花王の生物科学研究所は、国立成育医療研究センターのアレルギーセンター大矢幸弘センター長、山本貴和子室長らの研究グループとともに、乳児の皮脂RNAを解析することで、生後早期(生後1ヶ月)に発症するアトピー性皮膚炎(以下、AD)の特徴を把握し、アトピー性皮膚炎の早期発見を目指す研究を実施した。その結果、早期発症型ADの乳児の皮脂RNAは、健常皮膚の乳児(以下、健常児)と大きく異なり、ADの特徴を明確に有していることが判明。簡便かつ身体への負担を伴わずに採取可能な皮脂RNAを活用することで、乳幼児ADを早期発見し、早期治療につなげる可能性を示唆しているという。
乳幼児の肌には、AD、脂漏性湿疹、接触性皮膚炎、新生児ざ瘡などさまざまな湿疹が見られるが、乳幼児期早期に発症する早期発症型ADは、アレルギーマーチに関連することが知られている。ADを放置してしまうと、その後の生活で食物アレルギーが発生しやすくなるなどの関係があるため、早期発見および早期の治療介入が重要となる。しかし、医師がADと診断するには、かゆみの確認やAD以外の湿疹との見極めが必要だが、確定診断までに観察期間が必要なことや、乳児とのコミュニケーション面で確定診断が難しいことなどが課題だった。
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花王では、あぶらとりフィルムを用いて、肌を傷つけることなく皮脂を採取し、皮脂中の RNAを網羅的に解析する技術「皮脂RNAモニタリング」を確立。これまでに、乳幼児において、顔の湿疹の状態により炎症や角化(表皮のターンオーバー)関連の遺伝子発現が変化すること、生後6ヶ月から5歳のADの子どもにおいてはADに特徴的な分子変化を捉えられる可能性を見いだしている。
今回の国立成育医療研究センターとの共同研究では、健常児とAD乳児のRNA情報を比較したところ、生後1ヶ月の乳児に対しても、生後1ヶ月の乳児でも、ADに特徴的なRNA変化があるという結果が再現できた。花王による皮脂RNAモニタリング技術が、簡便かつ身体に負担をかけないことからも乳児に適応しやすいため、これまでよりも早い時期にADを把握し、早期の治療介入につなげられる可能性が高いという。
花王と国立成育医療研究センターは今後、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構(AMED)の支援のもと、「皮脂中RNAの発現パターン解析によるアトピー性皮膚炎(AD)診断のための医療機器の研究開発」を推進。乳幼児アレルギーゼロ社会の実現に向け、AD早期発見につながる診断技術の開発を進めていくという。
乳幼児皮脂採取(頬)
Image by: 花王
乳幼児皮脂採取(額)
大矢幸弘(国立成育医療研究センター アレルギーセンター センター長)、山本貴和子(国立成育医療研究センター アレルギーセンター 行動機能評価支援室 室長)、井上高良(花王 生物科学研究所 皮脂RNAプロジェクトリーダー)、桑野哲矢(花王 生物科学研究所 皮脂RNAプロジェクト グループリーダー)
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