過去最高売上を計上した伊勢丹新宿店
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三越伊勢丹ホールディングスが2023年3月期の通期連結業績を発表し、大幅な増収増益を達成した。首都圏を中心とする三越伊勢丹が業績を牽引し、1992年3月期以来31年ぶりに過去最高の総額売上高を更新した伊勢丹新宿店では3276億円を計上。同店は今期(2024年3月期)、総額売上高3315億円を目標に掲げる。
伊勢丹新宿店を含む百貨店事業では「マスから個へ」をテーマに、個客とのつながりを深める戦略を推進。顧客を識別化し、エムアイカード会員だけではなく、アプリ会員や、エムアイカードを持っていないデジタル会員を取り込んだことで、この3年で伊勢丹新宿店と三越日本橋店の両本店における識別顧客による売上高のシェアは約7割(2020年3月期比20pt増)に広がった。また、年間100万円以上の顧客による購買シェアは10pt増加。年間1000万円以上の顧客による購買シェアに関しては2倍に成長した。年間購買額300万円以上の顧客も増えており、伊勢丹新宿店では年間購買額が高い顧客のみが利用できるザ・ラウンジで列ができることもあるという。
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伊勢丹新宿店は1991年3月期に総額売上高が一度3000億円の大台に乗って以降は2000億円台にとどまっていた。細谷敏幸 取締役代表執行役社長CEOは伊勢丹新宿店の快挙について「3270億円は誰も思っていなかった数字」と達成感をにじませながら、外商を含む顧客とのつながりやMDをさらに強化することに加え、まだ戻りきっていない中国人観光客を含むインバウンド消費の追い風を受けることでさらに記録を更新できる見通しだという。
目標達成のための施策として、リモデルを通してMDではラグジュアリーブランドや宝飾品・時計の取り扱いを今年度中に順次拡大する。混雑が課題となっているザ・ラウンジは拡張するともに、プレミアムサロンの新設にも着手していく。「独自性のあるMD」を打ち出すべく、将来的にはプライベートブランドの立ち上げも視野に入れる。
◆「百貨店事業復活」達成、この先は“まち化準備”のフェーズへ
同社は2025年3月期を最終年度とする現3ヶ年を「再生フェーズ」と位置付け、中核事業の百貨店事業の復活を掲げてきた。初年度にあたる2023年3月期の百貨店事業は総額売上高が1兆円を超え、営業利益はコロナ前(2019年3月期)の実績を上回る296億円で着地。当期純利益は2011年度以来の水準となる323億円を計上するなど、前期に赤字を計上していた百貨店事業の復活を実現させた。
今期(2024年3月期)は2021年11月に開示した計画を大幅に上方修正。総額売上高は1兆1400億円を目指し、営業利益は来期に達成を予定していた350億円を1年前倒しで計画するほか、前期の好調を受け、中長期戦略の最終目標として位置付ける「まち化」のための準備に着手する。「まち化」戦略では、同社の持つ提供価値に、ホテルやオフィス、レジデンス、エンターテインメントなどの複合用途を掛け合わせ、ユニークな顧客体験を実現する考え。2023年3月期はエムアイカードの外部取扱高においても過去最高値を更新するなど「ファーストカードとして利用されている」(細谷代表)とし、百貨店事業でつながった識別顧客を「まち化」戦略にも紐付けていくという。
■三越伊勢丹ホールディングス 2023年3月期通期連結業績
総額売上高:1兆884億円(前年比19.3%増)
営業利益:296億円
当期純利益:323億円
■2024年3月期通期連結業績予想
総額売上高:1兆1400億円(前期比4.75増)
営業利益:350億円(同18.2%増)
当期純利益:280億円(同13.5%減)
※2022年3月期から「収益認識に関する会計基準」等を適用しているため、適用前の2021年3月期の実績値に対する増減率は記載なし
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