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在庫分析サービス「FULL KAITEN」でアパレルの在庫問題を改善

在庫分析サービス「FULL KAITEN」でアパレルの在庫問題を改善

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フルカイテン株式会社は在庫分析サービス「FULL KAITEN」を開発・提供している。

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「FULL KAITEN」開発・提供の目的は在庫分析だけではない。アパレル業界の大量生産・大量廃棄を減らし、資源と環境を守ることで子どもや孫の世代により良い地球を残すことだ。

「AI×SaaS×SDGs」という新しい取り組みに挑む同社ビジネス部門の責任者であるCOO宇津木氏にフルカイテン株式会社について、「FULL KAITEN」開発の経緯、同社や業界の今後についてお伺いした。

3度の倒産危機を乗り越え誕生したフルカイテン株式会社とは?

2012年設立のフルカイテン株式会社は、在庫分析サービス「FULL KAITEN」の開発・提供を展開している。

代表取締役CEO瀬川直寛氏が「お客さまを笑顔にできる仕事で生きていく」と決意し、前身となるハモンズ株式会社を設立。ベビー服のEC事業に参入したものの、在庫問題が原因で倒産の危機を3度経験した。自社の在庫問題の解決のため、瀬川氏が大学で学んだAI・統計の知識を生かし、2017年に「FULL KAITEN」を事業化する。

「FULL KAITEN」は、EC・店舗・倉庫の手元の在庫をAI(機械学習)で予測・分析し、商品力を「見える化」する分析サービスだ。2018年9月にはベビー服事業を売却し、社名をフルカイテン株式会社に変更した。

同社にとって「FULL KAITEN」の担う役割は在庫分析だけではない。AIによって大量生産・大量廃棄を減らし、限りある資源と環境を守ることを目指している。

同社は現在「世界の大量廃棄問題を解決する」をミッションに掲げている。瀬川氏は「FULL KAITEN」の開発・提供を通じて、大量廃棄による、資源や気候変動に関わる現在の地球が抱える課題の解決に繋げ、子供や孫の世代により良い地球を残す未来を見据えている。

在庫分析サービス「FULL KAITEN」とは?

「FULL KAITEN」とは一体どのようなサービスなのだろうか。アパレル企業の在庫分析がなぜ資源・環境問題の解決に繋がるのだろうか?

「在庫分析クラウド『FULL KAITEN』はプロパー消化率の向上や不要な値引き販売の抑制、客単価の向上、移動すべき在庫とその数などを予測できます。現在約200ブランドで導入されており、大手アパレル企業やスポーツメーカーなどの在庫問題解決の支援をしています。
アパレル小売業界の在庫問題の現状は『供給過多』と言えます。『FULL KAITEN』を利用する企業の導入当初のデータを用いて、アパレル・ライフスタイル34社(対象ブランド数:168)を対象に調査を行ったところ、各企業が抱えている全商品のわずか20%の商品で利益の8割を生み出していることが分かりました」。

「残り80%のSKU(在庫管理の最小単位)はわずかな粗利益しか生み出せておらず、固定費(販売管理費)を考慮すると赤字と推測されます。『FULL KAITEN』は利益を生み出せていない80%の商品から、不良在庫化を予見し対策をとることで売れるはずの商品を探し出し、早期に適切な対応が可能です。
結果、不要な値引きを極力抑えながら在庫を利益に変えるという価値を提供しています。各社の利益改善はもちろん、売れ残り商品の廃棄や、サプライチェーンにおけるCO2排出をはじめとした環境負荷の面でも、『無駄な商品を作らない』という姿勢が大変重要です」。

