今年も経産省によるイノベーター創出のためのプログラム「始動 Next Innovator」の選抜グループがシリコンバレーに訪問している。彼らはこの地のスタートアップカルチャーを吸収し、自分たちの新たなビジネス作りに繋げる。
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このプログラムの第一期から僕はメンターとして協力させていだだき、メンタリングを通じて、これまでに100名以上の起業家たちに対してビジネス、マーケティング、デザイン面を中心にアドバイスを提供してきた。
始動プログラム参加者の多くは大企業内のイントレプレナー
始動プログラム参加者の方々の多くがスタートアップの起業家というよりは、大企業内におけるいわゆる「イントレプレナー」と呼ばれる人たち。
企業が持つ既存のアセットを活用し、イノベーティブな新規ビジネスを生み出すのがその役割だ。
ご存知の通り日本企業の多くはまだまだ多くの社内リソースがあり、顧客基盤もしっかりしている。それを活用すれば世界的なスタートアップにも対抗できる......はず。
日本に帰国し夢から現実に戻る
しかしここで大きな問題が立ちはだかる。シリコンバレーに来た人たちは希望に溢れ、革新的なアイデアを生み出し、キラキラした目で日本に戻る。
しかし一旦社内に戻り上司に新規事業のアイデアをプレゼンするとその反応は必ずしも芳しくない。もしくは「面白いね!」って言ってくれたとしても、その後そのアイデアを実現できない理由を告げられる。
「良いね!......でも」。そう、典型的な“Yes, But”の状態だ。
この辺の温度差はかなり深刻。
実際に企画が通った場合でも、数年後に予算が打ち切られ、プロジェクトも立ち消えになってしまったケースも何度も見ている。支援してきた身としては、非常に残念な思いがする。
そして彼らは日本の大企業カルチャーに染まり、萎縮してまい、日常の業務に戻っていく。
面白いアイデアはこのようにして殺されていく
では、どのようにしてシリコンバレー仕込みの革新的なアイデアが日本企業によって殺されていくのか。その典型的なプロセス例を紹介する。
1. 面白アイデア見つけた!
まずは最も楽しい時期。面白いアイデアが思いつき、寝食を忘れ企画作りに没頭する。
社内調整もし始め、スタートアップ系で働いている友達に話すとかなりポジティブな反応を得ることができた。
参考:ヒットサービスに重要なのは “革新的アイデア” ではない!?
2. いいね!やろう!
そして社内プレゼン。直属の上司の反応も上々で、多少の調整はしないといけなさそうだけど、概ねオリジナルのアイデアで進められそう。
差し当たり現在の業務との兼業にはなるが、社内リソースもある程度活用させてくれるとのこと。
参考:上司が若手を育むための5つのマインドセット
3. 企画書もう一回送って
あとは正式な承認を得るだけ。メールでプレゼン資料を送ったので、数日以内にプロセスが開始される。はず。
なんだけど、なかなか返信がこない。連絡してみたところ「企画書もう一回送って」と言われた。
参考:日本とシリコンバレーの違いを決定的に分ける ある100倍の差とは?
4. あれ、届いてないもう一回
メールを再送してから一週間経ったけど、まだ連絡がない。何度も催促するのは気が引けるが、正式承認をもらえないと進められないので、勇気を持って聞いてみた。
そしたら返信は「あれ、届いてないもう一回」。どういうこと?
参考:シリコンバレーの企業はどのようにしてスピードを上げているのか?
5. どうやら上が気に入らないみたい
早くしてくれよなー。他の企業にやられちゃったら困るよ。と思ってたところに上司から連絡が入る。
どうやら上が気に入らないと言っている。あれ、承認してくれたのはなんだったの?あ、そうか上司の上司も納得してくれないと予算が付かないんだった。
参考:日本企業の経営スピードを上げる5つの方法
6. アイデアは良いんだけどね、でも......
では、どうしたら上が納得してくれるかを考えよう。上司に聞いてみたところ、アイデア自体は良いし、それは評価されているらしい。でも何かしら進めさせてくれない理由があるらしい。
参考:アメリカ企業が日本企業に勝るたった一つの事
7. で、いくら儲かるんだっけ?
え?この時点でどのくらい儲かるかを計算しないといけないの?
そもそもスタートアップってお金儲けよりも、ユーザーや社会の課題解決を優先するべきってデザイン思考のレクチャーでも学んだんだけど。
まあいいや、とりあえずもっともらしい数字を入れておくか。
参考:デザイン思考のプロセスだけでは不足?イノベーションを生むマインドセットとは
8. そもそも実現不可能でしょ
どうやらお金の面はある程度理解してくれたらしい。でも今度は技術的にも予算的にも実現するのが不可能ではないかと言われ始めた。
いや、絶対にできる方法はあるんだけど、どうやらセキュリティ面で社内規約に触れる可能性があるとのこと。技術的な懸念も告げられた。
参考:日本の新規サービス規制に思う事
9. 今はやるタイミングじゃないなー
そうこうしているうちに3ヶ月経ってしまった。そして最終的な結論としては「今はやるべきタイミングではない」。
うそーん。最初はやろう!って言ってたくせに、結局は棚上げになってしまいそうな雰囲気。残念すぎる。
参考:大企業が知っておくべき イノベーション創出に必要な5つの起業家マインド
10. 違うやり方でやってみて
と思ってたら、上司からアイデア自体は良いからもっと違うやり方でできないかとの相談がきた。
より少ない予算で技術的にもパートナー企業とかを活用して、既存の仕組みが使える方法。そして、リリース直後から黒字にできる方法で。いや、新規事業でそれ無理っすよ。
参考:サイドプロジェクトから生まれた大ヒットサービスたち
11. こっちで企画内容変更したから
つい勢いで「無理っすよ」って言ったからか、上司の方で企画書を変更して事業申請することになったらしい。
もちろん自分はメンバーから外されてしまった。いや、アイデアを考えた人が外されるって、理不尽すぎる。
参考:スーパーカブとコンコルドに学ぶイノベーションの本質とは
12. 誰か面白いアイデアない?
前回の事業プランは上司の方で巻き取ってしまったみたいなので、また違う面白いアイデアがないかと聞かれている。
もう一回シリコンバレーに行ってみても良いけど、結局前回と同じようなステップになってしまうなら、転職でもしようかなー。
参考:シリコンバレーは一攫千金を狙ったドロップアウト達のステージ【対談】大前研一 × Brandon K. Hill
“決断できない上司は容赦無く飛び越えろ-某日本企業の行動規範”
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