韓国高麗人蔘社オフィス内のショールーム
Image by: FASHIONSNAP
韓国コスメブームをけん引するブランドのひとつ「ロムアンド(rom&nd)」が2019年に日本に上陸してから3年。日本総代理店である韓国高麗人蔘社は韓国コスメを中心に15ブランドを展開するが、ロムアンドはこの3年で主力事業に育ち、同社全体の売上高は2019年から約6倍に急成長し、「日本は韓国に次ぐ重要な市場」と位置づける。代表取締役の金拏侖(キム・ナユン)氏に、コロナ禍でのヒットの背景と今後の戦略について聞いた。
ロムアンドは韓国でYouTuberとして活躍するビューティークリエーター ミン・セロムがプロデュースし、2016年にスタート。カラーリストとしても活動するミンがこだわるカラー展開に定評があり、デビューアイテムのマットタイプのリップ「ゼロマットリップスティック」は、韓国で流行した「MLBB=My Lips But Better(自分の唇の色に近いが、より綺麗に見える色)」と呼ばれるリップカラーのひとつとして注目を集めた。日本では、ブランド公式サイトの開設を前に、高発色でツヤ感が持続するリップ「ジューシーラスティングティント」がSNSで“バズった“ことから一気に人気に火がつき、越境ECや韓国旅行で購入する人が目立った。
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日本にロムアンドが上陸したのは2019年の11月。年明け早々に新型コロナウイルスが流行し、外出自粛や小売店の臨時休業といった事態に見舞われたものの、同社の売上は毎年前年を上回って着地する。2020年はステイホーム期間での韓流コンテンツの人気から「第4次韓流ブーム」とも呼ばれ、ロムアンドを含む韓国コスメブランドもその恩恵を受けた。そうした状況でさらに追い風となったのは、SNSでの口コミ発信だという。「コロナ以前から日本の皆さんがSNSで紹介してくださったことが大きい。ゼロマットリップスティックやジューシーラスティングティントは『韓国アイドルのようなリップにおすすめ』と韓流好きな方からスタートし、マス層にも広がり予想を上回る売上につながった」(金社長)。購買層は10〜40代の女性と幅広く、母数は少ないものの男性の熱心なファンもいる。
また、例年通りの新商品のスケジュールを維持したこともファンの獲得につながったという。「日本の化粧品市場は状況を見ながら新作を例年より抑えた印象があったが、韓国はコロナ禍でも新作を出し続けるのが普通。ロムアンドでもお客さまを少しでもワクワクさせるために通常通り、年間20〜30SKUの新商品を発売した」。卸先の臨時休業中はECが販路の中心になったものの、リップが1500円以下、アイシャドウパレットが2000円以下という価格設定も「試し買い」を後押しした。新作の発売と購入ハードルの低さによりSNSでの口コミが断続的に広まり、結果的に安定した売上につながったと分析する。
同社はSNSでの口コミ増加を受け、タッチポイントを拡大するため出店を一気に加速した。現在オフラインのみでバラエティショップやドラッグストアなど約1万店舗で取り扱っている。話題性とアクセシビリティの向上により、日本のベストコスメにもノミネートされるなどブランドの地位も徐々に確立されてきた。しかし金社長は、今後の出店について「お客さまが買いやすい環境が整い、ロムアンドはただ売るだけではない段階に入ったと思う。これからはブランドの世界観に対する理解を深めるため出店先を厳選していく」という。
一方でお客とのコミュニケーションは活性化させる。「私たちはお客さまに支えれてきた。より深くコミュニケーションをとることでロミリー(ブランドのファンの愛称)たちにリアルなユーザー視点で商品を紹介してもらい、日本のロミリーを増やしたい」と語る。既に韓国では本社にロミリーを招待して新作のタッチアップ会を開催。昨年早稲田に移転した韓国高麗人参社の社屋には、ショールームスペースやミーティングルームを設け、こうしたコミュニケーションの場として活用する考えだ。日本の消費者の声を集め、限定商品や日本発信の商品開発も推進するという。
商品面ではコラボレーションも積極的に実施。好評を得たことから、来年以降も検討していくという。そのほかローカライズの布石として、12月には日本上陸3周年を記念した限定セットも発売した。
日本でのビジネス拡大に向け、バックオフィスや物流もテコ入れした。新社屋は8階建てで、営業やマーケティングの全部署を集約したほか、ユーザーとの接点となる場も併設。また今年は新たな物流センターを稼働させ、効率的な業務環境を整えた。同社の2022年の売り上げは2021年比16%増で着地予定。2023年は2022年比で20%増を見込む。
■ロムアンド:インスタグラム日本公式アカウント
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