“アウトドアブランド=男性”のイメージからの脱却、ザ・ノース・フェイスが成功したその理由
ザ・ノース・フェイスの2023年春夏展示会の様子。キャンプシーンで課題の蚊を寄せ付けにくい素材を使った「ビーフリー」アイテム
Image by: FASHIONSNAP
ザ・ノース・フェイスの2023年春夏展示会の様子。キャンプシーンで課題の蚊を寄せ付けにくい素材を使った「ビーフリー」アイテム
Image by: FASHIONSNAP
“アウトドアブランド=男性”のイメージからの脱却、ザ・ノース・フェイスが成功したその理由
ザ・ノース・フェイスの2023年春夏展示会の様子。キャンプシーンで課題の蚊を寄せ付けにくい素材を使った「ビーフリー」アイテム
Image by: FASHIONSNAP
コロナ禍のキャンプブームなどによって好調のアウトドアブランドだが、各社で「女性客からの支持」を次なる課題として抱えている。ブームによって認知度は向上したものの、購入者の男女比率では9割以上が男性といったブランドも少なくない。各社が女性へのアプローチを強化しているが、アウトドアブランドの強みである機能性を求める人が多い男性に対して、女性はデザイン性を重視する傾向が強いことから、“アウトドアブランド=男性”というイメージが根付いており、大きな障壁になっているという。そんな中、ウィメンズやキッズなど新しい市場で支持を集めているブランドの代表例として名前が挙がるのは「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」だ。
実際にザ・ノース・フェイスは、女性の購入者がメンズ・ユニセックス品番を含めると3割を超えるという。ゴールドウイン事業本部ザ・ノース・フェイス事業一部の宮﨑浩氏は「引き続き女性の支持率を広げていきたい」と女性客の獲得には更に力を入れていくそうだが、ザ・ノース・フェイスの売上規模を考えると他社のブランドと比べて女性からの支持を得ていると言える。その理由を深堀りする。
ADVERTISING
ザ・ノース・フェイスは、10年以上前の2011年3月にアウトドアブランドとしては異例の女性向け業態「THE NORTH FACE 3 (マーチ/march)」を原宿にオープンした。当時は“山ガール“というワードが流行し、アウトドアブランドを着用する女性が急増したタイミングだった。宮﨑氏は「アウトドアブランドでウィメンズだけのショップなんて確実に失敗するといった声も多かったんですが、このままでは女性のアウトドアが一過性のブームになってしまうという危機感がありました」と当時について振り返る。2011年頃は、現在の他社アウトドアブランドと同様に女性の購入者数が全体の1割程度だったそうだが、ショップでのイベントや、メディアを通した情報発信などに注力し、購入者数を増やしていった。
また、女性客の獲得に成功した理由として宮﨑氏はコレクションの多角化についても言及する。「色々なところで女性のタッチポイントを増やし続けた」と言うように、ザ・ノース・フェイスは本格アウトドアウェアのほか、ランニングウェアやフィットネスウェアなど幅広いウィメンズアイテムを展開している。2019年にはマタニティラインをスタートし、2021年に初の抱っこ紐を発売。アウトドアとマタニティはカテゴリーとして一見かけ離れているように見えるが、新しいことに挑戦し革新性を求めるブランドパーパスの観点からトライする価値があると判断して製作に至ったそうだ。抱っこ紐のディテールはトレイルランニングのバックパックを参考に開発。企画チームにはこれまで培ってきたテクノロジーやアイデアで“それまでの市場にはない良いもの”が作れるという自信と情熱があったといい、「新しい素材を開発することも、見たことがない景色を見るためにハイスペックな商品を作ることも、妊婦や育児中の親をサポートするためにマタニティアイテムを開発することも全て同じ“ブランドとしての使命“という考えがあります」と宮﨑氏は説明する。実際に販売を開始すると、想像以上の反響を呼び、公式オンラインサイトでは再入荷しては即完売を繰り返す状況が続いた。現在はヌプシジャケットのフロントジップに取り付けることができるブランケットなど、ユニセックスのマタニティウェアの開発にも力を入れている。
新たにスタートするアスレチックカテゴリーの新ライン「NATURE ACTIVE」
そのほか、ザ・ノース・フェイスはキッズ市場の開拓も進めている。「自然のフィールドで遊ぶ子どもたちを応援したい」という思いから、キッズ商品に関しては修理サービスを無償で実施。宮﨑氏は「活発だから子どもたちはウェアもよく汚すし、焚き火をすればすぐに穴も開けるでしょう。服のことを気にして抑制するよりも、自然を存分に楽しんで欲しいんです」と無償提供の理由について説明する。また、不要になったアイテムを買い取り、クリーニング、リペア、カスタマイズして販売するゴールドウイン初のリセールプロジェクト「グリーンバトン(GREEN BATON)」もキッズアイテムからスタートさせた。イベントやサービス面でも革新性を求める姿勢を大切にしており、新しいことに挑戦することがザ・ノース・フェイスの本質だといい、その結果、キッズアイテムの2021年度(2021年4月〜2022年3月)の売上は前年同期比125%に繋がったという。
グリーンバトンのアイテム
2023年春夏コレクションでは、キッズ用の本格アウトドアウェアの展開を開始。素材には、従来からある防水透湿素材よりも耐久性に優れていると言われる「Wuros」を採用するなどキッズアイテムも環境配慮型素材の採用を積極的に推進した。宮﨑氏は「キッズの本格アウトドアウェアに対してはそこまで大きな需要があるわけではない」としながらも、「コアな子どもたちの要望に応えることはブランドとしての使命です。大人の本格的なアウトドアユーザーや、アウトドアファッションを好む男性ユーザーに限らず、女性、妊娠・出産や子育てを経験する家族、子どもたち、すべての挑戦者をサポートするブランドの姿勢がこの先市場を押し広げていくと思います」と話した。
キッズの本格アウトドアウェア
ザ・ノース・フェイスの2023年春夏展示会の様子。キャンプシーンで課題の蚊を寄せ付けにくい素材を使った「ビーフリー」アイテム
Image by: FASHIONSNAP
ADVERTISING
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境