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10年後になくなるべきブランド「PLASTICITY」とは?

10年後になくなるべきブランド「PLASTICITY」とは?

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2006年設立の株式会社モンドデザインは、自社ブランド「SEAL(シール)」で廃棄タイヤを再利用した鞄や財布などを販売している。

SEALはブランドの創立当初よりWWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金)に売り上げの一部を寄付するなど、積極的に社会貢献活動に取り組んでいる。

2020年には「10年後になくなるべきブランド」というコンセプトのブランド「PLASTICITY(プラスティシティ)」をクリエイターAkiと立ち上げた。「PLASTICITY」はなぜ10年後になくなるべきブランドなのだろうか?

「PLASTICITY」立ち上げのきっかけやコンセプト、製品に対する反響や今後の展望などを、株式会社モンドデザイン長谷川さんにお伺いした。

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「10年後になくなるべきブランド」の意味とは

ー「PLASTICITY」とはどのようなブランドなのか教えてください。

「PLASTICITYはプラスチックごみのひとつとして廃棄問題になっている、ビニール傘を再利用し提供するアップサイクルブランドです。

「PLASTICITYは弊社とクリエイターのAkiさんと、共同で開発しております。Akiさんは専門学校に通っているときにPLASTICITYを立ち上げました。弊社がAkiさんの作品を見る機会があり、ビニール傘から再利用して作られた作品やその取り組みに共鳴し2020年より製品化し販売を始めました。

『PLASTIC』 の問題を抱える​『CITY』にフォーカスするということで『PLASTICITY』というブランド名となっています。プラスチックごみなどの廃棄による今後解決されるべき環境問題が、近い将来に解決されてほしいというAkiの思いが込められています。

日本では1年間で消費されるビニール傘のうち約8,000万本の傘が廃棄されているといわれています。弊社では、駅や商業施設といった置き忘れなどで忘れ物となり、最終的に廃棄されてしまうビニール傘を再利用して、独自の方法で新しい素材『GLASS RAIN』を開発しました。この素材を用いたバッグや小物などのアイテムを販売しています」

ー なぜビニール傘に注目されたのでしょうか。

以前から弊社は、環境に優しい素材のバッグや小物を展開するブランドを運営しております。ビニール傘の防水性や耐汚性といった特性はバッグの素材に適しており、リサイクルができれば廃棄問題にも貢献でき、環境問題に対する方向性が合致しております。より多くの方に「PLASTICITY」を知ってもらいたいという思いから、Akiさんと共同開発する運びとなりました。

ブランドのコンセプトとして『10年後になくなるべきブランド』を掲げています。これを聞くと皆さん口をそろえて、『10年後ブランドがなくなったら会社の経営はどうしていくのですか?』とおっしゃいます。

正確にはブランドではなく、捨てられたビニール傘の素材が手に入らなくなる状況を私たちは望んでいます。ビニール傘の使い方やリサイクル方法が変われば捨てられるビニール傘は減り、その結果廃棄問題の解消につながる。まさにそれが、私たちの目指す10年後の未来ということです。

10年後、捨てられたビニール傘が手に入らなくなったら、PLASTICITYの言葉の本来の意味(柔軟性)にならい、社会が直面している問題からまた新たなモノづくりを展開していきます」

ユニークな素材が話題に。ブランドのストーリーに共感する人も多い

ー ビニール傘から素材へ加工する際の流れを教えてください。

「ビニール傘は、『回収→解体→洗浄→プレス』と4つの工程を経て、新たな素材へと生まれ変わります。4つの作業は別々の工場で熟練した職人の元で行われています。素材となる廃棄ビニール傘は、全国各地のご協力いただいている業者様やブランドとしての取り組みで個人のお客様から不要になったものをお送りいただき回収しております。

回収したビニール傘は埼玉県の工場でビニール部分と骨組みを手作業で解体します。骨組みは金属のリサイクルルートに戻され、弊社ではビニール部分のみを素材として再利用します。

