【2022年ベストバイ】FASHIONSNAP社長 光山玲央奈が今年買って良かったモノ

イレニサのMODIFIED SHAWL COLLAR JACKET

F：去年も登場した「イレニサ（IRENISA）」ですが、今年はジャケットをピックアップですね。

光山：去年買ったORNAMENTAL FLY FRONT SHIRTがすごく好評で。今年は、ジャケットが良くて買いました。ラペルが面白いんですよね。

F：ギャルソンと同じくショールカラーっぽいデザインですが、微細なカットが加えられていて、初めて見るデザインです。

光山：こういうところにシビれますね。ショールだとフォーマル感があるんですけど、いじり方でだいぶ印象が変わりますよね。イレニサは細かいところをいじるのが上手で、服好きにはたまらないディテールが特徴だと思ってます。

F：色はアーミーグリーンで、色味としては珍しいですね。

光山：この手の色は、軍人感が出てしまって重い印象になるんですけど、適度に余裕を持たせたシルエットでコテコテにはならないようになっていますね。ボタンをブラックにしていないところも、軽さを出してくれて良きです。ボタンが、水牛でちゃんとロゴ入りなところが凝ってるなぁって感じます。

F：裏の仕立ても綺麗ですね。

光山：ジャケットってやっぱり裏が影の主役ですよね。裏がしっかり作られていると、安心感があります。裏返して気づいたんですけど薄くパッドが入っているんですね。軽い着心地だから気がつきませんでした。

F：ジャケット着る人が少なくなったと言われていますが、そう感じますか？

光山：うーん、ジャケット自体ならそこまで減った気がしませんけどね。ただ、オーセンティックなジャケットを着ている人は減りましたよね。ディテールはクラシックなんですけど、オーバーサイズで崩した感じが多いですよね。やっぱり足元のスニーカーが影響しているのかな、と思います。

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トム ブラウンのタッセルローファー

F：かわいいですね！

光山：タッセルローファーは初めて買った気がします。このタッセル部分にトリコロールが忍ばせてあって、これを見た時にやられました。

F：タッセルローファーってかわいさと革靴のかっこよさを両立させるのが難しいんですよね。

光山：そうですね、相反するものですからね。これは作りは質実剛健なんですが、心なしかタッセルが大ぶりで程よいアクセントになってくれてるんですよね。踵部分のトリコロールも加わって、「愛嬌のあるしっかり者」みたいな感じです。

F：「トム ブラウン（THOM BROWNE）」のシューズは初めてですか？

光山：初めてですね。スーツ、シャツ、ネクタイ、カーディガン、コート、メガネと大体は買ったんですが、シューズは今回が初です。なんか避けていたんですよね。

F：そこまで揃えておいて「避けたい」という心理が働くんですね（笑）。

光山：全部トリコロールあるとやりすぎかなぁって（笑）。なので、スーツを着る時は「ジョンロブ（JOHN LOBB）」とかを履いていました。今度、これをスーツに合わせてみようかな。

F：トム ブラウンのスーツは時々着ていますよね？

光山：はい、時々着ますね。着ていつも思うのが、本当に生地が良いです。あれは他ではなかなかないんじゃないかというくらいクオリティが高いです。独特のスタイルなので好みが分かれると思いますけど、機会があれば皆さんにぜひ一度着てみてほしいですね。

F：今は「ZEGNA（ゼニア）」のグループに入りましたが、持っているアイテムはその前のものですよね？

光山：そうですね。なので4年以上前、いや、2014年のベストバイ企画に登場しているので8年前に買ったものですね。大分時間が経ちましたね。

F：8年前！ まだ着られているのが凄いですね。

光山：たぶん、その時に持っていたスーツはトム ブラウン以外は全部入れ替わりましたね。そう考えると、トム ブラウンのスーツは、本当に完成度が高いんですね。今着てもまったく色褪せないかっこよさで、スーツにありがちな「オーセンティックなはずなのに、時間が経つとなんか変」みたいなものが全くないですからね。

