ファッション業界では現在、さまざまなメーカーがリサイクルによって地球への環境負荷を下げるアクションをとっている。
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例えば、アウトドアブランドにおいては販売する新製品の素材のほとんどにリサイクル原料を使用することで、工場から排出する二酸化炭素や海洋汚染に直結するプラスチック素材を削減する試みなどを実施し、消費者から受け入れられている。
このように、徐々にリサイクルに対するマインドが高まる中、着なくなった服を回収・リサイクルした後に、再製品化することで循環させる仕組みである「BRING™」を展開しているのが株式会社JEPLANだ。
今回、同社のプロダクトマーケティング課の中村崇之さんに、サーキュラーエコノミー型事業の中身とこれからについて聞いた。
リサイクルプラットフォーム「BRING™」の仕組み
はじめに、同社は「あらゆるものを循環させる」をビジョンとして掲げているが、どのような経緯で創業されたのだろうか。
「2007年に、現取締役会長の岩元美智彦が、当時大学院生だった現代表取締役社長の髙尾正樹を誘う形で日本環境設計株式会社(現:株式会社JEPLANを)設立しました。岩元がもともと繊維事業者の営業職で、繊維業界の廃棄問題を課題として捉えていたことが創業のきっかけになっています。
そこからユニフォームのコンサルティング事業や、回収した古着からバイオエタノールを製造するなど、リサイクル事業を進めてきました」
その中で生まれたリサイクルプラットフォーム「BRING™」とは、一体どのような事業なのだろうか。その具体的な中身とは。
「当社の主要事業はPET(ポリエチレンテレフタレート)ケミカルリサイクル技術を活用した関連事業で、ものづくりに取り組みながら、広くサプライチェーンに携わっています。
『BRING™』とは、アウトドアアパレルブランドの機能も持ったリサイクルプラットフォームです。多くの企業パートナーなどの協力を得て、不要になった衣類を回収し、素材に応じたリユース・リサイクルを実施しています。
回収衣類の中でもポリエステル繊維100%の衣類については、当社の工場でリサイクルして再生ポリエステル樹脂に生まれ変わります。その樹脂を用いて当社オリジナルのアパレル製品を製造し、当社の直営店(東京・恵比寿)やオンラインショップなどで製品を販売しています。
衣類回収は提携している、主にアパレル企業の店頭に回収ボックスを設置して、実施しています。回収拠点は、全国に約3500拠点(期間限定開催も含む)あります。回収を促す施策として割引サービスなどが行われている場合もあります(提携企業が回収する場合、その企業が割引サービスを提供)。
回収した衣類をリサイクルして作り出される新たなアイテムは、スポーツウェアやアウトドアウェアとしても着用できるものです。ベーシックなデザインを特徴として長く着られるもの、他にもTシャツやスウェット、ソックスなど全部で40種類ほどを販売しています。この『回収→リサイクル→新しい服の製造・販売』という流れが、弊社の目指す『服から服をつくる』循環になっていますね」
「BRING™」の核となる技術と、立ちはだかったハードル
「BRING™」の大きな特徴は、ポリエステル繊維のリサイクルとなっている。
「弊社には、回収した衣類のポリエステル100%の衣類を、新品とほぼ同等品質のポリエステル樹脂『BRING Material™』に再生するPETケミカルリサイクル技術『BRING Technology™』を有しています」と中村さん。
しかし、従来ポリエステル繊維には不純物などが混じることなどから、リサイクルが難しいとされていた。こうした課題を、どのように解決したのだろうか。
「求められる再生ポリエステル樹脂の品質を保ちつつ、プラントに投入する原料を、ポリエステル100%の繊維くず→ポリエステル100%の白いTシャツ→ポリエステル100%の色付きの衣類と、少しずつ難易度を上げていきました。
実験を行うにあたって、巨大なプラントと小さいビーカーでは事情がまったく違います。ビーカーの実験では成功してもプラントで運用するのは非常に困難でした。
どういうことかと言うと、ポリエステル原料1トンに対し不純物の混率がたった5%であっても、約50kgに相当します。Tシャツに換算して150〜200枚にもなります。化学プラントは簡単に止められないので、不純物の効率的な排出方法と、加熱・加圧の反応条件のベストを探っていくのが大変でした。
通常はプラント建設はエンジニアリング会社に発注するケースが多いのですが、私たちの北九州にある自社工場は、設計から仕様まで、すべて自分たちで手掛けています。ボルト1本から自分たちで発注しましたね。
試行錯誤しながらやってきたノウハウが蓄積されているので、それは将来的に工場がスケールアップする際にも効いてくると感じています」
BRING™は「循環」してリサイクルの未来を変える
最初に「循環」というキーワードが出たが、古着の回収からプラントでの素材リサイクル技術、そして新たな衣料アイテムの生産・販売と、まさにJEPLANの技術と仕組みが、一連の循環の行程を担っている。
そこで最後に、同社の今後の展望と、サーキュラー・エコノミーに対する認識について聞いた。
「当社は、他のブランドとのコラボレーションやポップアップストアなどを展開していますが、今よりもさらに消費者の巻き込みを強化していきたいと考えています。
また、自社でメディアの立ち上げやイベントの実施など、サーキュラー・エコノミーに消費者が関わってくれる循環型社会の文化を醸成していきたいです。
そして、やはりアパレル産業が地球環境へ与える負荷は大きい現状があり、世界規模で業界の環境配慮への取り組みが進みはじめています。私たちが行っているようなリサイクルは業界全体で促進されていくと見ています。
弊社としても、そうしたサーキュラー・エコノミーを牽引し、『あらゆるものを循環させる』というビジョンを実現していきたいですね」
PROFILE|プロフィール
中村 崇之(なかむら たかゆき)
株式会社JEPLAN 営業業務部 プロダクトマーケティング課 課長
1982年生まれ。2006年 東京造形大学メディア芸術専攻卒業。2008年 早稲田大学大学院国際情報通信研究科修士課程修了。2007年 Ars Electronica, Next Idea, Honorary mention 受賞。2010年 JEPLAN入社(旧 日本環境設計)。入社時よりBRING(旧 FUKU-FUKU)のディレクションを担当。現在はマネージャー、事業開発、ブランディング、マーケティング、企画、MD、D2C等を担当。BRINGブランドで2020年グッドデザイン賞金賞、2022年red dot design賞受賞。
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