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流行を取り入れたアイテムを安価で購入できるファストファッション。日本では現在、路面店から大型ショッピングセンターまで、国内外のショップが数多く出店し、しのぎを削り合っています。最近では「FOREVER21」や「アメリカンイーグル」の再上陸や、中国発のECブランド「SHEIN」が東京・原宿に日本初の店舗型ショールームをオープンするなど話題を呼んでいます。そこで今回は、今やアパレル業界で確固たるポジションを確立しているファストファッションについて紹介していきます。
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ファストファッションの定義とは?
ファストファッションとは、流行を取り入れたファッションアイテムを大量生産し、低価格で販売するアパレル業態のひとつ。一定基準の品質を満たし、デザインも幅広い層に受け入れられるようにアレンジされているのが特徴です。アパレルのジャンルとしては、ハイブランドの対義語であるローブランドの中に属するものとされています。日本では1990年代後半から外資系ブランドの進出も見られるようになり、2000年代中盤から勢いが加速。店舗数の拡大に加え、近年では著名デザイナーとのコラボレーションで高品質化をはかる動きも見られます。言葉の意味は手早く・安く商品を手に入れられることから、ファストフードになぞらえて使われるようになったもの。2009年には新語・流行語大賞ではトップテン入賞も果たしました。
日本におけるファストファッションの歴史
外資系ではGAPが1995年、ZARAが1998年にそれぞれ日本一号店をオープン。日本のファストファッションの先駆けともえるユニクロは1984年に広島に1号店を開業しました。当時はナショナルブランドの小売りという業態で、初日は早朝6時に開店し、行列待ちの人々に牛乳やパンが無料で配布していたという逸話も。ユニクロはGAPの「Speciality store retailer of Private label Apparel」(SPA 日本語では製造小売業)という業態を取り入れ、1997年頃からプライベートブランドの開発・製造・販売を一貫して行うスタイルへとシフト。1998年に発売したフリースが大ヒットを記録し、ブランドの知名度が一気に拡大しました。2000年代中盤からは、海外のブランドの日本進出も目立ちましたが、本社の経営難や日本での経営構造がうまく機能しなかったことなどが原因で、多くの店舗が撤退を余儀なくされています。
【日本でのファストファッションブランドの動き】 1984年 ユニクロ 1号店オープン : 1995年 GAP 1号店オープン 1998年 ZARA 1号店オープン : 2008年 H&M 1号店オープン 2009年 FOREVER21 1号店オープン : 2012年 アメリカンイーグル 日本上陸 2019年 FOREVER21 日本撤退 2019年 アメリカンイーグル 日本撤退 : 2022年 アメリカンイーグル 日本再上陸 2023年 FOREVER21 日本再上陸
※「FOREVER21」は、2000年に三愛と提携して2店舗出店したが1年ほどで撤退している。
問題点と取り組み事例
アパレル不況でも業績を伸ばし続けているファストファッションは、大量生産であるがゆえに抱えている問題も見られます。商品が頻繁に入れ替わり、低価格ゆえに使い捨て感覚で購入する人が多いことから衣類の大量廃棄を招き、ファストファッションが環境汚染の一因になっているという指摘もあります。そんな問題点に対し、国内ブランド「ユニクロ」は、同社の不要な服を回収してリユースさせるキャンペーンを展開。「ZARA」や「H&M」などの海外ブランドも、素材をサステナブルなものに変更する、再生可能なエネルギーを使用するといった取り組みを行っています。
また、製造過程における大量のエネルギー消費やCO2の排出なども問題について、環境保護団体のグリーンピースは2011年、世界的規模のブランドに有害化学物質の排出や使用を中止するよう提言。2019年には先進国首脳会議(G7)で、気候変動・生物多様性・海洋保護を柱とするファッション協定に32社が署名。現在までに、60社・200以上のブランドが署名しており、「ZARA」や「H&M」も加盟しています。
そして生産者の賃金など労働面についての問題もしばしば取り上げられています。ファッションブランドは安く服を作るために発展途上国で生産を行っています。待遇の悪い企業の中には賃金だけでなく、衛生面や安全管理が劣悪なのも見られ、2013年にはバングラデッシュの縫製工場で倒壊事故が発生。多くの犠牲者を出し、この事故がきっかけで20カ国以上、220ものアパレル企業が「バングラデシュにおける火災予防および建設物の安全性に関する協定」に署名。現在は「繊維・縫製産業における健康と安全のための国際協定」という名称に変更され、安全な労働環境を作るための取り組みが進められています。「ユニクロ」や「H&M」「ZARA」などが署名しています。
代表的な海外ファストファッションブランド
FOREVER21
1984年にアメリカ・ロサンゼルスで創業。最新ファッションをいち早く商品に取り入れ、低価格でフルコーディネートできることから、流行に敏感な女性からは圧倒的な支持を集めています。2009年に日本進出を果たしますが、2019年に実店舗、Eコマース店舗ともに撤退。SPAブランド(企画・製造から販売まで一貫して行う業態)を展開するアダストリアをパートナーにブランディングを新たにし、2023年春から再上陸店舗を関東・関西でオープンすることが発表されました。
アメリカンイーグル
アメリカンイーグルはアメリカ・ピッツバーグで1977年に創業。東海岸のカジュアルスタイルを打ち出し、ほどよいヴィンテージ加工を施したアイテムは男性を中心に人気を獲得。特にポロシャツはラインナップも豊富で、同社の看板商品の一つとなっています。日本には2012年に進出しましたが、2019年に撤退。2022年10月に東京の池袋と渋谷に旗艦店をオープンさせることが発表されました。
SHIEN
2008年に中国で設立。創業以来、実店舗を持たず、限定的なポップアップを除き、販売はオンラインのみで行っています。商品の入れ替わりが他社と比べて群を抜いて早く、プロモーションにSNSを活用。若年層からの支持が厚いのが特徴です。2021年には専用アプリのダウンロード数が1.9億回を記録し、大きな話題となりました。日本語にも対応しているので安心してショッピングを楽しむことができます。
ZARA
海外ファストファッションの中でもアイテム数が際立っているZARA。1975年にスペインで創業し、全世界で2000以上もの店舗を展開。日本では1998年に第1号店をオープンしました。競合他社やターゲットへの入念なリサーチで先進的なデザインを生み出し、ストリート系からヨーロッパ系のモードまで幅広く対応。20〜30代の女性を中心に支持を獲得しています。
H&M
スウェーデンを代表するファストファッションブランド・H&Mは1947年に創業。日本には2008年から進出しています。世界各国のカルチャーを貪欲に取り入れ、近年ではNetflixのドラマ『ストレンジャー・シングス』や南アフリカのブランド・MANTSHOとのコラボレーションアイテムを発表して話題となりました。個性的でありながら、他社ブランドともコーディネートを組みやすいのが大きな特徴です。
GAP
アメリカ・サンフランシスコで1969年に創業したGAPは、当初、リーバイスなどのジーンズ専門店として店舗を展開。セレクトショップの業態から徐々にプライベートブランドの開発に注力するようになりました。普遍性に軸を置きながら流行のエッセンスも取り入れたデザインが人気を博し、ポケットTシャツは同社を代表するアイテムとして現在も親しまれています。日本には1995年に進出しました。
TEXT:伊東孝晃
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