T.T 2023AW ルック画像
Image by: T.T
「タイガ タカハシ(Taiga Takahashi)」が、ブランド名を「ティー・ティー(T.T)」に変更し、新体制初となる2023年秋冬コレクション「BETWEEN SKY & SOIL」を発表した。
ブランドのこれまでと今後の方針
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1995年生まれの髙橋大雅は神戸市で育ち、2010年に渡英しロンドン国際芸術学校に、2013年にセントラル・セント・マーチンズのBAウィメンズウェア学科に進学。2017年に同校卒業後、自身の名を冠した「タイガ タカハシ」をニューヨークで立ち上げた。2021年秋冬コレクションから「過去の遺物を蘇らせることで、未来の考古物を発掘する」をブランドコンセプトに掲げ、メンズ主体に切り替え。「衣服は記憶を辿る装置」だとし、考古学の視点で自身のクリエイションを追求していたが、髙橋は2022年4月9日に致死性不整脈により27歳で逝去した。
髙橋の生前から予定されていた通り、今後「タイガ タカハシ」は現代美術家としての名義、「T.T」は衣服を制作発表するプラットフォームとして運営していくという。
T.Tでは、ブランド設立当初から髙橋を支えてきたチームが、今までのタイガ タカハシの核心である「過去の遺物を蘇らせることで、未来の考古物を発掘する」という遺志を引き継ぎ、彼が生前蒐集した1900年初頭のアメリカやヨーロッパのヴィンテージアーカイヴを研究、失われつつある日本の伝統的な技法などを用いて現在そして未来にも存在する衣服を発表していく。
「BETWEEN SKY&SOIL」フィロソフィーフィルム Video by T.T
2023年秋冬コレクションの展示会開催にあわせて、T.Tのフィロソフィーフィルムを公開。アトリエがある京都で制作された映像で、髙橋の「未来は過去にある」という考え方を描いたという。
新体制初のコレクションで追求する「未来は過去にある」という信条
2023年秋冬コレクションでは、光や雨を与える空と、石が苔むし木々が枯れ落ちていく大地の間で、長い時間をかけてゆっくりと万物が形を変えていく姿など、時間や自然によってコントロールできない偶発的な美が生む余白に着目。新しいものが日々生み出され消費されていく社会の中で、真に価値があり時を超えて生き残るものは何か追求するため、過去の膨大な衣服やアクセサリーのアーカイヴを研究し、時間が経っても色褪せない魅力的な意匠を抽出した。時のうつろいによってさらに磨かれていく美しさを兼ね備え、100年後の未来へと生き続ける服づくりを目指したという。
ルック画像
Image by: T.T
アイテム一部紹介
Lot.108 50s Italian Collar Shirt
京都の友禅染めの技法を使用した総柄プリントのイタリアンカラーシャツは、総柄を活かすため、切替のないイタリアンカラーと片玉縁ポケットを採用。綿サテンの素材感に合わせ、通常採用している2本針巻環縫い仕立ではなく、高級シャツに使われる袋縫い使用で仕立てた。また、1点1点のプリントの出方も異なっている。
Lot.603 Sweat Shirt
Sweat Shirt INDIGO、MUD DYED BROWN(税込4万6200円)IVORY (税込2万9700円)Image by T.T
スウェットシャツは、人工素材が広く普及する1950年代より前のアメリカンスポーツウェアの原点を研究し、直接的な裁断に、平面的な形、表裏の首元にVガゼットと呼ばれる汗止めのディテールを採用した。丸胴の裏毛は、和歌山で現在世界で唯一稼働している吊り編み機で作成されたもの。1時間に1メートルしか編むことができない吊り編み機は、非効率ではあるが、ゆっくり時間をかけることで空気を一緒に編み込んだようなムラ感を生む。USAコットンを使用することで、ドライな質感を持つ独特な風合いの生地に仕上げた。ブラウンとネイビーのものは、奄美大島の伝統染色技法「インディゴ染め」と「泥染め」を用いて1枚1枚染められている。
Lot.804 Leather Jacket c.1930's
炭鉱から発掘された1910年頃のアメリカのカバーオールをベースに、脇下の溜まりを改善するために肩傾斜を付け再構築したLot.303を、茶芯の馬革で作成したジャケット。革裏側のケバ面を樹脂コーティングするナッパラン加工を施し、一枚仕立てで軽量に仕上げた。一枚仕立てにすることで、着用シワがつきやすく、個人個人の体型や着用のくせに合わせたシワ感や色落ちが生まれる。1910年代のカバーオールに使用されていた刻印入り鉄製ボタンを制作。錆止め加工を施さず、時間が経つことで錆びていく点も忠実に再現した。
Lot.306 Cossack Jacket
Lot.306 Cossack Jacket (税込14万9600円)Image by T.T
1930年代の肉厚なウール生地で作られたコサックジャケットの要素を抽出したジャケット。アームホールをより前身頃側に置いた立体的な袖に、直線的な襟に再設計。経糸緯糸ともに異なる2色の撚り糸を使い、シェットランドウール高混率の二重織メルトン生地を使用したことで、膨らみある風合いとオリジナルの色合いに仕上げた。身頃裏には未染色のウール糸で織ったブランケット素材を使用。袖裏のみレーヨン素材にすることにより袖通しよく仕立てている。アール・デコの刻印が入った扇形のジッパーや、1907年に発明された世界初の人工プラスチックであるベークライトを用いたボタンをオリジナルで制作した。
Lot.408 Chin Strap Coat
Lot.408 Chin Strap Coat(税込19万8000円)Image by T.T
チンストラップコートは、1910年代のバルマカンコートをベースに作られた。雨風の侵入を防ぐために首元を留めるチンストラップと、深めのセミダブルの打ち合わせが特徴。ラグランスリーブで可動域の広い袖のパターンも特徴的。ウエイトのあるメルトン生地を採用したため、着丈を膝程度に短くすることで、重さと足捌きのバランスを考慮したという。Lot.306と同様に、シェットランドウール高混率の二重織メルトン生地を使用し、膨らみある風合いとオリジナルの色合いに仕上げている。ボタンはヤシの実から作られたオリジナルのナットボタンを用いた。
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