ヴィーガンレザー事業は日本で少しずつ拡大傾向にある。しかしながらその製造となると国内では未発達だ。そのなかで、創業100年以上を誇る永井撚糸株式会社が「バイオヴィーガンレザーシリーズ」を打ち出した。
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このヴィーガンレザーは、リンゴ、竹、ヒノキといったこれまで注目されてこなかった素材を使用している。今回は、その意図と開発背景について永井撚糸株式会社海外事業部の柏木功さんにお話を伺った。
縫製糸からヴィーガンレザー事業へ
永井撚糸株式会社(以下永井撚糸)は1918年に創業して以来、高強力ミシン糸を中心に縫い糸の製造販売を行っている。特に高強力ポリエステル糸「ビニモ」は、ランドセルや高級皮革製品の工場で長年採用されているのだという。また、自動車内装や産業資材用の縫製糸についても、日本国内外で多くの顧客との取引がある。
今回、そのような縫い糸に長年力を入れてきた永井撚糸が、新規事業としてヴィーガンレザーに目をつけたのは、海外メディアがきっかけだったという。
そのメディアによるとSDGsの達成に向けてさまざまなサステナブルな取り組みが行われるなか、すでに日本国内でヴィーガンレザーの小物やバッグを製造販売している企業はあったが、ヴィーガンレザー素材自体は海外製ばかりで輸入仕入れのハードルが高い状況だったと柏木さんは振り返る。
このような状況で永井撚糸がまず行ったのが、ヴィーガンレザーの出荷体制を整えることだった。そこで、2021年にメキシコの「ADRIANO DI MARTI」社からサボテンレザー「DESSERTO」を輸入し、国内工場でストック、1m単位でカット出荷できる体制を整えた。DESSERTOは、財布小物・バッグ・ファッションベルトなど海外ブランドで多数使用実績があり、この試みは日本の多くの顧客がヴィーガンレザーを身近に感じられるとして好評となった。
この反響を受け、永井撚糸はさらなるステップとして国内での植物由来原料のアップサイクルを模索することになる。そこで製造元の共和ライフテクノ(株)の協力のもと、さまざまな原料で試作を行った結果、社会問題の解決、品質特性、安定供給等の観点からりんご(「aplena アプレナ」)、竹(「Bamblena バンブレナ」)、ヒノキ木粉(「HINOKI ヒノキ」)を採用する運びとなり、これらを「バイオヴィーガンレザーシリーズ」として打ち出すこととなった。
3つのバイオヴィーガンレザーシリーズ
「aplena」は、青森県産のりんごジュースの搾りかすを加工し樹脂に配合したものを加工することによってヴィーガンレザーとなる。分類としては合成皮革にあたり、柔らかな感触と軽さが特徴だ。表地にシボ加工が施してある。
「Bamblena」は、徳島県産の竹のなかでも山里保全のために計画伐採された竹を加工し、樹脂に配合して製作されている。分類としては人工皮革で、本革のような感触と耐久性を追求しているという。機能としては消臭効果が特徴であり、「SEKマーク繊維製品認定基準」における、消臭性試験99%以上の高い消臭効果が確認されている。
「HINOKI」は岡山県産ヒノキから生まれ、国内のヒノキ加工場で発生する木粉を加工し、樹脂へ配合した合成皮革で、ヌバック調のしなやかな触感が特徴だ。
それぞれの素材は共通して、長期間使用できる高耐久性のヴィーガンレザーを目指し、加水分解試験では10年相当基準を満たし、10万回の屈曲テストをクリアしている。
「バイオヴィーガンレザーシリーズ」は、6月中旬より販売を開始する予定なので現状では使用例がないが、アパレルブランド・スポーツメーカー・自動車内装・家具インテリア等の企業から問い合わせが殺到しているのだという。
最後に柏木さんは、「日本の人工皮革や合成皮革の生産技術は、世界的にもハイレベルであるため、今後は日本製のヴィーガンレザーを海外にも発信していきたい。製造元様のご協力のもと、より環境負荷が小さく、より高機能な素材の開発にも努めたい」と語ってくれた。
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