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話題の無人タクシー「Cruise」に乗ってみた、驚愕のユーザー体験とは?

話題の無人タクシー「Cruise」に乗ってみた、驚愕のユーザー体験とは?

サンフランシスコ発デザイン会社の公式ブログ
btrax

サンフランシスコの街を歩いていると、頻繁に屋根の上やドアの横に各種センサーやカメラのついた車を見かけることがある。これらは自動運転を実現するためのテスト走行を行っている車両で、WaymoやZooxなどのスタートアップのもの。

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そんな自動運転車両の中でも、一際目立つのが白とオレンジでカラーリングされた Cruiseの車両。彼らのオフィスが我々btraxと同じブロックにあることもあり、SOMA地区ではしょっちゅう見かける。

無人タクシースタートアップのCruise車両

Cruiseとは?

このCruiseというスタートアップは自動運転技術を利用し、無人タクシーの実用化を目指している。これまでにGeneral Motors (GM) を筆頭に実に合計150億ドルもの資金を集めている。

オフィスはサンフランシスコのSOMA地区にあり、元々Dropboxの本社として建てられたビルを利用。

以前にSF Design Weekというイベントにて同社デザイナー達がこれからの自動運転に求められるUX設計に関するセッションを行なっていた。

Cruise本社で行われたイベントの様子

2022年より実用テスト開始

2013年にスタートしたCruiseであるが、10 年弱の時間を経てやっと実用テストが開始された。

2022年の2月にサンフランシスコ市からの認可がおり、公道でのテスト走行が許可された。

そして、同年7月にはアプリを利用して課金も開始された。と言っても、現在はまだクローズドベータの状態で、選ばれた数少ないユーザー向けにしかサービス提供を行なっていない。

ちなみに、筆頭株主がGMということもあり、車両はGM製のEV、シボレー・ボルトが採用されている。

Cruiseに採用されているのはシボレー・ボルト

ついに招待状が届いた!

そして念願の招待状がメールで届いたので日本から来たスタッフと一緒に乗ってみることにした。

そしたらその乗車体験がかなりの驚愕の体験だったので、一つずつそのポイントをこれから紹介する。

Cruiseから届いた招待状

オンボーディング体験

まずは車に乗る前のアプリに “乗る” ためのオンボーディング体験。これはかなりスムーズで、UberやLyftなどの有人ライドシェアアプリに慣れていれば、かなりわかりやすい。

乗るところから降りるところまでの利用方法もアプリ内でステップバイステップのイラストで説明されているので、ストレスは皆無だった。

オンボーディング体験はかなりスムーズ

乗れる時間とルートがかなり制限されている

さて、ここからが問題。実はCruiseのサービスはまだ試験運転中ということもあり、サンフランシスコ市だけでしか利用できない。それも、エリアと利用時間がかなり制限されている。

というのも、限りなく安全に利用できるようにするために、市から許可された内容にかなりの制約が課されている。具体的には、利用時間は夜の10時から朝の6時まで。走行できるのは密集地を避けた市内の1/4程度のエリアのみ。最高速度は30マイル (48キロ) まで。など。

走行できるエリアはかなり制限されている

早速利用してみる

でもやっぱり乗ってみたいことには変わりなく、夜の10時を待って利用してみることにした。それもわざわざCruiseに乗るためだけに利用エリアに車で出向き、特に目的もなく呼んでみた。

なお、アプリの利用感は他のライドシェアとほぼ同じで、違和感は全くない。

Cruiseのアプリ操作画面

乗り場を指定したのに歩かされる

ただここに一つ落とし穴があった。本来であれば指定した場所に来てくれるはずのライド系アプリなのだが、Cruiseの場合はどうやらルートに制限があるらしく、自分がいる場所から少し先のピックアップポイントまで歩かせられる結果となった。

まあ、この辺もまだまだベータ版ということだと理解した。

夜10時を過ぎると複数のCruise車両が市内を走り出す

車がなかなか止まらない

今回担当してくれる車両の名前 (ニックネーム) は、ブルーベリー君。

そして実際に車両が来たのだが、近くに来て減速した後に一旦止まってからまた少し前に進んだりと、かなり自信なさげ。止まるところを探しているのか、乗客を探しているのか、かなりきょどった感じだった。

実際にやってきたCruise車両

そして本当に無人だった!