ビニールは丁寧に洗浄し、大きさと色別に仕分けします。解体・洗浄を終えたものは、栃木県のプレス工場で新たな素材へ加工されます。製法は、ビニールを粉砕せずそのままの形で4層に重ねるという、何度も実験をして辿り着いたものです。

職人が温度と圧力を見極めながらプレス機で圧着し、PLASTICITYの主素材となる『GLASS RAIN』を作ります。

『GLASS RAIN』はとても丈夫で硬い素材です。ビニール傘そのままの特性を残しているので、防水性が高くメンテナンスしやすいという特徴があります。ビニール傘が使われていたときの使用感がそのまま素材に反映されるため、1枚1枚の表面の表情が異なります。雨の日の窓ガラスのような表情を見せることから『GLASS RAIN』と名付けられました。

ー 商品ラインナップについて教えてください。

「PLASTICITYのアイコンバッグは『トートバッグラージ』と『トートバッグスモール』です。この2点は大・小の傘から素材を切り取った際に、ビニール部分を余すところなく使えるように考えて設計されたバッグです。ビニール傘と綿をキルティング加工したキルティングモデルや、柄や色のついた傘を使用したカラーモデルなど素材のバリエーションも豊富です。デイリーからビジネスシーンまで幅広く使用できるバッグとなります。大きいバッグは約3、4本分、中~小サイズのバッグは1、2本分のビニール傘が使われています」「PLASTICITYの素材は、一般的なバッグや小物で使用されるもののような新しい生地ではありません。そのため素材を加工していただける工場や加工方法をどのようにするか、立ち上げの際に苦戦しました。Akiさんがご自身で作っていたときはアイロンを使って素材を作成し、縫製まですべて手作業でした。現在は熟練した職人さんのご協力によって、PLASTICITYの製品が作られています。 商品化するものはタイムレスで、長く使用できるものを意識してデザインしています。アップサイクル製品ではあるものの、いつものお買い物のような感覚でお手に取っていただきたいです。そのために、元の素材がビニール傘と後から知るようなデザインを心がけています」

ー 実際に商品を手にした方からはどんな声が上がっていますか。

「ビニール傘を想像すると、柔らかいビニールのイメージが強いと思います。しかし実際に素材を触ってみると、その丈夫さにギャップを感じてくださる方が多いです。またユニークな素材なので、ご家族や知人などにブランドの取り組みを広めてくださるお客様もいらっしゃいます。ブランドのストーリーに共感してくださる方が多く、非常に嬉しいです」InstagramのPLASTICITY公式アカウントのフォロワー数は、2023年5月13日時点で1万人近くに上り、人気の高さがうかがえる。PLASTICITYでは製品の販売に加え、不要になったビニール傘素材を1枚から買い取る「Umbrella Recycling Program」も実施している。

「お客様や各種団体などで使われなくなった捨てる前のビニール傘を回収しています。ご自身でビニール傘を解体していただき、ビニール素材のみをお送りいただきます。お送りいただいたビニール素材は弊社で買い取ります。オンラインストアで使えるポイント、または認定NPO法人への寄付金として還元しております」

PLASTICITYのコンセプトが考えるきっかけになれば

ー 今後のビジョンについて教えてください。

「『10年後になくなるべきブランド』というコンセプトの達成に向けて、より多くの方にブランドの取り組みを知っていただきたいと思っています。もちろんプロダクト製品を購入していただくことも一つのアクションです。それだけでなく、取り組みを広めていただいたり、リサイクルにご協力いただいたり、購入以外のことでもたいへんありがたいと感じております。さらに私たちのブランドやコンセプトを知ることにより、皆さんの普段の生活のアクションに1つでも繋がれば本望とも思っております」「現在はバッグや小物などのアパレル商品が素材使用のメインとなっています。素材として色々な可能性があるので今後はバッグ以外のジャンルも展開していけるよう力を入れていきたいと思っております。私たちの取り組みが今使用している傘について考えるきっかけになる、傘以外の使い捨て製品に目を向ける、次のアクションに繋がるきっかけになったら嬉しいです」

Text by Asami Tanaka

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