買収したオーストラリア発の「ボンダイサンズ(Bondi Sands)」を訴求し、アジアや中南米で社会課題になっているデング熱の予防として、蚊を肌に止まらせず、刺されなくする技術を応用した「ビオレガード モスブロックセラム」の発信を強化する。これらの取り組みから、スキンプロテクション市場において2027年までにグローバルで売上1位を目指し、2027年に740億円、2030年までに1000億円規模に拡大させる。
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