合同会社HAYAMIは、人々がサステナビリティについて考えるきっかけを提供するために植物が原材料の「草ストロー」を販売する企業だ。2023年1月現在、草ストローは約250店舗で導入されている。
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2022年12月には、国内スタートアップ「PEEL Lab株式会社」とのコラボ商品「Enishi」を数量限定で販売開始した。
「Enishi」は、食品加工過程で残ったパイナップルの葉を原材料の一部に使用したエシカルウォレットだ。
「Enishi」や「草ストロー」の販売を通して、伝えたいSDGs・サステナビリティへの思いとは一体何だろうか。
合同会社HAYAMIの大久保迅太さんに「草ストロー」「Enishi」開発の背景をお伺いした。
合同会社HAYAMIの創業のきっかけと「草ストロー」販売の背景
同社は、共同創業者であるMinh Hoangと大久保迅太がバックパッカー中に意気投合したことが創業のきっかけだ。
「共同創業者であるMinh Hoangと大久保迅太がバックパッカー中に飛行機で席が隣になり、意気投合したことが創業のきっかけです。
市場調査としてスタートアップ企業のリサーチをしたところ、欧米でのサステナビリティ意識の高まりを強く感じました。20代は特に意識が高く、同年代である大久保は「どんなに小さなことでも良いので、自分が社会のためにできる活動はないか」と考えていました。バックパッカー中にMinh Hoangから「草ストロー」のアイデアを聞き、草ストローの市場調査やパートナー工場探しを経て、2020年5月に合同会社HAYAMIを設立しました。
草ストローはレピロニアと呼ばれる植物を使用している。元々は編み物などに使われていた丈夫な植物で成長スピードが早く、農薬は不要だ。
従来のプラスチック素材ではなく、なぜ「草」を素材としたストローを販売することになったのだろうか。
「一般的なストローに使用されている生分解性プラスチックの一部は海洋や自然界では分解されません。2050年には海洋プラスチックゴミが魚の数を超えるとされており、数十年後にはきれいな海で泳ぐこともおいしい魚を食べることもできなくなることに危機感を抱きました。
草ストローは道端の草木と同様に土に返る、製造過程で化学薬品や保存料などは使用していない「ケミカルフリー」の製品です。使用後は動物の餌などにも活用できます。
そして、ベトナムの農村地帯で新たな雇用を生み出す雇用創出にも貢献しています。
草ストローは、2023年1月現在、約250店舗で導入されています。
消費者からは「テレビで見たことがあったけど実際に使用できてうれしい」「プラスチックより写真映えするしトレンドに乗れてうれしい」「使うだけで環境と農村支援両方に貢献できるのは良い」などの反響がありました」
エシカルウォレット「Enishi」は、持続可能性に加えデザイン性・機能性を両立した製品
2022年12月22日に同社はコラボ商品として、パイナップル由来ヴィーガンレザーを使用したエシカルウォレット「Enishi」を数量限定で販売開始した。
今回なぜ「Enishi」の販売を開始したのだろうか。
「草ストローの普及活動などを通して、環境問題への意識が高くかつたくさん購入してくださる層が30代〜40代の男女、なかでも特に女性が多いと気づきました。今後の地球の未来を担う20代の方々にもっとサステナブルな製品を使ってもらいたいという思いから、持続可能性に加え、デザイン性と機能性を両立した製品として「Enishi」の販売を始めました。
今までは、サボテンレザーをメインで取り扱っていたのですが、今回PEEL LAB社とコラボでパイナップルを主原料とした植物由来レザーで製造しています。
PEEL LAB社との連携を決めた理由は、①パイナップルの残りかすを使用していること、②日本で開始してアジア中心に展開するスタートアップ企業であるという2点です。
サボテンレザーでは、レザーを製造するためにサボテンを栽培しています。一方でPEEL LAB社の原材料であるパイナップルの葉は、加工食品やフルーツ収穫する過程ででた残りかすを活用しており、ユニークだと感じました」
食品加工過程で残ったパイナップルの葉を原材料の一部に使用しているが、レザーへと加工する工程においてどのような工夫がなされているのだろうか。
「天然素材の割合を増加させたときに耐久性とのバランスをいかにうまく保つかという点が難しいです。天然素材なので原材料のクオリティーのコントロールが難しい中で一定の耐久性を保つ必要があります。
厚みや色のカスタマイズが可能で、現在はブラック/ゴールドの2色のみです。
すでにご購入された方からはマットな質感が心地よいといった声や、これがパイナップルでできているとは思えない、帽子など他の製品も販売してほしいといった声をいただいています」
今後の展開
ファッション業界においてはSDGsを支援する会社が増えている。同社はファッション業界においてサステナビリティ(持続可能性)を指向する上での課題はどこにあると捉えているのだろうか。
「『抜け穴のない法規制』『消費者側のリテラシー向上』『ファストファッションにおけるサステビリティ向上』の3つが大きく重要と考えています。
ファッション業界でも、欧州ではプラスチック削減や一定割合の再生材の使用がプラスチック製品に義務付けられるなど、法規制や税制の変化も見られています。しかし「再生材」の定義が曖昧で、虚偽表示なども多発しており企業の抜け穴を作らない法規制が必要です。
また、消費者側のリテラシーの向上も重要だと考えています。SDGsウォッシュなどが増える中でSDGsに本質的に寄与する製品を消費者が見極める力をつけていくことで、企業のSDGsへの取り組みが中途半端にならないような環境が整っていくのではと考えています。そもそも、大量消費前提ではなく、できるだけ『使わない』『ゴミを出さない生活』などを優先的に考える必要があります。
最後は、ファストファッションのサステナビリティの向上です。現在積極的にSDGsに取り組んでいるのは、ラグジュアリーブランドをはじめとする、高価格で高利益率なファッションブランドが中心です。しかし、ファストファッションが全盛といえる状況下で、ローエンド(廉価)な製品は「事業性」と「社会性」の確保のバランスに苦戦しています。
ここを乗り越えるには、販売会社やファッションブランドだけでなく、素材や繊維メーカーなど多くのプレーヤーを巻き込み、透明性の向上や素材開発〜適切な市場の探索など一貫して行う必要があると感じています。
今後は製品ラインアップの拡張や若い世代に人気のインフルエンサーとのコラボなどを積極的に行っていきたいと考えています。また、中長期的には、人々が草ストローのようなソーシャルビジネスを起こしやすい土壌づくりやマッチングプラットフォームなどの構築に興味があります」
サステナビリティ・SDGsをキーワードに、ファッションに新たな選択肢を加える同社に今後も注目したい。
Text by Asami Tanaka
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