F：完成されたスタイルだからこそでしょうか。

光山：スタイルを作る強さを感じますね。スーツだと、「シャネル（CHANEL）」スーツもまさにスタイルですし。高くても買う価値があるなと思います。

クロムハーツのタオル

F：「クロムハーツ（CHROME HEARTS）」でこんなのがあったんですね！

光山：今年の贈答品を何にしようか迷っていたんですが、困った時のクロムハーツ頼み、と思って入った時に見つけました。タオルは初めてのリリースらしいです。

F：日本製なんですね。

光山：日本企画らしいです。どこの産地かは聞かなかったのですが、まぁ、たぶんあそこでしょうね（笑）。

F：クロスが全面に施されていてクロムファンにはたまりませんね。

光山：クロムハーツでプレゼントを探すときは、ヘアゴムが最適解だと考えているんですけど、持っている人には何をあげるか迷うんですよね。値段が高すぎてもいけないですし。このタオルは今年初リリースで、「人気がなかったら廃盤になるかも」と言っていたので、とりあえず買っとくかということで自分の分と贈答品の2枚買ったんですけど……。

F：なんかあったんですか？

光山：タオルのサイズが小・中・大あって店員さんに「このタオルっていくらですか？」と聞いたら、2万円くらいと言われて「さすがクロムハーツ……」って思ったんです。なので小は5000円くらいかなって思って、自分用に小、プレゼントとしてバスタオルサイズの大の2枚をレジに持っていったら会計が8万円だったんですよね（笑）。

F：凄い金額ですね（笑）。

光山：え！ このバスタオル6万円するの!? ってビビりました。てっきりバスタオルが2万円で小タオルは5000円くらいだと思っていたので。2万円のバスタオルも聞いたことないのに、遥かに超える6万円は今後二度と出会えないでしょうね（笑）。

F：レジまで行ったら、キャンセルしにくいですよね（笑）。

光山：店員さんがなんか申し訳なさそうに「大丈夫ですか？」って気遣ってくれたので、「大丈夫です！ さすがクロムハーツですな！ はっはっはっはっ！」って頑張りました（笑）。

F：もらった人はラッキーですね。

光山：いや、さすがにそんなにするとは思わないはず（笑）。僕がもらっても思わないですし。

今年を振り返って

F：今年を振り返ってどうでした？

光山：まだコロナの影響があって、店舗でしっかり見たという経験が少なかった気がします。最近は富裕層をしっかり捕まえる施策を行うところが多くて、外商などに良いものが流れて、店頭に出なくなった気がしますね。

F：百貨店などは特にその傾向にありますよね。

光山：売り上げ増などのニュースを見ると、ビジネスとしては正しいんでしょうけど、回る楽しみが減ったなぁって感じます。特に富裕層ほど面白いアイテムにお金出しますから、見ていて楽しいアイテムに店頭で出会うことが少なかった年でした。

F：今年は、三宅一生氏や森 英恵氏などが死去するなど激動の年だったと思います。

光山：本当に色々ありましたね。アレッサンドロ・ミケーレ（Alessandro Michele）も「グッチ（GUCCI）」を去るなど、時代の転換点なのかもしれませんね。コロナが落ち着き出して、色々顕在化してきたというか。分断を感じることが多かったです。

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F：良いものが店頭に出ないなどの富裕層重視みたいなものですか？

光山：それは格差ですかね。それだったら埋められるとは思うんですけど、もっと心理的な部分ですね。そういう世界で生きている人達とそういう世界を眺めるだけの人達に分かれたというか。自分の生きている今と違う世界が存在していて、それが同じ世界だって思う人が減った気がします。すごく狭い世界のなかにお互いが住んでいるというか。

F：ビジネスとしては顧客重視にはなってしまいますから、取り残される人たちも増えますよね。

光山：それでビジネスが好調なのが今で、この路線で行こうということになっていると思います。フォーカスしすぎて、その結果、どんどん溝が深まっているというか。どこかで接点を持ち続けないと、社会が持たないんじゃないのかな、と思う時があります。

F：去年も同じようなことを言っていますね。

光山：狭い世界ですね（笑）。でも光明もあって、そのなかで準備していた人がこれから色々と出てくると思います。夜明け前が一番暗いとも言いますからね、それが今年だったかな。なので来年は、できたて・生まれたてのブランドやデザイナーの発掘に勤しみたいと思います。

F：とかいって、またラグジュアリー一色の買い物になる気もしますけど。

光山：それはその時で（笑）。

■光山玲央奈
FASHIONSNAP創業者。2009年に株式会社レコオーランドを設立し、代表取締役に就任。10分どん兵衛が主食。