毎年年始にラスベガスで開催される世界最大のテクノロジーの祭典CESに参加してきた。
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昨年2022年に続くオフライン開催となった今年は、公式によると出展社数は3,200社、参加者数は115,000名以上に上ったとのことだ。
筆者は今回が初参加だったため、抱いた印象や参加時のポイントなどをまとめていこうと思う。今後CESに初めて参加される方にとっても、ガイドのようにご覧いただけたら幸いだ。
1. 広い, 大きい, 高い
ポイントと言うより感想に近いのだが、まず何より感じたのが、とにかく「広い、大きい、高い」の三拍子。もっと言うと、ラスベガスそのものが何かと規模の大きな街なのだ。飛行機が着陸する時点で、見える建物のサイズが普段日本で目にしていたものと何かとてつもなく違う気がする。
そしてこの感覚は、空港から宿泊先に向かう道中、そして宿泊先から会場へと向かう道中でますます強まっていった。CESの内容以前に、とにもかくにもスケールが大きいことが印象に残っている。
2. 移動が肝
規模が大きいとなると、課題になるのが移動。普段日本で過ごしている時とはまるで異なる感覚を持つ必要がある。
すぐ隣にありそうに見える建物も、いざ歩くと数十分かかることも。(近く見えるのは、そう錯覚するほどに建物もとんでもなく大きいからだ。)
例えば、メイン会場の1つであるコンベンションセンターだけでもCentral Hall、North Hall、West Hall、South Hall(今年は展示なし)と分かれている。
また、コンベンションセンター以外にも、The Venetian Expo、Mandalay Bay、ARIAなど、市内の複数の会場でセッションや展示が行われており、この距離は到底歩けない。
そんな会場間の移動には、無料シャトルバスやモノレール、もしくはUberやLyftといったライドシェアサービスをうまく活用していきたい。
コンベンションセンターに話を戻そう。というのも、同じコンベンションセンターとはいえど、Central HallとWest Hall間は、徒歩で移動すると15-20分程度かかってしまうというトラップがあるからだ。てっきり歩けるだろうと思ってしまうと痛い目に遭う。
こうした移動問題に切り込んだのが、Vegas LOOPだ。
Vegas LOOPは、Vegas Loopを運営するBoring Companyに、テスラ CEOのイーロン・マスクが投資したことから実現した。Central HallとWest Hall、South Hall間をそれぞれ地下道で繋ぎ、テスラ車で送迎してくれるCES公式の交通サービスである。
会場間の移動時間はわずか1,2分で、無料で利用できる。その上いずれのステーションにも乗り場が10つほどあり、巡回している車両の台数もかなり多いため、乗るまでの待ち時間もほとんどない。
日本ではまだ馴染みがないゆえに、ぜひ乗ってみたいと感じるテスラ。
その上申し分なく便利で、テスラに対して悪い印象を持つ余地がない。テスラ社がCESにブースを出さずとも、テスラ車の乗車体験をさせて、ファンを作ってしまう。非常に上手なやり方だとも感じた。
3. 何を持ち帰るべきかを明確に
CESにここ10年ほどは毎年参加しているCEO Brandonの話によると、パンデミック直前の最盛期に比べると、今年は70%程度の規模に感じたとのこと。(パンデミック以来初のオフライン開催となった2022度からは1.5倍ほどに戻った感覚だそう。)
しかしそれでも数にして3,200社以上が展示を行なっていた。さらにブースのサイズも非常に大きなものが多く、1つ見るのにもある程度時間のかかるブースも。
よって、テーマや観点を持ってブースやセッションを回ることを強くおすすめする。ご自身が関わっている業界や興味のある業界の企業を見ていくのも良いし、業界問わず、使われているテクノロジー軸で見ていくのも良いだろう。
せっかく来たのだからと全てを見て回りたくなる気持ちもよくわかるが、残念ながら物理的にも時間的にも難しい。この点は割り切って、うまくテーマを絞りながら見ていくのが良い。
4. テクノロジーは実体があるとわかりやすい