車両が目の前に停まった時点から5分以内にアプリでドアを解除し、乗る仕組み。

当たり前なのだが、中には誰もおらず、本当に無人タクシーだった。これはかなり驚いた。というか感動した。人生で初めて運転手のいないタクシーに乗るのだから。

運転席には誰もいない!

座席前にタブレット表示と車内アナウンスが流れる

実際に乗ってみると、座席の前に二つのタブレットが設置され「Cruiseへようこそ。まずはシートベルトをお締めください。シートベルトが装着され次第出発します。」という自動アナウンスが流れた。

この辺もこれまでの有人タクシーやライド系アプリと比べてもかなり未来的な感覚を覚えた。

後部座席の前にはタブレットが設置される

運転はかなり安全

そして肝心の運転なのだが、かなりゆっくり& 正確で、かなりの安心感を得られた。自動運転自体はこれまでもTeslaで何度も経験しているので、恐怖心はほとんど無い。

でも… なぜか降ろしてくれない!

そんな感じで順調に乗車体験が進んだのだが、ここで大きな問題が発生!車内アナウンスで「そろそろ目的地に到着するので降りる準備をしてください」とのメッセージが流れるも、一向に止まる気配がない!

同乗していたスタッフの「あれ、これかなり遠ざかってませんか?」の一言で気づいたのだが、目的地からどんどん離れていってる。

そろそろ目的地に到着するお知らせ

同じルートを何周も

慌てて車内のタブレットを見てみると、確かに目的地から遠ざかっている。それだけではなく、一度きたルートをもう一度周っている様子。

まあ急いでるわけでは無いので、サンフランシスコをぐるぐる回るアトラクションと考えれば良いが、スタッフの「いや、アトラクションはちゃんと止まってくれますよ」の一言で現実に気づく。

タブレットには同じルートが何度も表示される

強制終了も、指定したところからかなり遠いところで降ろされる

黙っていても一向に止まる気配がないので、車両の天井部分に設置されている “END RIDE” ボタンを押して止めてもらう事にした。これは文字通りの “強制終了” ボタン。

本来は押さなくても良いのだが、今回は押さないと止まらないので、利用することにした。

やっと止まってくれたと思ったら、本来の目的の場所からかなり離れた場所に停められ、結局真夜中にサンフランシスコの坂道を3ブロックほど歩く羽目になってしまった。

座席上部に設置される強制終了ボタン

そしてもう一回… 乗れない!

Cruiseに乗る目的で移動したわけだから、帰りももちろんCruiseに乗る… 予定だった。しかしここでまたトラブル発生!なんとアプリで呼んだスターダスト君が目の前に来たと思ったら、何度も素通りしていくのだ。

3, 4回目ぐらい周ってきて、でやっと減速して止まってくれたかなー、と思ったらまたノロノロと動き出して去っていってしまった。これはかなり切なかった。

諦めて歩くことに

もう時間も時間 (23時過ぎ) だったので、スターダスト号に乗るのは諦めて歩いて帰ることにした。実はCruiseのルートはかなりの遠回りで、歩けは数ブロックの距離。

もうしばらくはこの車両は見たくない!っていう怒りを覚えたが、帰りに見たグレース大聖堂の美しさに癒され、気持ちが治まった。

帰りに見たグレース大聖堂

結論: まだまだ改善点が多いけど今後に期待!

さて、今回のCruiseに関するユーザー体験調査だが、かなり複雑な気持ちにさせられた。

サイトやアプリなどのソフト面はかなり完璧に近い。

しかし実際の車両に乗車した際の体験はそのクオリティー云々よりも、誤作動が多すぎて、全くタクシーとして機能していないと言わざるを得なかった。

そもそも止まってくれない、降りれない、というのはタクシーとしては完全に致命的。

まあ、まだまだベータ版だから、という気もするが、実際に課金もしているし、早く解決してほしいなと思った。

ちなみに気になる料金はUberで同じ距離を乗った場合の半額ぐらい

でもやっぱり思うのは、こんな状態でも実地でテストさせてくれるサンフランシスコ市の懐の深さだろう。

やっぱり新しいイノベーションが生み出されるのはこういう場所なんだろうなー。と感じた。

おそらく東京では絶対にテストさせてくれないと思う。

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