在庫を利益に変えることは、企業にとってプラスになる。さらに廃棄量やCO2排出を抑えることで、SDGsに取り組むという算段だ。

リリースから6年、「FULL KAITEN」の反響と在庫分析で分かったこと

「FULL KAITEN」の提供から6年が経過した。どのような反響があったのだろうか。

「株式会社レイ・カズン様からは、『実店舗30ヶ所の販売現場ごとにFULL KAITENを使いこなし、適時適切な在庫移動により在庫消化率が約5ポイント(約7%)改善しました。他にも、無駄な値引きを抑えたタイムセールによって粗利率を上げながら売り上げが30%増加といった結果が出ています』というご評価をいただいております。
株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)様では『FULL KAITENを使うことで発注業務の判断基準が明確になり業務効率が上がりました。結果的に発注するリスト作成を効率化でき、発注回数を増やせるようになりました。欠品率が8割ダウンしたにもかかわらず、在庫回転率が1.5倍になりました』とお伺いしております」。

企業の在庫データを分析するなかで、新たな発見はあったのだろうか。

「弊社で、アパレルを中心とする小売企業のECの利益構造を調査しました。41社・190ブランドのデータを解析した結果、販売手数料が高い外部ECモールでは粗利率を高く設定する店子(たなこ)企業(出店ブランド)が多く、逆に手数料が安いモールでは値引きによって粗利率が低くなる企業が多いという行動様式が裏付けられました。
つまり、アパレルには『利益を上げやすいECモール』『利益を上げにくいECモール』は存在しないことが分かります。また国内の繊維産業の市場規模の縮小や人口減少と高齢化などのデータからも分かるように、今後は在庫の物量ではなく在庫の効率で勝負する戦いになるでしょう」。

国内アパレル供給量・市場規模の推移

出典:2030年に向けた繊維産業の展望(経済産業省)
出典:繊維産業の現状と2030年に向けた繊維産業の展望(繊維ビジョン)の概要(経済産業省)

「2020年2月以降のコロナ禍では小売り各社で仕入れ抑制と不採算店舗の撤退を行い、粗利率の改善と営業利益の改善が起きてV字回復をしたというニュースが散見されました。今ある在庫の質をきっちり分析すれば、今までよりも少ない在庫数で今までより多くの粗利を生むことが可能です」。

フルカイテン株式会社とアパレル業界の今後

業界全体の今後についてはどのように考えているのだろうか。

「2022年は経済産業省や日本繊維産業連盟などをはじめ、さまざまな方面から人権問題に対する改善を提案された年でした。2023年以降は『人権意識の内部化』が促進されることになると考えています。
具体的には商品原価の中に人権対応費が組み込まれることになり、サプライチェーン上の人権問題解決に対する投資は、『商品の製造に関わる原価』として扱われるものになるでしょう。環境問題や人権問題に商品原価レベルで取り組んだ商品には付加価値が発生し、付加価値分を粗利で回収できる経営モデルへの変革が起きていくと思っています。
環境問題も人権問題も、結局のところ量を作りすぎることが問題の本質ではないでしょうか。大量生産は製造原価をおさえるためにおもに途上国を拠点にし、働く環境が劣悪になるもしくは強制労働や児童労働の温床になる可能性を孕んでいます。国内に目を移しても、技能実習生の労働問題などさまざまな問題が露呈しました。そもそも作る量を適正化することにメスを入れないと、人権問題に対してファッション業界が一定の貢献をするのは難しいのではないかと考えています」。

「作りすぎ」で環境・人権問題が問われるアパレル業界。フルカイテン株式会社としては、今後の展開はどのように考えているのだろうか?

「今後は、サプライチェーンを小売りから卸・商社・メーカーへ遡って在庫過多の問題を解決する構想を具体化させるため、販売・生産・在庫に関するデータを集約する『スーパーサプライチェーン構想』の具体化に取り組む予定です。2023年から2024年にかけては適量生産の本丸である『生産量の需要予測』に着手する予定です」。

生産量の需要予測ができれば、「作りすぎ」問題が解決できる可能性は高まる。今後の同社と「FULL KAITEN」に注目していきたい。

Text by Asami Tanaka

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