昨今のアウトドアブームに象徴されるのが、他業種からのアウトドア業界への参入である。もとより親和性の高かったスポーツブランドが、次々にアウトドアをテーマにした新ラインを導入していることを筆頭に、自動車メーカーや家電メーカーなどもアウトドアを楽しむためのアイテムを開発・販売し話題となっている。
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そのなかでも今注目されているのは、PC周辺機器やスマートフォンアクセサリーなどを手掛けるデジタルアクセサリーメーカー「株式会社オウルテック」が、これまで培った技術をアウトドアプロダクトに応用した新ブランド「イービーアイ(ebi)」だ。
今回は同ブランドの立ち上げから企画・開発に携わる技術企画チームの小川真さんと、企画デザインチームの清水省吾さんのお二人に、アウトドア事業進出の背景や製品開発へのこだわりについて話を聞いた。
社内のキャンプ好きによって発足。自分たちが最大のユーザーに
確かな技術力と開発力で、これまでもNTTドコモやKDDIといった大手通信会社のOEM製品の製造なども行ってきたオウルテック。そんな同社はなぜ、アウトドアという新たなジャンルに挑戦することになったのだろうか?
清水「弊社はもともとPC関連製品からスタートし、スマートフォン周辺機器など様々な製品を開発・販売しているのですが、社内のキャンプ好きが集まって『キャンプをテーマにして何かおもしろいことをしてみよう』と話し合ったのがきっかけなんです。そこで弊社の強みでもある通電系、つまり電気を使ったアウトドア製品を作れないかということで製品企画がスタートしました」
小川「ブランド名の『ebi』は『イービーアイ』と読むのですが、『e』が『enrich(エンリッチ)=豊かに』、『b』が『brio(ブリオ)=活気に満ち』、『i』が『inspire(インスパイア)=元気づける』という意味で、それぞれの頭文字をブランド名にしました。この『ebi』は、大体の人が“えび”と読むんじゃないかなと思うのですが(笑)、そういった覚えやすさや親しみやすさという意味も、このブランド名には込めています」
社内のキャンプ好きによって発足したという『ebi』だが、アウトドア製品のアイデアはどのように生まれているのだろうか?
小川「アイデアは企画チーム側からだけでなく、営業や技術チームからも出し合っていて、『こういうものが良さそう』というキャンプの実体験からの発想を大事にしています。そういうブレストのような会議も定期的に行っています」
清水「私自身も年中キャンプに行っていまして、弊社の製品を自分でも活用しています。自分たちが好きだというか、自分たちが最大のユーザーであるというのも弊社のポイントです。
また、弊社は安全面を特に重視したモノづくりを心掛けているのですが、そのためには他社さんよりもじっくりと検証や見直しを行います。なので、キャンプに行ってもテスト機をフィールドテストしなければならないので、最近は仕事でキャンプをしているのか、プライベートで楽しんでいるのか、ちょっとわからなくなってきていますね(笑)」
自社のノウハウを活かしつつ、キャンプで生まれたアイデアをプラス
自分たちがキャンプを楽しむなかで生まれたという『ebi』だが、ブランド発足から約1年ですでに4アイテムの開発・販売を行っている。これらの商品には、それぞれ開発時のこだわりやアイデアが詰まっているのだそう。
清水「最初にリリースしたのは『LEDランタン』(大光量/大容量24000mAh LEDランタン ランプシェード付)なのですが、衣食住を屋外で行うキャンプでは、光が一番大切だという実体験がありまして、アウトドア製品を作るなら明るさだったらどこにも負けないランタンを作ろう! というのが開発のきっかけになっているんです。
さらに、弊社の培ってきたノウハウを活かした安全なもので、緊急事態ではスマートフォンの充電もできて......というように、アイデアをプラスしていきました。
このLEDランタンのポイントは、ランプシェードを取り付ければ少し光量を抑えた柔らかい雰囲気のランプにもなること。また、バッテリーの容量が24000mAhあるので、キャンプでの2泊分、2晩であれば充電をせずに十分まかなえる。こういった特徴も、私たちが実際にキャンプをするなかで生まれたアイデアです」
