株式会社パルグループホールディングスの子会社である株式会社ナイスクラップが、全商品のサンプルを3DCGで作成し、EC販売もCG画像により運用するブランド「Mavie..7(メヴィセットゥ)」と「couchu.me(クーシュミー)」を4月27日からスタートすると発表した。
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「Mavie..7」ではバーチャルインフルエンサー、そして「couchu.me」ではリアルのインフルエンサーを起用した展開を行うという。
そこで今回、同ブランドの立ち上げを行った株式会社パル 執行役員 プロモーション推進部 部長の堀田覚さんと、株式会社ナイスクラップ 営業本部の南川淳平さんに、取り組みの経緯、ブランドの特徴、そして今後の展開について聞いた。
ECにおける新たな取り組み
ー今回、貴社が「Mavie..7」「couchu.me」という2つのブランドをスタートすることになった経緯について教えてください。
南川 近年、ECに力を入れているのは同業他社のどこも同じだと思いますが、そこから次につながる新しい取り組みを、ECの中でできないかと模索していました。
そのなかで、ファッション3DCGに取り組まれている株式会社FMBさんから、技術の現状をご紹介していただく機会があり、ビジネスのアイディアが浮かんできたという背景があります。今回の3DCGは、FMBさんの協力により実現しました。
われわれの強みは何かというと、売り上げ全体の約3分の1を占めるまでに成長したECでの知見と、グループ全体で社員がインフルエンサーとして活動することを支援してきた実績が挙げられます。
これらを生かして、今回はECかつインフルエンサーをプロデュースできると、ビジネスモデルとして新たな広がりが生まれると考えました。
堀田 親会社である株式会社パルが運営するECサイト「PAL CLOSET」には60近くのブランドがありますが、ほとんど社内で生まれたブランドです。今後ブランドを増やすことが目的ではありませんが、新規のビジネスモデルをボトムアップでつくっていくことは大事だと考えています。
またグループとしても、お客様に新しい提案をすることが常に求められているので、今回の2つのブランドの立ち上げはその意味でも大きなポイントとなります。
ー「Mavie..7」と「couchu.me」はそれぞれブランドの立ち位置が異なるとのことですが、「Mavie..7」のコンセプトから教えてください。
南川 こちらのブランドではコンセプトとして、洋服好きのバーチャルインフルエンサー「vievie(ヴィヴィ)」(@vievie.mvs)が、自身で洋服のプロデュースを行い、モデルも担当するという世界観になっています。
ターゲットは20代前半のZ世代に向けています。テーマは「個性の探求」をイメージしており、韓国ファッションを取り入れながら、少し癖の強いアイテムが並ぶ予定です。
バーチャルインフルエンサーであるvievieのスタイリングでファッションを表現していくことにより、これまでのブランドとの差別化を図ります。
ー続いて、「couchu.me」についてはいかがでしょうか。
南川 「couchu.me」は、30代前半くらいの年齢層がターゲットになっています。「女性みんなが輝けること」をテーマに、プチプラで日常生活を楽しめるようなアイテムを展開していきます。さらに、バーチャルインフルエンサーではなく、リアルのインフルエンサーである主婦のmisato(@_misato___)さんがモデルとなり、洋服をプロデュースします。お客さま像に関して、バーチャルインフルエンサーよりも、リアルで等身大なモデルに共感しそうな層を想定をしています。なお、サンプルやECの画像が3DCGであることは、「Mavie..7」と同じです。
ー今回、2つのブランドを同時に展開した理由はありますか。また。それぞれのインフルエンサーについて、どのような活動を想定していますか。
南川 将来的に、3DCGを使った展開を増やしていくことは間違いないので、「ABテスト」も兼ねています。バーチャルインフルエンサーとリアルのインフルエンサー、それぞれの効果を測定したいという思いがあります。
堀田 両ブランドとも、インフルエンサーとしてSNSを中心に活動します。すでにmisatoさんはInstagramやTikTokなどでも活動していますが、vievieに関しても最初はInstagram、近い将来には動画メディアへの進出、さらにメタバースにおける出店や接客といった活動なども検討しています。
3DCGはリアルの服と比較して遜色がない
ー商品のサンプルとEC販売を3DCGで作成したことで、どんな気づきがありましたか。
堀田 3DCGを使うメリットとして、やはりサンプルロスがないのでサステナブルで、時間の短縮も可能になると実感しました。たとえば、追加で異なるカラーバリエーションをつくる場合も、工場の出来上がりを待つ必要がありません。CGであれば、生地さえ手配できれば、その場で色を変えてPC画面に映し出せるので、スピード感があります。
堀田 ただし、3DCGであることと、お客様が価値を感じるかどうかは、まったく別の話です。リアルの商品と遜色がない再現性を追求しないと意味がありません。お客さまはデフォルメされた3DCGの洋服を見ても買いたいとは思わないので、今後はその点を追求していくことになります。現時点でも、画像を見ていただくとわかるように、リアルの服と比較して遜色がない仕上がりになっていると思います。
3DCGの活用でコストは大きく下がっていく
ー今後、今回の2つのブランドをどのように展開していきたいのでしょうか。これからの貴社の取り組みと併せて教えてください。
堀田 お客さまから見たとき、3DCGかどうかを気にせずに、ファッションの選択肢のひとつとして魅力を感じていただけるようにしたいですね。あくまで、商品自体を気に入ってもらうことに尽きます。
そして、今回のブランドに限らず、3DCGを活用した結果として、今後は最終的なコストは大きく下がっていくと思います。それをいかにお客さまに還元できるかが、重要だと考えています。
具体的には、安い価格でおしゃれなファッションを手にしていただくことが一番です。3DCGによるサステナビリティを第一に強調したところで、お客さまの購入にはつながらないですし、気に入って買ったアイテムがサステナブルな要素のあるブランドだった、という順番が望ましいと思っています。
また、インフルエンサーという観点では、われわれのグループ全体でフォロワーが1万人以上の社員は約200人おり、ファンもついています。そんなインフルエンサーでもある社員によるブランド展開ができると面白いと思っています。
具体的には、PAL CLOSETを既存のブランドや今回の新ブランドはもちろん、社員インフルエンサーがプロデュースするブランドも存在する「商店街」のような多様な場にできたらと考えています。
今後、3DCGはもちろん、社員インフルエンサーも含めた多様な取り組みとブランドが生まれていくことにより、われわれの企業価値が高まればといいなと思います。
PROFILE|プロフィール
堀田 覚(ほった さとし)
株式会社パル
執行役員 プロモーション推進部 部長
PROFILE|プロフィール
南川 淳平(みなみかわ じゅんぺい)
株式会社ナイスクラップ
営業本部
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