コーセーが、2022年12月期の連結業績を発表した。中国でのゼロコロナ政策の影響を受けたものの、日本の百貨店や化粧品専門店や、タルトが好調に推移し、売上高は前期比7.5%増の2891億3600万円だった(為替の影響を除くと前期比2.7%増の成長)。また、ハイプレステージの原価率が抑えられたことや全体的なコストコントロールが功を奏し、営業利益が41.1%増の221億2000万円、経常利益が同28.8%増の283億9400万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同68.6%増の187億7100万円を計上し増収増益だった。なお、前期は決算月の変更に伴い、連結子会社によって連結対象期間が異なる変則決算だったため、前年の同一期間(2021年1月1日〜12月31日)と比較して増減率を計算した。
化粧品事業においては、ハイプレステージの「コスメデコルテ(DECORTÉ)」や「アルビオン(ALBION)」が日本で引き続き好調に推移したが、トラベルリテールを除く中国や韓国で苦戦。コスメデコルテはリポソーム シリーズが堅調に売り上げを伸ばし、アルビオンは新スキンケアシリーズ「フラルネ(FLARUNÉ)」が若年層の獲得に寄与したという。そのほか「ジルスチュアート ビューティ(JILL STUART Beauty)」や「アディクション(ADDICTION)」が日本のメイクアップ市場の需要回復に伴い伸長。欧米で展開する「タルト(tarte)」はTikTokでのプロモーションが奏功したほか、ホリデー商戦が好調で売り上げを伸ばした。プレステージの主力ブランドである「雪肌精(SEKKISEI)」は俳優の新垣結衣とプロフィギュアスケーターの羽生結弦を同時に起用した、「年齢や性別は関係ない」といったプロモーションにより、7〜8月の男性使用が前年同期比約20%増となり、全体使用率の約1割が男性となるなど、ジェンダーレスな訴求が実を結び、下期から回復基調となっている。
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コスメタリー事業ではコーセーコスメポートのヘアケアブランド「ビオリス(BIOLISS)」が苦戦した一方で、シートマスクの「クリアターン(CLEAR TURN)」、メイクアップブランド「ヴィセ(Visée)」、ヘアケアブランド「スティーブンノル ニューヨーク(STEPHEN KNOLL)」などが好調に推移した。
アジア地域は中国が苦戦したが円安効果により微増。一方でトラベルリテール事業は、上期は中国のロックダウンにより鈍化したが、海南島のロックダウン解除後は堅調に推移。韓国のトラベルリテール事業は、ドル高・ウォン安の為替影響や中国からの渡航規制により引き続き減収だった。北米ではタルトの好調がけん引し、売り上げは2019年並に回復。タルトは年間成長率でも同地域のプレステージメイクアップ市場全体を上回った。
また、コロナを経てECでの売上が好調に推移。日本および北米では前期比約20%増の成長で、全体では前期比13%増の438億円を計上した。
2023年は日本でのマスクの着用自由化や外出機会の増加を見据え、攻めの姿勢へと転じる。ブランド強化のため100億円規模をマーケティング費用として投資。各ブランドのマーケティングを最大化するため事業部を再編し、これまで流通チャネル別に分けていたものをブランドごとに組み替え、よりお客視点でアプローチする体制へと変更した。特に売り上げをけん引するコスメデコルテは単独で事業部として独立させ、一気通貫でのブランディングを強化。中国本土およびトラベルリテールでの展開を強化するとともに、ハイプレステージ領域での認知拡大を目指す。
小林一俊 代表取締役社長は、「特にコスメデコルテは2021年にリニューアルした美容液『リポソーム アドバンスト リペアセラム』を発売して以降、順調に市場を拡大している。リニューアル後の累計販売本数は120万個を突破し、100以上のベストコスメを受賞するなど躍進している。今期は戦略的な投資で一過性で終わらない付加価値のあるブランドとして地位を確立し、将来的に単独で1000億円ブランドに育てる」と自信を覗かせた。
雪肌精は引き続きジェンダーレスブランドとしての訴求をグローバルで実施。新垣と羽生の起用は継続し、今年からロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手を起用。まずは日焼け止めの新たなキャンペーンを展開し、同カテゴリーの市場拡大を目指す。日米のみならずグローバルで人気を誇る大谷選手の起用で老若男女に訴求し、欧米の市場攻略にも着手するという。
コスメタリー事業では、皮脂によるテカリやマスクによるこすれからメイク崩れを守るコロナ禍でのヒットアイテム「メイク キープ ミスト EX」の新製品「メイク キープ パウダー」を発売。ヘアケアの「ジュレーム(Je l’aime)」のリラックスシリーズを刷新し、Snow Manの目黒蓮を新CMに起用するなど市場での存在感の拡大を図る。
外部リソースや技術と連携した独自の価値訴求にも取り組む。OEMで協業したラグジュアリーホテルを展開するアマンによるスキンケアシリーズ「アマン エッセンシャル スキン」は1月のローンチ以降、好評を得ているという。
2023年12月期の連結業績は、日本でのマスクの着用自由化の拡大、中国でのゼロコロナ政策からの転換といった好調要因を見越し、売上高が同5.5%増の3050億円を予想。積極的な戦略投資を行うため営業利益が同5.1%減の210億円、経常利益が同28.5%減の203億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同29.1%減の133億円を見込む。
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