公式キャラクターコスチュームやアパレル、グッズの企画、開発、製造を行う株式会社コスパは2022年、元パリコレデザイナー山下隆生氏をクリエイティブアートディレクター兼プロデューサーに迎え、ハイエンドコスチュームブランド「COSPA Essentials(コスパ エッセンシャルズ)」を始動した。
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同年には『ディズニー ツイステッドワンダーランド』より「ナイトレイブンカレッジ コスチュームセット」を展開(※現在は販売終了)。
2月12日に開催された『ワンダーフェスティバル 2023[冬]』では、新たなコスチューム『塔の上のラプンツェル』 「ラプンツェル コスチュームセット」をお披露目した。
コスプレ衣装メーカーとして事業を展開するなかで、ハイエンドコスチュームブランドの戦略と今後の展望について、同社の知財開発部 迫陽生さんに話を伺った。
PROFILE|プロフィール
迫 陽生(はさま ようせい)株式会社コスパ
知財開発部 プロモーション戦略チーム
リアルクローズを参考に、二次元の服を三次元に落とし込む
同社は1995年5月の創業以来、「価値あるキャラクターグッズを提案しユーザーに届ける」というスローガンを掲げている。そもそも、二次元の服のデザインを三次元の服として落とし込む際には、どのような手法を取っているのだろうか。「アニメのキャラクターと実際の人間とでは体のバランスが異なって描かれていることが多くあります。人間が着用したときにアニメのキャラクターと同じような見え方になるよう、パタンナーの感性はもちろん、寸法もディテールごとに計測するなどしてさまざまな手法でバランスを取れるように設計しています」そして、衣装をデザイン・開発する際、必ず念頭に置くのが、「キャラクターが実在していたら......」ということだと語る。
「たとえばアニメに登場する学生服を作るときは、学生服として使っている生地や資材、既存の学生服の仕様など、実はリアルクローズ(日常でも着られる服)を参考にしています。もちろん作品によっては重力に逆らった形状のデザインや宙に浮いたアクセサリーなど、参考にできない場合もあります。その際は、外観からは見えない内側で工夫をするなど違和感がないよう試行錯誤しています」。
元パリコレデザイナー 山下隆生氏を迎えたCOSPA Essentials
そのなかで同社は2022年、4つのEssence「キャラクター×想い×価値×技術」を紡ぎ合わせることをコンセプトに掲げたハイエンドコスチュームブランド「COSPA Essentials」をスタートした。このプロジェクトでは「ビューティービースト(BEAUTY:BEAST)」で知られるデザイナーの山下隆生氏をクリエイティブアートディレクター兼プロデューサーとして迎えている。どのような経緯で協業が始まったのだろうか。
「山下隆生氏と弊社創業者が20年前に協業した経緯と実績があり、服作りへのクリエイティブな技術とノウハウ、IP(知的財産)、キャラクタービジネスの重要性に対する理解度のバランスがあることを考慮し参画いただきました」。
長年コスプレ衣装を手掛けてきたコスパだが、COSPA Essentialsと従来の製品とでは、どのような点が異なるのだろうか。
「キャラクター設定を限りなく忠実に、色彩や素材にもこだわり、ユーザーの着用感や可動域を洋服として考慮しデザイナーズコスチュームとして具現化させています」。
具体的には、着用する人のフィット感を大切に、エレガントなシルエットの構築と、動きやすい可動域を確保したパターンカッティングを設計し組み立てているという。
「たとえば、お客さまがグローブを付けたまま自撮りができるようにタッチパネル対応にした構造、屋外での撮影に備えてUVプロテクション機能を考慮した上で、ポリエステルでありながら天然素材に見える仕様などにこだわりました。また、消臭機能の付いたシャツなどハイテク機能素材も使用しています」。
COSPA Essentialsの製品は、山下隆生氏が長年の大手スポーツブランド各社でのプロデュース・デザイン業にて得た知識と経験をもとに、通常の衣装制作ではあまり活用することのない技術とノウハウを物作りへ反映させ、生産過程を一新させたことで生まれた衣装とのことだ。
ジェンダーレス、エイジレスに衣装での自己表現を楽しめる世界を目指して
同社が今後挑戦していきたいこととして「キャラクターたちをプリントグラフィックなどの二次元的な表現だけではなく、日本の古来より存在する伝統工芸などをベースに、普遍性のあるテキスタイルなどで表現していくこと」を掲げている。そのうえで、コスプレ衣装ならではの魅力はどこにあるのだろうか。「今やキャラクターIPはグローバルの時代であり、ジェンダーレスでエイジレスでもある。また、そのキャラクターの持つ世界観を楽しむ文化として、衣装やディスプレー雑貨は空間を演出するだけではなく、コミュニケーションのツールとしても存在していると考えます」と迫さんは話す。
さらに、コスプレ衣装は単にリアルクローズとして存在しているだけではなく、近年ではメタバース上でアバターもコスプレをしていることなどから、バーチャルとリアルの橋渡しも担えるものだと考えているという。「リアルでの自己表現とSNSなどを活用したコミュニケーションだけではなく、バーチャルの世界でも自己表現としてのコスプレが存在し、世界中のコスプレイヤーがジェンダーレス、エイジレスで衣装での自己表現を楽しめる世界が広がっていくのではないか」と期待を込めた。同社が今後どのような衣装を展開するのか、引き続き注目したい。
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