何の分野にしても、青天井に売上高が成長し続けるというのは今の世の中では難しいと思っている。
ADVERTISING
特にラグジュアリーではない洋服の分野では、かなり難しく事業規模の設定が必要なのではないかと思っている。圧倒的に成長しやすいのは低価格ゾーンだが、ユニクロ、しまむら、ジーユーという三巨頭がいる上に、ハニーズやその他大勢もいて、今更割り込める隙もない。
その上のゾーンに活路を見出さざるを得ないが、そこは2000年代半ばまでくらいならマス化しやすかったが、今のご時世では無理である。必然的に「当社の売上高はこれくらいまでを想定していて、できるだけ利益体質を追求します」という設計が必要になる。
何の話がしたいのかというとライトオンについてである。
ライトオンの2022年8月期決算が発表された。結果からいうと減収営業増益である。ただし経常利益は減益だし当期損失も計上している。
実際の商売では減収ながら営業増益なので、利益体質は強化されたといえるが、本業以外のことで損失を計上しているという意味になる。このため、今後の展望は決して暗くはないと見ている。
売上高482億2900万円(対前期比2.6%減)
営業利益2億3900万円(同188.4%増)
経常利益700万円(同91.4%減)
当期損失11億6600万円
だった。
利益面につきましては、売上高が減少する中、主に販売促進費や賃借料の販管費を抑制したことにより営業利益は239百万円(前期比188.4%増)となりましたが、新規借入に伴う支払利息及び支払手数料の増加により経常利益は7百万円(前期比91.4%減)となりました。
最終損益につきましては、新型コロナウイルス感染症による時短要請協力金等助成金収入、移転補償金等、特別利益を276百万円計上し、退店店舗及び収益性の厳しい店舗の減損損失、新型コロナウイルス感染症による損失等、特別損失を716百万円計上したことにより、当期純損失は1,166百万円(前期は2,079百万円の当期純損失)となりました。
とのことである。
で、2023年8月期は
売上高520億円
営業利益6億円
経常利益5億円
当期利益1億円
を計画している。
まあ、いわゆる増収増益を目指しているわけだが、果たして可能なのだろうか?というのが当方の率直な感想である。
細かい財務分析などはマサ佐藤氏などのその道のプロに任せるとして、当方は店頭を定点観測した感想で述べさせていだたく。
20年のコロナ禍以降、実店舗の定点観測によると、ライトオンは明らかに売り方を変えた。それまでは在庫過多だったのだろうか、期末には破格値に値引きして商品を販売していた。
2019年頃までは、店頭には990円に値下がりした商品が多数、ワゴンやサークルラックにかけられていた。またたまに「これ何年前の在庫?」というくらい古めかしい商品が破格値に値引かれて並べられていることもあった。
このため、生来の安物好きの当方は、ライトオンで2019年まではこの破格値商品を年に数点くらい買っていた。それはこのブログでもたびたびご紹介してきた。
しかし、20年のコロナ禍を契機に、990円の投げ売り商品が店頭から無くなった。
その頃から店頭の投げ売りサークルラックにかかっている商品は2200円~という具合になった。2200円もファッション業界人からすれば「安い」ということになるかもしれないが、990円に慣れてしまっている当方からするとちょっと買う気にならない。
だから20年からはライトオンで1点も商品を買っていない。
投げ売りの最低価格が2200円ということは、定価はそれ以上だということになり、ライトオンは明らかにユニクロよりも高いゾーンを狙っているということになる。
店頭やネット通販で商品ラインナップを見ると、ユニクロよりも1格上を狙うにしては、これまでの取り扱いブランドとほとんど変わっていないのと自社プライベートブランド比率が増えているため、その価格設定には説得力がないと当方は感じる。
決算報告書でも
お求めやすい価格帯でディテールと品質にこだわった商品開発を積極的に行い、差別化戦略と収益性向上のエンジンとしてPBのシェア拡大を図ってまいりました。
と述べられているので、PBが増えたのは当方の気のせいではないということがわかるだろう。ただ「お求めやすい価格帯」かどうかは大いに疑問が残るところであり、2019年までのPBよりも値上がりしているので、当方にはとても「お求めやすい価格帯」とは感じられなかった。
もちろん、コロナ禍・電力不足・工賃値上がりなどで商品価格が上がることは仕方がないが、従来の客層からするとPBの値段が高いと感じられたのではないかと思う。
それが証拠に、2022年度は多くのブランドで売上高が回復傾向にある中、ライトオンは22年8月期は21年8月期よりも減収に終わっている。
要するに、現在の施策は旧来の客層には支持されていないということがわかる。
もちろん売上高を増やすだけが衣料品ビジネスではないことは重々承知しているが、22年の回復局面において減収に転じているのはどう考えても商品・販売施策が従来客層とマッチしていないと考えられる。
で、冒頭の話に戻ると、ライトオンが得意とするデイリージーンズカジュアルはすでにユニクロが圧倒的なシェアを獲得してしまっている。ライトオンとしては「売上高目標はこの辺りが天で、堅実な利益体質を目指します」という方針を掲げるのであれば、当方は全面的に賛成するが、23年8月期見通しではやはり増収を目指している。22年8月期の売り方というのは、客数や買い上げ点数は減らしたと考えられるが、投げ売りを抑制し利益を確実に確保できたとも言え、この方針を堅持するのであれば納得できる。しかし、増収志向があり、かつての売上高1000億円~800億円規模までの回復をもしも考えているとするなら、今の商品施策・販売施策では不可能だろう。
今のライトオン経営陣にはその辺りを整理してビジネスを組み立ててもらいたいと強く願っている。
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【南 充浩】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
イケアが四国エリアに初出店 香川県にポップアップストアをオープン