ゴールドウインが、バイオベンチャー企業のスパイバー(Spiber)が開発した構造タンパク質素材「ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」を用いた初の量産コレクションを発表した。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」「ゴールドウイン(GOLDWIN)」「ナナミカ(nanamica)」「ザ・ノース・フェイス パープルレーベル(THE NORTH FACE PURPLE LABEL)」「ウールリッチ(WOOLRICH)」の5ブランドから、2023年秋にグローバルで発売する。
ブリュード・プロテインは、植物由来のバイオマス(有機性資源)を主な原料に、微生物発酵プロセスによって生産される人工タンパク質素材。シルクのような光沢と繊細さを併せ持つフィラメント糸や、なめらかな肌触りの紡績糸など、多様な特性の材料を設計できるのが特長だ。また、石油を原料とする合成繊維とは異なり、地球上に存在するタンパク質を発酵させて原料を生産できるため環境負荷が小さく、生分解性を有するためアパレル分野における脱マイクロプラスチックへの貢献が見込めるなど、従来の合成素材に代わる次世代のマテリアルとして期待されている。
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これまでもゴールドウインでは、ザ・ノース・フェイスやオリジナルブランドのゴールドウインでブリュード・プロテインを使用した製品を展開してきた。従来は山形県鶴岡市の工場のみでブリュード・プロテインの生産を担っていたため、小ロット生産での抽選販売形式となっていたが、2022年にタイに大規模な生産工場が完成。量産の目処が立ち、今秋の一般販売が実現した。
Image by: FASHIONSNAP
今回ゴールドウインが展開するのは、ザ・ノース・フェイスのヌプシジャケット、ナナミカのバルマカーンコート、ウールリッチのアークティックパーカーなど、それぞれのブランドの定番アイテム計15型。価格は従来品の約2倍程度を見込む。ゴールドウインの渡辺貴生代表取締役社長は、「今回生産するのは全15型で数千着とゴールドウイン全体の商品量の1%にも満たないが、ブリュード・プロテインを一般に向けて発売できることは、循環型社会を実現する上で大きな意味がある」と話した。
ゴールドウインは、2030年までに新規開発製品の10%をブリュード・プロテイン製アイテムにシフトすることを目標に掲げている。渡辺代表取締役社長は、「合成繊維は非常に便利だが、アパレル業界全体がそれに頼りすぎて環境への配慮をせずにここまで来てしまった。ブリュード・プロテイン製品の展開を通じて、多くのメーカーに魅力を伝え、社会にこの繊維を浸透させることができたら」と意気込みを語った。スパイバーの関山和秀取締役兼代表執行役は「今後100年は間違いなくバイオテクノロジーがキー産業になる。これまでは生産量の関係で十分な量のブリュード・プロテインの提供が難しかったが、ようやく生産体制が整ってきた。今後10年ほどで、量販店でブリュード・プロテイン製の服が買える時代が来ると思う」と語った。
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