小川「弊社のノウハウを活かした安全なものという意味では『ヒーティングベスト』(ヒーティングベスト 特許登録済ヒーターユニット採用)もまさにそうで、バッテリーを使ってベストそのものを温めるという製品です。
特徴としては独自開発した厚さ約0.5mmのフィルム状のヒーターユニットを採用していて、耐久性が非常に高く、アウトドアでハードに使ったり折り曲げたりしても耐えられるつくりになっています。
また、電源ボタンのロゴがLEDになっていて、色によって設定温度がわかるようになっていたり、低温やけど防止機能が付いていたりと、使いやすさや安全性も考慮されています」
ebiではこのほかにも、このアウトドアブームにより注目度が増しているポータブル電源「622Wh ポータブル電源 Portable power station(ポータブル パワー ステーション)」と、強度と軽さを兼ね備えたコットのような新しい形のハンモック「軽量 頑丈 ライトフレームハンモック」を発売中。
いずれも、デジタルアクセサリーメーカーとしての高い技術力と、キャンプ好きから生まれたブランドならではのユーザー目線によって開発された独自性のある製品だ。
清水「ポータブル電源(Portable power station)にしても、ポータブルバッテリーは他社さんからも多く出されているので、遅れを取らないようついていくのが大変なんです。
でも、弊社らしく出力端子が多彩になっていたり、USB Type-Cからの充電に対応していたりと、様々な工夫で差別化をしています。また、機能をプラスすることによって、例えば災害時の備えとして使っていただく提案などもしていきたいですね」
ebiらしく、不便を楽しみながらも便利さをもたらすアイテムを作りたい
オウルテックとして培ってきた技術と、自分たちが実体験から得たアイデアを融合させた製品で、アウトドア業界でも注目を集めはじめているebi。最後に、このブランドの今後の展望についても伺ってみた。
小川「これからもキャンプ好きたちから出たアイデアを、弊社独自の生産ネットワークを活かして素材調達しながら、どんどん形にしていければなと思います」
清水「アウトドアは不便を楽しむものですが、不便を楽しみながらも便利にするというか、ebiらしく通信電波やアプリケーションなどを介して、何かキャンパーが便利になるものはないかと、日々試行錯誤しています。
また、キャンプ場における盗難対策はキャンパーにとって大きな課題になっているので、セキュリティの分野で何か役立てるものが開発できればいいなと思っています。そういったキャンプでの安心感は、快適さにもつながることなので、今後もっと追求していきたいですね」
今後も他業種からのアウトドアへの進出はさらに加速していくことが予想されるが、その中で生き残っていくには、ebiのような他社にない技術と発想は必要不可欠といえる。
ebiでは、近日中にアウトドアシーンで便利に活用できる「Bluetooth防水スピーカー」も発売予定とのこと。そのほか新製品を含め、同ブランドの今後の展開に期待したい。
PROFILE|プロフィール
写真右/小川 真(おがわ まこと)写真左/清水省吾(しみずしょうご)
小川真(おがわまこと)
株式会社オウルテック 技術企画チーム
各種通電製品の技術開発をメインに、アウトドア製品の企画開発と技術検証を担当。自らの経験から安心安全、そして便利に使って頂く製品開発に注力。休暇には大型バイクにテントを積んでソロキャンプを楽しんでいる。
清水省吾(しみずしょうご)
株式会社オウルテック 企画デザインチーム
アウトドア製品の企画をメインに、形状デザインやキャッチコピーなどを担当。まずは自ら使ってみて、気に入らない所を徹底的に洗い出して製品化したいと日々模索中。一年中、土地土地の材料で料理をしながらファミリーキャンプを楽しんでいる。
https://ebi-outdoor.jp/
Text by Wataru Ando(ALTANA inc.)
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