プロトタイプ時点のものも多いとはいえ、かなりの割合の企業が、プロダクトや実体のあるものを展示していたことも印象的だった。
特に、新興のテクノロジーやディープテックのような概念的、もしくはまだまだ世間的な認知が途上にあるものは、展示においてはモノに落とし込まれていると、実際にそれらがどのように機能し、どんな役割を果たすのかを感覚的に理解しやすい。
例えばフランスのソフトウェア系の企業であるDassault Systèmes (ダッソー・システムズ)は、3D技術を活用したデジタルツインを出現させるインタラクションを展示。
パフォーマンスをする女性の動きをカメラが感知し、全く同様の動きが後方に3Dで投影され、シンクロしたように動いていた。
ここに使われている技術は、医療への利用用途が想定されているとのこと。医者が患者の身体を事前に診察したり、脳外科手術のシミュレーションのように使ったりすることを叶える。
言葉だけではなかなかイメージを掴みにくいことも、実際に目に見えたり、手に取ったりできる形で表現されていると、そのサービス自体はもちろん、背景にあるテクノロジーの本質的な価値も理解しやすい。
5. プレゼンテーションが全て
自明かもしれないが、プロダクトやサービスのプレゼンテーションがその企業全体のイメージをかなり大きく左右する。
これはブースのサイズにかかわらず、だ。もちろん大きいブースは視覚的にも目に入りやすく訪問されやすい。しかし、それだけではサービスの魅力を伝えるには不十分だと感じた。
ポイントは、見せ方と語り方に分かれると感じている。
まずは1点目の見せ方について。これは、主要テクノロジーがどのように使われているのか、何が他の類似サービスと異なるのか等がわかりやすく会場の場づくりに反映することが重要だということだ。
例えば自動車。今年は自動車を展示する企業が多かったようで、その展示方法に個性が出ていた。
スクリーンに強みを持つ企業は、見ている人に実際に自動車に乗って、スクリーンをじっくりと見てもらうようにしていたり、新たなコンセプトやデザインを強調している企業、は、自動車を回転台に乗せ、360°ぐるっと眺められるようにしていたり。
後者の例としてStellantisを挙げる。同社は、プロダクトラインの1つであるRAMの新たなコンセプトトラックを発表。片面が大きく開かれた状態で360°内装も含めてよく見える状態での展示だった。
ボイスコマンド機能やARのヘッドディスプレイ、わずか10分で100マイル走行を可能にする急速な充電機能など、さまざまな観点で注目要素が詰まったコンセプトトラックの効果的なプレゼンテーションだったように思う。
次に語り方だ。ブースでは、その企業のメンバーが自分たちのプロダクトのことを説明したり、こちらからの質問に答えてくれたりする。
その際に、自分たちのサービス価値を的確に伝えられるかが重要になるのだろうと感じた。この説明は、スタートアップにおけるピッチのさらに短縮版のようなもので、
- 何をビジョンやミッションに掲げているか
- 誰のためのものか
- どんなテクノロジーを活用しているか
などを交えてサービスを簡潔に説明するスキルは、その企業に対する印象の良し悪しにも影響する。
おわりに: 忘れずにアウトプットを
色々な会場やブースをへとへとになりながら回って得たせっかくのインプットも、何もしないとすぐに忘れてしまう。ぜひアウトプットの機会を適宜設けていただきたい。
飲み込まれそうなほどのインプットを得ることになるCESでは、何もしないままでいると、記憶も薄れていき、「どこの企業がどんなことを発表していたっけ?」と内容がぼんやりとしたものになってしまう。
したがって、グループで行かれる方は、仲間間でその日の終わりにラップアップを設けるのも良いし、セッションやブースの合間に、お互いに印象的だったことを持ち寄り、会話を交わすだけでも得たものが記憶に残りやすいと思う。
個人で参加される方も、写真はもちろん、ノートやメモにキーワードなどを簡単にでも書き留めておくなりすることがおすすめだ。
筆者も、初めてCESに参加した時のことを忘れまいと思いながら、こうして記事を書いている。この記事はまず1本目で、後日実際に回ったブースや印象的だった企業などのまとめも公開していく予定だ。
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