(左から)横尾美星氏、江連智暢氏、岡部義昭氏、遠山麻依氏、堀場聡氏
資生堂が、ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現する技術「LiquiForm(リキフォーム)」を世界で初めて化粧品に採用したつけかえ容器を開発した。
今回の技術は、同社が行った「資生堂イノベーションカンファレンス2022〜知と体験の融合〜」で発表した。リキフォームは、AMCOR(アムコア)社が中心となって開発した新規容器技術で、この技術を実用化した吉野工業所と資生堂が共同で化粧品容器を開発。従来、容器工場でボトルを空気で成形し、別の場所にある工場に運搬して化粧水などを充填するといった工程を経ていたが、今回開発した新パッケージ技術により、液体の充填と同時にボトルを成形。これまでバラバラだった2つの工程を一度に行うことができるようになった。これにより、運搬コスト、環境リスクを減らしながら、サステナブルな容器製造を実現することが可能になった。
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さらに容器工場から充填工場への輸送が不要になったことで、輸送時の破損・変形の懸念がなく、つけかえ容器を薄い設計にできるため、容器単体のプラスチック使用量を削減、また容器全体のデザインの幅も拡大。加えて今回のつけかえ容器は、中味使用後に本体容器から取り外して新しい容器と交換できる仕様で、本体容器を繰り返し使用できる設計としている。これらにより、容器単体のプラスチック使用量を約70%削減し、標準的な従来のつけかえ容器に対し約70%のCO2排出量を削減するという。今後この容器をプレステージブランドなどで活用する予定だ。
イノベーションカンファレンスではこのほか、「肌の抗重力システムに関する知見」の発表と、「コラーゲン代謝とマクロファージバランスに関する知見」のプレゼンテーションを行った。肌の抗重力システムに関する知見ではこれまで、十分に解明されていなかった、重力で皮膚が垂れ下がりたるみが起きるメカニズムについて、顔面に高密度に存在する立毛筋群が重力に抵抗していることを発見。この仕組みを「ダイナミックベルトTM」と名付けた。また加齢で立毛筋の数が少なく、その働きが低下することも確認し、立毛筋の加齢変化によりダイナミックベルトTMが失われ、皮膚が重力に抵抗できなくなり、たるみの発生につながるとの考えを発表した。
コラーゲン代謝とマクロファージバランスに関する知見については、これまでのコラーゲン研究は線維芽細胞に関するものが多かったが、免疫細胞の一種であるマクロファージに着目し、マクロファージのバランスが乱れることで、コラーゲンの産生・分解・除去といったコラーゲン代謝に悪影響を及ぼし、肌のハリや弾力の低下を引き起こす可能性があることを明らかにした。また、最新のマクロファージ知見として、表皮において分泌されるタンパク質であるインターロイキン34(IL−34)が少ないとマクロファージのバランスが崩れてしまうことも見出した。
同社は化粧品領域の研究を進める「スキンビューティ イノベーション」、循環型社会の実現を目指す「サステナビリティ イノベーション」、新たな領域へ挑戦する「フューチャービューティ イノベーション」の3つの柱に基づいたイノベーションを推進する。資生堂 エグゼクティブオフィサー 常務 チーフブランドイノベーションオフィサー チーフテクノロジーオフィサー 岡部義昭氏は、「これらを実現するために必要なのが『脱・資生堂カルチャー』だ」と述べ、今後はエリアごとの強みを活かしたグローバルイノベーションセンターでの技術革新を加速させる。欧州ではマイクロバイオームやサステナビリティ、中国ではメディカルなど、それぞれの強みを活かして取り組んでいくという。また大学や異業種、スタートアップ企業等と共創することで「ダイバーシティに富んだ研究体制を構築する」と語った。
(左から)横尾美星氏、江連智暢氏、岡部義昭氏、遠山麻依氏、堀場聡氏
資生堂 みらい開発研究所 研究員 遠山麻依氏
資生堂 エグゼクティブオフィサー 常務 チーフブランドイノベーションオフィサー チーフテクノロジーオフィサー 岡部義昭氏
資生堂 みらい開発研究所 フェロー 江連智暢氏
資生堂 みらい開発研究所 研究員 堀場聡氏
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