丸井亮太店長
Image by: 三越伊勢丹
今年で創業350周年を迎える三越日本橋本店が、報道関係者や投資家向けに事業説明会を三越劇場で開催した。説明会では今年4月に同店の店長に就任した丸井亮太氏が登壇し、着任から現在までの3ヶ月間で取り組んだ施策や足元の商況について説明した。
丸井店長は伊勢丹出身で、1995年に入社。新宿本店のメンズクリエーターズでバイヤーを担当し、ミラノやパリ、ニューヨークでの買付業務を手掛けた後、外商部を経験した。2016年には三越伊勢丹の百貨店EC事業部に異動し、「イセタンメンズネット(ISETAN MEN'S net)」の開設に関わった。2018年からはEC事業部EC運営ディビジョンでディビジョン長を務め、三越と伊勢丹のオンラインストアの統合や、コスメ・化粧品・ビューティー通販「ミーコ(meeco)」などカテゴリーに特化したオンラインストアを立ち上げるなどデジタルコンテンツの充実化に貢献した。2019年からは伊勢丹新宿本店に戻り、ストアアテンド部の部長としてデジタルや外商部での経験を生かしながら“百貨店外MD”をはじめとする新富裕層に向けたおもてなしの施策に取り組み、新しい外商スタイルを打ち出した。今年4月から三越日本橋本店の店長を務めている。
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◆リアルタイムで対応、三越日本橋本店独自の「個客」戦略
三越日本橋本店の業績は好調で、2022年度(2022年4月〜2023年3月)の通期売上高は1384億円(前年度比20.8%増)を計上し、コロナ前の2019年度の実績も上回った。同店はシニア層の顧客基盤が強いが、最近は30〜50代の来店も目立ち、2022年度の売上構成比におけるシェアは、2019年度(2019年4月〜2020年3月)比で約12ポイント上昇した。特選から時計・宝飾品、食品、リビング、そして呉服や美術までトータルで提案できている点が他のグループ店舗にはない強みだとし、丸井店長は「新宿や銀座のように混み合ってないので、安心して買い物できる環境づくりで売上を伸長させていきたい」と話した。
三越日本橋本店では伊勢丹新宿本店とともに「個客」のつながり拡大に取り組んでいるが、独自の取り組みとして、「外商部での取り組みを全館で実施する」という考えで、全館連動で来店情報をシェアし、リアルタイムで“おもてなし”を実現するための体制を構築。Microsoft Teamsで随時共有される来店情報をもとに、パーキングやラウンジ・サロンの手配や、提案するブランドやアイテムを顧客ごとに即座にアレンジしている。従業員の業務量が増えている印象を受けるが、新たに人材を採用するのではなく、社員がマルチタスク化に対応するための教育に注力しているという。同体制は軌道に乗り始めているといい、売上増に期待がかかる。
◆既成概念にとらわれない「新しい三越日本橋本店」に
三越日本橋本店は1914年に日本初のデパートとして竣工。西洋古典様式を基調とした重厚な外観が特徴で、2016年には本館が国の重要文化財に指定された。唯一無二の文化的な意匠を活用した企画を打ち出せるのも同店の強み。フランス産赤斑大理石とイタリア産卵黄色大理石を張りつめた中央ホールでは、今年4月に「ジョルジオ アルマーニ(GIORGIO ARMANI)」がショーを行った。
丸井店長が同職に就任してから約3ヶ月。伊勢丹新宿本店在籍時からグループの連携を通して三越日本橋本店に関わってきたが、丸井店長は「お客様の“三越愛”が想像を遥かに超えた」と店長着任前後での印象の変化を振り返る。実際に、本館の外観をデザインした350周年記念缶の商品は毎回、販売のたびに100人が並ぶなどの人気ぶりだという。350周年企画では今後、「ティファニー(Tiffany & Co.)」とコラボレーションした時計の発売を予定。35本限定生産だが、価格は500万円ほどを予定しており、「時計だけでも数億円の売上が期待できる」と丸井店長は話す。顧客からの支持が厚い三越日本橋本店だが、丸井店長は長年の歴史の中で築かれてきた強い顧客基盤に「甘えてはいけない」と気を引き締め、「長い歴史があるからこそ、こうでなくてはならない、こうあるべきという既成概念があると思う。このマインドリセットが伸びしろになる」と続けた。
その“伸びしろ”と位置付けるのは、「健康」「美」のカテゴリーだ。同店では「高感度上質戦略」の一環として、新館5階に「歯科・健脳クリニック日本橋」や、ウェルビーイングメニューを揃えた「カフェ&レストラン ランドマーク」を新たにオープン。「歯科・健脳クリニック日本橋」では認知機能と口腔疾患とは密接に関係しているという考えから、神奈川歯科大学と連携し、認知機能と歯科医療を組み合わせた脳機能・口腔疾患医療クリニックとして営業している。オーダーメイドで保険診療外のため治療費は高額だが夫婦での来店があったり、口コミで広まり予約も日々増えていることから、丸井店長は「健康」「美」への関心の高さを感じたという。
今後はパーソナルジムのオープンを予定。パーソナルジムではシニア向けにメニューを開発し、同店限定で提供するという。三越の外商顧客向けの販売会「逸品会」でもフィットネスマシンを販売する「テクノジム(Technogym)」で300万円以上の高額商品が好評だったことから丸井店長は期待を寄せる。新館5階はクリニック、ウェルビーイングのファミリーレストラン、そしてパーソナルジムなどの展開を通じて「健康」や「美」にフォーカスしたフロアとして展開していく。
丸井亮太店長
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