今でこそファストファッションが浸透していますが、本当にオシャレな人が実践しているのは「良いものを長く愛用する」こと。多少価格は高くても、手入れをしながら長く着られる服を選ぶのは、シックで知られるフランス女性のモットーでもあります。オシャレさんはもちろん、ブランドやショップの顔として店頭に立つ販売員にとっても、自社の洋服を美しく纏うために日々の洋服の手入れは必須。お客様から商品のお手入れ方法を尋ねられる機会も多いため、洋服のケア方法を知っていると役立つことも多いはずです。今回は、洋服を長持ちさせるコツやケア方法について紹介します。
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洋服を長持ちさせるコツ
お気に入りの洋服を手に入れたら、少しでも綺麗な状態で長く愛用したいと思うでしょう。しかし衣類は消耗品であるため、袖を通す機会が多いとそれだけ傷むのは当たり前。そこで大切になるのがケア方法です。正しくケアをすれば綺麗な状態を保つことができ、素材によってはよりしなやかになったりツヤが出たりすることも。でもまず一番大事にすべきは、本当に欲しい好みの服を買うことです。大切に着たいと思う服でなければケアはおそろかになるかもしれません。
「着る頻度・着用後のお手入れ・正しい保管」を意識
衣類の傷みは「扱い方」と「汚れ」の2種に大別できます。前者の「扱い方」の場合、代表的なのが生地に適さない洗濯方法で洗ったり、粗雑に扱う、小さなサイズを無理に着ることによる伸びや破損など。そして後者の「汚れ」に関しては、汗や皮脂が付着した状態での放置や、主に皮革製品のカビなどがあげられるでしょう。また、ニット類はハンガーに掛けて収納することで伸びて型崩れが起きるため、その素材に合った収納方法をしているかも大きなポイント。これらを防ぐには、「着る頻度・着用後のお手入れ・正しい保管」が要となります。衣類は着る回数が多いほど傷むので連続で同じ服を着用せず、1日着たら2日は休ませるくらいの感覚を持つこと。そして着用後には必ずケアをし、正しく保管する。それだけで洋服の寿命はかなり伸びると言われています。また、自宅の洗濯機で洗えるものは、洗い上がりに濡れた状態で放置せずにすぐに干す、必ず洋服ネットを使用する、素材に合った洗剤を選ぶのもマストです。
ポイント ■連続で着用せず、1日着たら2日休ませる ■着用後のケア ■生地に合った型崩れしない保管方法 ■洗濯後、濡れたままで放置しない ■洗濯にはネットを使用 ■素材に合う洗剤を選ぶ
クリーニングの種類は大きく3種
自宅で洗えない衣類はクリーニング店に出すのが一般的ですが、クリーニングには水を使わず特殊な洗剤で洗う「ドライクリーニング」、本来水洗いできない洋服を特別な方法で水洗いする「ウェットクリーニング」、傷みづらい衣類を適した温度で洗う「ランドリークリーニング」の3種の方法があります。クリーニング店では衣類の洗濯表示タグを見て最適な洗い方を選んでくれますが、大事な洋服に関しては自分好みの洗い方を伝えることも大切。そのため洗濯表示タグは自分でも必ず確認するようにしましょう。なお、高級衣類に特化した店やシミ抜きが上手な店、毛皮や着物などの特殊クリーニングに強い店など、クリーニング店にも個性と特徴があります。どの服も同じ店にお任せするのではなく、各店の特徴を知り使い分けるのも衣類を長く綺麗な状態で着るためのコツ。販売員ならばお客さまにおすすめのクリーニング店を聞かれることもあるので、少なくとも・上質素材を任せられる・特殊クリーニングやシミ抜きが得意・ほつれ直しなどのリペアが上手な店、くらいは知っておくべきでしょう。
「洗濯表示は守るべき?」と聞かれたら
できれば自宅で洗いたい気持ち、わかりますよね。ですが、衣類にはコットン素材でもドライクリーニング推奨の表示がついているものも少なくありません。実際にお客様から洗濯表示と異なる洗い方でも大丈夫かと聞かれる販売員は多く、その返答に困ることも。もしあなたがそう聞かれたら、正しい回答は「洗濯表示通りに洗ってください」と伝えること。もちろん、よほど特殊な素材や加工でなければ、自宅で洗うことはできます。ただそれはあくまでも「洗うことはできる」だけ。実践すると生地の質感が損なわれたり縮みやヨレが起きる、家庭用アイロンでは伸ばしきれない皺が入るなど、衣類に大きなダメージが残る可能性も。販売員の立場からすれば自宅で洗える衣類の方が売りやすいため、つい「大丈夫だと思います」や「私は洗いました」と言ってしまいがちですが、もしそれが原因でクレームが来たらお客様もあなたも悲しい思いをすることになります。そのため洗濯表示は必ず守る、それが結果的に衣類を傷めず、気に入って購入してくださったお客さまに長く愛用していただけることに繋がります。
知っておきたい着用後のケア方法
洋服を長持ちさせるためにはいくつかの道具が必要で、代表的なのは洗剤、ブラシ、ファブリックスプレー、ハンガー、スチームアイロンなど。どれも販売員なら必携のものばかりですね。例えば洗剤なら衣類のタイプに合わせ中性洗剤と固形石鹸、洗濯用洗剤の3つは必須。シャツの襟元は固形石鹸を使うなど、用途によって使い分けたりデリケート素材には中性洗剤を選ぶなど、素材によって洗剤を変えるのは基本です。
秋冬アイテムの取り扱い
コートやジャケットは専用ブラシで埃を落とし、一晩程度は陰干をして湿気を取り去ってください。これはデニムなど色落ちしやすく着用ごとに洗わない衣類も同じで、着用時に汗や湿気を生地が吸ってしまうため、脱いだらすぐにしまわずに乾燥させる一手間が必要。その際は日焼けを防ぐためにも必ず陰干にし、衣類用のファブリックミストを使うのもおすすめです。
カシミヤやウールなどは脱いだらスチームアイロンを当てて繊維についた臭いやシワを取り、そこから陰干をします。そして保管ですが、ワイヤーやプラスチック製の薄くて細いハンガーは使わないこと。生地の重みを支えられる木製やプラスチックでも型崩れしにくい形状のハンガーを選び、クローゼットにぎゅうぎゅうに詰め込まず、各衣類の間に手が差し込めるくらいの隙間を開けることで通気性を保ちながら保管しましょう。
ニット類はふわりと畳んで引き出しなどに収納するのがベストです。ちなみに、ニット類はどうしても毛玉ができてしまいますが、着用後にブラッシングで繊維の毛並みを整えることで毛羽絡みを防ぎ、毛玉そのものができにくくなります。ウールは風合いが損なわれ縮みの原因になるので、洗濯は必ずクリーニング店にお願いしましょう。長く保管する際、ニットをはじめ天然素材の衣類の収納場所には必ず防虫剤を用いてください。
お客さまの中には何年も前のコレクションを綺麗な状態で愛用されている方がいます。そういう姿を見ると自社の製品が大切にされていることに幸せな気分になるはず。今はファッションブランドもエシカルな視点でのモノ作りが当然になってきていますが、お気に入りを長く着るということは、それ自体がサステナブルファッションの実践にもなると言えるでしょう。
TEXT:横田愛子
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