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天然素材服はマニアックに?高機能ウェア人気で市場は縮小傾向

天然素材服はマニアックに?高機能ウェア人気で市場は縮小傾向

繊維業界記者・ライター兼広報アドバイザー
南 充浩

当方が住んでいる関西は6月1日から早くも梅雨入りしているが、今のところ、昨年までよりも高温多湿さがマシに感じられている。

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以前から何度も書いているが汗っかきの当方は梅雨と夏が苦手である。そのため、毎年この時期は汗まみれで甚だしく苦痛なのだが、もちろん今年もそれなりに汗をかいているが、昨年までよりもマシに感じられているという話である。

実際に気温や湿度が例年よりも低めなのか、それとも当方の体質が幾分改善されたのかはわからない。

しかし、それでもこの時期になって着用する服は、吸水速乾素材で作られた服、ポリエステル主体生地かナイロン主体生地で作られた服ばかりである。吸水速乾機能が付いていなくても合繊服は洗濯をしたときに乾くのが速い。またシワになりにくかったり色落ちしにくかったりする。

毎年この時期に購入する服もほとんどが吸水速乾素材か合繊メインの服である。

大量に汗をかくのでこの時期に乾きの遅い綿素材服なんて着る気にもなれないしましてやカネを払ってまで買う気にもならない。

汗をかきにくい時期まで綿服、ウール服は着用しないし買わないというのが、毎年の当方のサイクルである。

もちろん、世の中は多様性なので、真夏でも乾きの遅い厚手綿素材服を着たいという人の要望を否定するつもりはないが、20年前と比べると減っているのではないかと感じている。

実際に展示会などでアパレル業界人や生地メーカー担当者にお会いしても、合繊主体のセットアップ、いわゆるアクティブワークスーツ系を着用している人ばかりだ。

Tシャツが許される会社ならユニクロUのエアリズムコットンオーバーサイズTシャツを着用している比率がかなり高い。

そんなわけで、1年ぶりにある生地卸業者と久しぶりにお会いした。某大手生地商社への卸売りをメイン販路とされている業者である。

最近の商況を尋ねてみると

「吸水速乾に限らず合繊主体の機能性生地の方が天然素材よりも売れ行きがマシですね。機能性素材だったら天然素材よりも例え100円でも200円でも高く売れる可能性が高いです。アパレルが販売している衣料品も機能性衣料品の方が売れる数量が多いようですし、価格も少しくらいなら高く売れやすいと聞いています」

と答えてくれた。

一口に衣料品と言っても、ターゲット層も客層もテイストも、何ならブランドの売上規模も全く異なるため、ひとまとめにすることは難しい要素があることは重々承知している。

そういう天然素材にこだわった服が好きだという客層ももちろんあるだろう。だが、ユニクロ、しまむら、ジーユーだけで今年度は1兆9000億円前後の売上高に膨れ上がろうとしているマス層は完全に機能性素材服を欲することの方が多いと考えられる。さらに機能性服の塊(性能の高低は置いておいて)であるワークマンまで加えれば売上高は2兆円に達する。

低価格マス層だけではなく、中高価格帯でも、ノースフェイスなどのアウトドアブランド、ナイキなどのスポーツブランド全盛(両分野ともピークは過ぎているように感じられるが)ということを考えてみると、このゾーンでも風合いの良さのみの天然素材服よりも機能性がある服の方が好まれ、支持されているのだと考えられる。

風合いの良さや伝統的な技法などをアピールする天然素材や天然素材を使用した服というのは、その「良さ」というのは理解できても、いざ「買って使う」となると躊躇するという消費者が低価格ゾーンはもちろんのこと中高価格ゾーンでも少なくないのだろう。そうでなければスポーツブランド、アウトドアブランドがここまで持て囃されるはずがない。

当方自身のことを振り返ると、離婚して10年一人暮らしをしている。もちろん再婚の予定もないし、そういう相手もいない。洗濯はだいたい週に2回くらいする。

一通りの家事はこなせるが、昔から掃除と整理整頓が苦手である。必然的に洗濯物もすぐにたたまないことも多い。

そんな状況下で生活しているので、いくら風合いが良かろうが、シワになりやすい服なんて着用しようとはあまり思わなくなった。合繊主体の服は例え機能性が無くてもシワになりにくいという点だけでも甚だ便利だと感じる。必然的に着用も購入も増える。

先ほどの生地卸売り業者が

「自分は最近、ビジネスタイプのニットシャツばかり着ています。綿100%でも通常のワイシャツと比べるとノンアイロンでもシワが目立たないし、動きやすいですからもう通常の布帛ワイシャツには戻れないですね」

と言っていた。

合繊主体の機能性生地でなくても、最近は綿主体のニット(編地)服が増えている。ここで会話に出てきたニットビジネスシャツしかり、ニットスーツしかり、である。

いずれも動きやすく、ノンアイロンでもシワが目立ちにくいという点が便利で快適だからだろう。

このように見てくると、風合いの良さや高品質さを全面に打ち出した天然素材服というのは、売り上げ規模が小規模でマニアックで熱い客層を抱えているブランドだけに今後は限られてくるのではないかと思う。もう現にそうなりつつあると個人的には感じているが、それがさらに顕著になるのではないだろうか。

ユニクロのスーピマコットンTシャツなんかもそのうち徐々に売り場からは姿を消すのではないかと思っているがどうだろうか。恐らく、エアリズムコットンオーバーサイズTシャツが無くなるのは困るという人は相当数いると思うが、スーピマコットンTシャツが無くなって困る人はそんなにいないのではないかと思う。ちなみに当方は全く困らない。

今後、「天然素材の風合いの良さだけ」を得意とする生地製造業者や商社あたりの商況はさらに厳しくなると見ているのだがどうだろうか。

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