Image by: FASHIONSNAP(Ippei Saito)
譚 芸斯(Tan YunSzu)が手掛ける「トゥー(TWEO)」が、「Rakuten Fashion Week TOKYO 2024 S/S」に初参加し、2024年春夏コレクションを発表した。並べられた椅子に座って鑑賞する一般的なショーと違い、青いフロアシートの上に点在する大きな石を挟んで自由な位置に座る観客たちは、パーソナルスペースを保ちながらショーに向き合う。海のようでありながら、高層マンションのエントランスに飾られた無機質な飾りのようでもあるその石は、静かな時間と空間を生み、鑑賞者ひとりひとりがショーに向き合い、思考を巡らせるために機能していた。
台湾出身の譚 芸斯は、東呉大学で日本文学を学んだ後、文化服装学院服装科に留学。BFGUのファッションデザインコースを卒業後イッセイミヤケに入社し、7年間企画職を務めた後、2021年秋冬シーズンから自身のブランドを本格的にスタートさせた。「TWEO」とは中世の英語で“曖昧”という意味。「人は紆余曲折の人生の中で獲得した知識と直感をもとに、自分に一番良い生き方を探求しています。そうして自分なりの”ニュアンス”を身につけて生活していくのではないか」という考えをベースに、経験や直感から生まれたムードを表現する。
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異国の地を1人で旅しながら夜の海辺を歩く中で感じたという、景色の美しさや夏の夜風、自分のことを知らない誰かの話し声。そこに心地よい孤独を感じると共に、疎外感に寂しさも覚えたという譚は、この感覚が人生のさまざまな場面で存在していることを自覚する。譚は「このコレクションは、海辺がどれほど美しいか、そしてどんなインスピレーションを受けたかというものではありません。内省や孤独、時として部外者のように感じる、一個人のほろ苦い感情です」と明言。安直に言えば水面のゆらめきのようなドレープは、モラトリアムな時間の浮遊感のある軽さや歪み、ねじれをロマンティックに表現する。
軽い素材をあまり使用したことがなく春夏シーズンが苦手だったという譚だが、2024年春夏コレクションでは軽い布帛を造形的に構築。透け感のあるチェックのワンピースなどクリーンな印象のなかに歪みをやねじれを加えたルックを多く揃えた。一輪挿しが付けられたアルミの板のバッグは、アルミ工場の既製品の円盤に、花を挿すことができるオリジナルのメタルパーツを装着。持ち歩くだけでなく、インテリアとして飾っても美しいデザインに仕上げた。夢心地のような雰囲気のショーの中で、花を持って歩くためだけに作られたバッグは、異国の地で孤独を感じる人間に寄り添ってくれる救いのようにも、ふと散歩中に見つけて摘んだ花のような軽快なアイテムのようにも見える。
インスピレーションソースになったという感覚を譚は「それが何なのか特定できない」と言うが、言語化できないその感覚は、孤独感によって得られる自由や開放感、自由の中でこそ明確に自覚する現実や寂しさなど、誰にとっても何かしらの具体性を持って共感できるものだろう。言語化できない“ニュアンス”を提示すると言うブランドの姿勢を、初のショーでも色濃く反映させた。
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