2022年6月、資生堂から若年男性向けのメンズスキンケアブランド「SIDEKICK(サイドキック)」が誕生した。若年男性向け、さらにアジア市場を意識した商品開発という今までにないプロダクトで、アジア戦略においてはまずEC販路を中心に中国マーケットの開拓に力を入れているという。デビューから半年が過ぎた「SIDEKICK」の現在地と2023年の展望を伺った。
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なぜ若年男性向けか、なぜ中国市場か。開発のプロセスとは?
「若年男性の肌は他の世代にくらべて“ゆらぎやすい”ため、彼らに適したスキンケアが必要です」
そう語るのは、資生堂 経営戦略部 SIDEKICKブランドの藤田 悟氏。肌が「ゆらぐ」とは、季節の変化に対応できず、肌が敏感になった状態。資生堂による肌研究では、男性若年層の肌は他の世代にくらべてゆらぎやすいということが分かり、そこから若年男性に向けたSIDEKICKの開発がスタートした。
「もちろん若い方もスキンケアをされているのですが、そのケアが本当に自分の肌悩みに合ったものか、若年男性の肌の特性に対応できているのか、というところが今回の開発のポイントでした」
開発プロセスでは日本を含め、アジア、欧米の20〜50代のスキンケア事情を調べた。その中で特に中国の若年男性層に「自分らしさを大切にしたい」「個性を出したい」というインサイトが強く見られ、ブランドはそこに着目した。
「はじめから中国市場を狙っていたわけでなく、マーケティングの結果でした。中国の男性化粧品市場は急成長しており、特に都市部の若年男性はスキンケアへの関心が深く、知識があり、自分の肌に必要なスキンケアを理解しているように感じます。
化粧品の主な購入手段はECなのですが、すでに何を選べばいいかということを分かっています。そこでアジアで支持されるブランドを目指すべく、まずは中国市場のECから、並びに日本市場にも参入しました」
悩み別に5種類も。デビューブランドとしての洗顔料の位置付けは?
SIDEKICKのラインナップは洗顔料(クレンザー)、化粧水、クリーム、シートマスクの4種からなる全8商品。価格は「プレミアム」ゾーンで設定され、高級化粧品とマスの中間を狙っていく。
特に注目したいのが5種類もある洗顔料。SIDEKICKでは洗顔料の位置付けが重要視されているのだという。
「男性も洗顔料の使用率はとても高く、多くの方が使っているのですが、スキンケア商品になると50%程度にまで落ちてしまいます。なので、今お使い頂いている洗顔料からスイッチしてもらう、そしてブランドに興味を持ってもらえたら、スキンケア商品も一緒に使っていただくという戦略を立てています。
ECだとお試しができないこともあり、デビューブランドのスキンケア商品を買うのはハードルが高いと認識しています」
新ブランドの名刺代わりとなる洗顔料は、ブランドへの入口を広くするべく、若年男性の肌に丁寧に対応できる①乾燥、②皮脂、③毛穴、④明るさ、⑤色ムラの肌悩み別の5種類のアイテムが生まれた。
若年男性にどう届く? 「機能」と「感情」の2つのベネフィット
これまでにないスキンケアとして、SIDEKICKは2つの要素を組み合わせる「ハイブリッド」をコアバリューとしている。機能的な面では「自然由来成分」と「先端テクノロジー」を掛け合わせ、「今ある肌悩みのケア」と「将来起きる肌トラブルを予防する」ハイブリッドスキンケアをうたう。
「男性の肌は抗酸化力やバリア機能が女性より低く、どの年代の男性も季節の変わり目には肌がゆらぎトラブルが生じやすいのですが、特に若年男性のバリア機能は季節変化にうまく対応しづらい特性があります。
SIDEKICKは『潤いケア』や『くすみ』など現在の肌悩み別に使っていただきながら、バリア機能を強化し、季節の変わり目にもゆらがない肌を目指します」
また感情的なベネフィットをこう分析する。
「若年男性は肌がキレイであることで、たとえば洋服がより似合って見えるなど、自分のスタイルだったり気持ちだったりに肌が強く影響していることを実感しています。トラブルのない素の肌で送る、自分らしく豊かなライフスタイルが、SIDEKICKの提供する体験や価値です」
また若年男性への調査のなかでは、スキンケアをする理由として「自己管理ができている人に見られたい」というものも挙がったのだという。肌がキレイなこと=自己管理ができる人で、すなわち仕事のできる人の証明に繋がることがスキンケアの一つのモチベーションとなっているようだ。
アジア市場でNo.1を! 中国で得た手応えと2023年の展望
昨年、中国市場に参入したSIDEKICK。中国最大級のECサイトであるT-mall(ティーモール)では、緑色の「サイドキック シャインオフ ハイブリッド クレンザー」が新ブランドながら上位にランクインし、好調なスタートを切った。
ラインナップの中で同商品が特にユーザーに受けた理由としては、洗顔料を(しっかり)泡立てずクリームのように使うという、間違った洗顔方法が広がっていることが関係していると分析。
実際、洗顔においてはきめ細かな泡が重要な役割を果たし、その泡立て方がキモとなる。上記の「サイドキック シャインオフ ハイブリッド クレンザー」は濃密できめ細かい泡がワンプッシュで出てきて、そのまま洗顔できるという商品だ。
「正しくて新しい洗顔方法への気づきや体験を与えた、という部分が人気につながったのではないかと思います。この商品や他の洗顔料には、リッチな泡を作り出すマイクロバブルシステムを採用しており、細かい泡はさっと洗い流せるメリットもあるため、洗うとき、流すときの両方でそのポテンシャルをしっかりと発揮します」
昨年11月には上海で開催された「第5回中国国際輸入博覧会」に出展。実際に手に取った来場者からは「金属製のチューブがかっこいい」「細かな泡が気持ちいい」などSIDEKICKが提供する体験へのリアルな反応があり、オンライン商品が手元に届いたときのユーザーの気持ちの動きをしっかり感じ取ることができたという。
「中国の方の購入プロセスは、ブランドからの情報だけで商品を選ぶのではなく、レビューを見たり、KOL(=何らかの専門性を持ったインフルエンサー)からの情報発信であったりと、様々な情報を比較検討して買っていくのが特徴です。
アジアNo.1を目指すにあたり、全地域共通の型にはまったコミュニケーションをとるのではなく、各地域に裁量を持たせて、効果的な手法でSIDEKICKを広めていきたいと思います」
今後、アジア市場で広く展開するにあたり「ブランドとして譲れない部分」と「その地域に合ったお客様への対応」の2軸が大切だと語る藤田氏。アジア戦略においてもまさにハイブリッドである。
ちなみに日本では原宿駅前の「資生堂ビューティ・スクエア」に出店しており、美容部員が自分に合ったプロダクトを見つけるのを手助けしてくれる。もちろん若年男性でなくともOK。SIDEKICKは資生堂の肌研究に裏打ちされた知見をもとに、男性の持つ肌悩みにしっかり対応している。
PROFILE|プロフィール
藤田 悟(ふじた さとる)
資生堂経営戦略部 SIDEKICKブランド
慶應義塾大学を卒業後、外資メーカーに就職。日本市場のマーケティングを経験した後、ブランド開発を行うため資生堂へ。入社後はサンケアのイノベーションプロジェクトに関わり、その後BAUM、SIDEKICKのブランド立ち上げに携わる。
Text by Junichi Suzuki(ALTANA inc.)
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