伊勢丹新宿本店の外観
Image by: FASHIONSNAP
伊勢丹新宿本店が、投資家や報道関係者に向けて事業説明会をオンラインで開催した。今期(2022年度)は、上期時点(2022年4月〜9月)で、三越と伊勢丹が経営統合した2008年以降、同店の過去最高売上を記録した2018年度の2526億円を上回る水準で推移。“外商顧客候補”となる顧客づくりを強化するなどの施策で売上の最大化を図っていくという。
同店は4月以降、6ヶ月連続で2018年度の実績を上回って推移している。カテゴリーで見ると、今上期はかつてインバウンド消費の追い風を受けていた化粧品が4ポイント減の7%に縮小した一方で、宝飾品や時計のシェアが11ポイント増の18%となった。コロナ禍で国内消費拡大を背景に顧客別のシェア率は、外商顧客で3ポイント増の15%、三越伊勢丹グループのエムアイカード会員で15ポイント増の54%に伸長したという。40代未満の若年顧客層のシェアは2019年度上期差で3ポイント増の35%に伸びた。栗原憲二 伊勢丹新宿本店長は新型コロナウイルス感染再拡大があった8、9月の業績に関して「厳しくなると思っていたが、逆に高い伸び率を示した」と話す。
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今期は、三越伊勢丹ホールディングスが「高感度上質」店舗の構築を掲げる中期経営計画の初年度と位置付ける。伊勢丹新宿本店はこれまで「ビューティーアポセカリー」や「リ・スタイル」といった独自のマーチャンダイジングを展開してきたが、コロナ禍の社会変化もあって「マスマーケティングの限界」「新規顧客の取り込み不足」などの課題に直面しているという。今後は「マスから個へ」をテーマに事業を推進する。
具体的には、「先行」「限定」を打ち出した商品展開、デジタルを活用し特定のコミュニティにフォーカスしたマーチャンダイジングや企画、インセンティブ強化などによる顧客づくり(CRM推進)といった施策を打ち出していく。CRMの取り組みでは、まず、エムアイカード会員やアプリ会員も含んだ顧客識別化率70%達成を目指し、“非外商顧客”にあたる購入金額年間100万円以上の「ゴールド」以上の顧客のランクアップに注力。年間300万円以上のプラチナ顧客を外商顧客化につなげ、関係性構築に努める。
「先行」「限定」を打ち出した商品展開では、これまでに「プラダ(PRADA)」や「グッチ(GUCCI)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ミュウミュウ(MIU MIU)」などで若年層顧客の来店が増えるなどの成果が見られ、上期の集客実績にも貢献した。栗原店長は顧客・店舗・ブランドの信頼関係を強固できる施策と総括し、「ブランド側からお客様を紹介していただいたり、関係性が新たに生まれている事例もある。戦うのではなくパートナーシップを強固にしていきたい」と話した。
なお、10月11日から国内旅行を対象とした政府の観光促進策「全国旅行支援(全国旅行割)」が始まったが、中国人観光客を中心に支えていたインバウンドの回復に関しては見通しが立っていない。ピーク時に1割を超えていた免税売上シェアは今期は、5%にとどまる見込みだが、同店はまず国内顧客を優先しつつ、海外店舗などのネットワークを活用しながら発信力を強化していく考えを示した。
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