Image by: NIKI BOUSSEMAERE
タトゥーは、例えば古代の戦士の一員であるとかマヨネーズが大好きなど、世界に向けて自分を表現する手段だ。タトゥーインクはほぼ永続的なものであることを踏まえれば、大半のひとは何を体に刻み込むのか、十分に考慮するはずだ。しかし、僕たちは時に侵入思考に支配され、バカげたアイデアを魅力的な名案だと思い込んでしまう。
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どんなに間抜けでも衝動的でも、タトゥーにはそれぞれ物語がある。あなたのハンドポークタトゥーを見て「こいつはちょっと頭のネジが外れてるんじゃないか」と思うひともいるかもしれないが、あなた自身にとっては、初めてのルームシェアや夜遊びなどの思い出の象徴なのだ。
ここVICEではダサいタトゥーとはいわず、代わりに〈疑問の余地がある宝物〉と呼ぶことにしたい。それを証明するために、VICEの同僚たちに最も間抜けなタトゥーの裏話を共有してもらった。
トム・ニースポレ(Tom Niesporek) – アソシエイトプロデューサー
去年、親友とポルトガルに行ったとき、リスボンに一泊することにした。金欠だったので、ひと晩20ユーロ(約3100円)で団地のAirbnbに泊まることになった。団地の近くにはたむろしてるグループがいくつかあって、警官が来ると口笛を吹いた。
ホストが13階の部屋に案内してくれた。彼女は顔を含め、全身にびっしりタトゥーが入っていた。彼女はウィードをくれ、タトゥーを入れたかったら入れてあげるよ、と申し出た。同じ部屋には、半裸でタトゥーを彫られているギャングがいた。
僕たちは思いつく限りいちばん間抜けなデザインを入れることにした。僕が5分ほどで思いついたのは、WhatsAppのスタンプの『トムとジェリー』のトムのイラストだった。
親友はさらに間抜けなデザインを選んだ。旅行中のある夜、僕たちは街のどこかで泥酔し、気づくとケバブの店にいた。彼はその店のロゴ──電話番号、住所、営業時間など全部──を入れることにしたんだ。
彼女はとても面白がって僕たちの写真を撮った。その写真は今、Airbnbの部屋に飾られている。彼女は実質タダでタトゥーを入れてくれたことになる。僕たちは20ユーロずつしか払っていないから。
バレンティン・ワイベル(Valentin Waibel) – プロダクションアシスタント
最初のロックダウンのとき、パートナーとベルリンの住宅団地に引っ越した。そこには全部で8人が暮らしていて、隔離期間は一緒のフラットで過ごすことになった。ある時、僕はネットでタトゥーマシンを購入した。ルームメイトのひとりはイラストレーターで、全身にタトゥーを入れていた。そこで彼に絵を描けるならタトゥーも彫れるのか、と訊いてみた。
もちろん、彼はタトゥーはできない。一度も経験はないそうだ。結局僕は3つのタトゥーを入れたが、どれも線が歪んでいるかぼやけているかのどちらかで、ひどい出来だった。左の上腕にはスマイリーの顔を入れ、右の前腕には火のついたマッチをつまむ、マニキュアを塗った手を入れた。
それ以上に最悪なのは足のタトゥーだ。右足の膝上には〈OK〉、左足の膝上には〈AY〉と入っている。つなげて読むと〈OKAY〉というわけだ。ものすごくくすぐったい場所なので、そこにタトゥーを入れるのは本当にバカげたアイデアだった。タトゥーを彫っている間もじっとしていられなかった。だから、なんと書いてあるのか誰にも読めない。
ニキ・ブッセメア(Niki Boussemaere) – フリーランスコピーエディター/ソーシャルマネージャー
これは私の最初で最後のタトゥー。19歳のときに入れたんだけど、無限マークとか、他人とかぶるものは入れたくなかった。タトゥーには意味がなければいけないという考えは、ちょっと時代遅れだと思う。それに私はすごく衝動的な人間なの。ある日、職場のフードトラックで仕事をしながら、ヒッピーに転身した年上の上司とタトゥーについて話していた。そのとき突然、〈ファックユー〉のタトゥーってめっちゃカッコいいんじゃないか、とひらめいた。
このアイデアは1〜2週間ほどずっと頭の中から消えなかった。そこで「もうどうにでもなれ、タトゥーパーラーに行こう」と思い立った。タトゥーパーラーで「このタトゥーを入れたいんですけど」というと、男性が店の裏に向かって「おい、誰かこの子に〈ファックユー〉って入れたいヤツはいるか?」と叫んだ。別の男性が「俺がやるよ」と答えた。2週間後、私はそのタトゥーを入れた。この店には親切な対応もきちんとした説明もなかったが、痛みはなく価格もお手頃だった。
その後フードトラックで仕事をしていると、ある男が近づいてきて急に激昂し、そういうタトゥーを入れるのはよくない、とても攻撃的だ、と怒り始めた。すると彼は突然振り返り、シャツを捲ってみせた。背中には〈ファックユー〉のマークがあった。思わず爆笑してしまった。
それから数年後、私は同じくフェスのフードトラックで仕事をしていた。すると男がやってきて、まったく同じギャグをやり始めた。そのときは昔のことをすっかり忘れていたけれど、突然この男が背中を見せてきたことを思い出し、「もう同じ手にはひっかからないよ!」と言った。
ジェイミー・クリフトン(Jamie Clifton) – VICE Culture 編集長
これは僕の生まれて初めてのタトゥーなんだけど、ひと目でそうとわかるはずだ。18歳でヨーロッパをインターレイルパスで回っていたときだった。だから、架空の電車のデザインなんだ。値段は20ユーロ(約3100円)とビール6本入りパックだった。
ある夜、ブダペストのホステルで、この旅の記念になるものがほしい、とフロント係に話した。彼が知り合いを紹介してくれることになり、翌日、トランクルームのような怪しげな場所に連れて行かれた。中に入ると、ここは地元のギャングが現金やドラッグを隠す場所だと教えられた。そこで銃所持容疑で逮捕され、釈放されたばかりだという男を紹介された。彼は僕たちに向かって、ズボンに挟んだ銃をちらつかせた。
銃所持で収監されたばかりなのに、どうやら違法らしい銃火器を持ち歩くのはやめたほうがいい。そう思った直後に、これから彼が僕にタトゥーを入れるといわれた。直感だが、彼はこれまでにタトゥーを彫った経験は少ないような気がした。でも、18歳のときに外国で銃を持った男と小部屋に閉じ込められたら、言うとおりにするしかないだろ?
かいつまんで話すとこうだ。僕の腕にはヘタクソな電車の線画が刻まれ、一生の相棒になった。最高だろ!
マタン・ブーゼラガ(Matern Boeselager) – 副編集長
ミュンヘンで飲み会をしていたとき、友だちが突然〈ロープとナッツ〉のタトゥーを入れると言い出した。これは一種のダジャレだ。僕たちの故郷はフランクフルトの近くのタウヌス(Taunus)という場所だから、Tau-Nuss(ドイツ語でロープとナッツ)がギャングスタにふさわしいマークだと思ったんだ。
翌日、彼が自慢げに送ってきた写真を見て、とても羨ましくなった。僕もロープとナッツのイラストを描き、数日後にフランクフルトで彫ってもらった。それから友だちと連れ立ってタウヌスのパブに行き、全員にタトゥーを見せびらかした。みんな大ウケだった。あの日は最高の1日で、今でもこのタトゥーを見ると思い出す。
追伸:タトゥーの文字と番号は秘密の暗号になっているが、ここでは話せない。もしバラしたら足を失うことになる。
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