現在、世界中で4億人を超えるユーザーが登録しているメタバース「Fortnite(以下フォートナイト)」。Epic Games社が2017年にスタートすると、圧倒的なユーザー数を抱えるオンラインゲームとして急成長を遂げた。
ADVERTISING
そんなメタバースの大本命とも呼ばれているサービスでゲームを企画・制作し、独特な企画と高いクオリティーで注目を集めているのが、株式会社NEIGHBORだ。同社は、フォートナイトに特化して、メタバース空間を制作している。
2022年7月、実業家の古川健介氏のマスコットキャラクター「ロケスタくん」をフィーチャーしたアトラクション「AIロケスタくん」を発表すると、来場者数が100万人を突破。フォートナイト公式が「イチオシ」するなど、日本のコンテンツが受け入れられる可能性を国内外に知らしめた。
そこで今回、同社のCEOであるノトフさんに、フォートナイトを活用する理由から、コンテンツ制作の内情、今後の展開まで話を聞いた。
PROFILE|プロフィール
ノトフ
株式会社NEIGHBOR CEO
1984年生まれ。フォートナイトに特化したメタバース制作スタジオ「NEIGHBOR」を運営し、フォートナイトのクリエーティブ機能を使って都市のメタバース化や、オリジナルゲームを開発している。
なぜフォートナイトなのか
もともとフォートナイトのユーザーだったノトフさんは、ゲームをプレイする中で「フォートナイト=メタバース」が持つ可能性を非常に強く感じていたという。
「その理由には大きく2つあって、1つ目は単純にプレイヤー数が圧倒的に多いという強さがあること。そして、もう1つ目は技術力ですね。Epic GamesはUnreal Engine(世界中で使用されているゲームエンジン)を作っている会社で、非常に高い技術力があります。
加えて言うならば、同社はメタバースブームが来る前から『フォートナイトはメタバースだ』と言っており、未来を見ていた点がプラットフォームとして魅力的でした」
現在、日本国内でもさまざまなメタバースが立ち上がっているが、自社プラットフォームを作ったり、国内でゲームを展開したりすることは「1ミリも考えなかった」とノトフさんは語る。
「今の日本でメタバースを作る意味はないですし、勝ち筋もなさすぎます。勝つためのメタバースを構築するには、資金力、技術力、ネットワーク力などが必要になると思いますが、たとえばアメリカのEpic Gamesや中国のテンセントに対して、日本は1つも勝っていない。
それを踏まえた上で、プラットフォームでは勝負できないけれど、コンテンツでは勝てる可能性があると思いました。それはNetflixの中で韓国のコンテンツが頑張っているのと同じ構造。メタバース時代のコンテンツで日本が勝つというシナリオはあるので、そちらに振り切ったんです」
フォートナイト上では、各国のユーザーがクリエーターとなり、自身でオリジナルのゲーム作りをしているが、「世界レベルで見ても、日本人は段違いでレベルが高い」と言う。
「日本のクリエーターは、造形が細かい3Dのデザインやディテールの凝り方がすごいですね。それにより世界観を作り込めるのが強みです。
一方で、アメリカやヨーロッパのクリエーターが作るゲームはダイナミックで壮大、そしてスピード感があふれていて、日本人にはないセンスを感じます」
来場者数100万人を突破した作品
その中で、同社最大のヒット作となったのが「AIロケスタくん」だ。同キャラクターは、日本のIT業界では古川健介氏のマスコットキャラクターとして有名だが、海外でその存在が知られているわけではない。しかし、その特異なビジュアルとゲーム性でフォートナイト公式から高く評価された。
「『AIロケスタくん』は2つのパターンをリリースしていたんですが、3か月ほどで合わせて20万人くらいの来場者数がありました。その後にEpic Games公式の『EPIC’S PICKS』に掲載されると、すぐ100万人に到達しました。フォートナイトはそこに載ると一気に来場者数が伸びる仕組みになっています。
そのため、どのクリエーターも掲載を狙うわけですが、ジャンルによる載りやすさはないように感じています。クオリティーが高いか新規性があるか、そのいずれかが突出しているケースが載りやすいようです」
これまで、同社はゲーム製作において、ノトフさんがフォートナイト上で活動しているクリエーターを集めてプロジェクト化し、企画も含めて2か月ほどの制作期間でリリースしてきた。そのチーム作りが、ノトフさんの大きな仕事の一つであり。腕の見せ所となっている。
ノトフさんによると「フォートナイトの中でゲームを作る人たちは、能力が高くて驚かされるばかり」だったが、1つ課題も見つかった。
「彼らはアイデアも豊富で優秀だったんですが、ゲーム制作のプロとしてのノウハウはまだ身につけてはいなかったんです。
そこで、去年の11月から『星のカービィ』シリーズなどを手がけているゲームデザイナー・濱村崇さんにアドバイザーとして入っていただきました。ゲーム作りを0から教えてくれています。それにより、過去に比べて格段に面白いゲームができています。
老舗のゲーム作りを経験してきた方の知見を取り入れることで、唯一無二のコンテンツが作れると感じました。こうしたチームは、世界的に見てもほとんどいないと思います。
そして、当社はクリエーター支援を掲げていますが、仕事を振るだけでなく、濱村さんのようなプロから教えてもらえることも支援になると考えています。今後は明確なサポートプログラムを作っていきたいですね」
また、同社は企業のメタバース空間の制作も手がけており、「Cyber Parkour by あいおいニッセイ同和損保」を制作した。
「企業と取り組む際は、打ち合わせの段階で『メタバースを作ったからと言って、売り上げや契約者数はアップしませんよ』という話をします。
長期的な目でZ世代に対しての認知を高めたいとか、いち早くメタバースを活用したいと考えている企業の方々とだけお仕事をしています。
もちろん、プレスリリースである程度話題になるのですが。メタバースは魔法ではありません。そこを誤解してはいけないと思います。当社と一緒に取り組みをすることは、メタバースに関する実績を作る以上に『メタバースとは何か』というノウハウをお伝えできることが一番の魅力だと思っています」
目標は自社IP
同社は、昨年12月に資金調達も実施し、さらなる事業拡大を進めている。そこで最後に、今後の展開について聞いた。
「弊社の課題としては、オリジナルのヒットコンテンツをいくつ生み出せるかに尽きます。
早急にNEIGHBORブランド、オリジナルの世界観を作り、それを浸透させていきたいですね。同時に、既存のクリエーターたちとのコラボ作品も準備中です。
マネタイズについてはいったん、企業との取り組みが中心になると思いますが、おそらく日本企業は、あと4〜5年はメタバースに大きな予算を使わないと思います。
そのため、フォートナイトの中で自分たちの世界を作り、ファンをつけた後、デジタルアイテムを販売して収益を得る可能性の方が大きそうです。リアルなグッズ、たとえばTシャツなどを作ってもいいかもしれない。
まずはフォートナイトを軸にして、任天堂やディズニーのような自社IPを作ることを目指したいと思います」
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【Fashion Tech News】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境