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三陽商会が2023年2月期上期(2022年3月〜8月)の連結決算を発表し、売上高で前年同期比22%増の254億6400万円を計上した。営業損失3億1700万円(前年同期は営業損失22億3300万円)と赤字が続くが、プロパー販売の強化や値引率抑制による粗利率改善のほか、販管費をほぼ計画通りにコントロールできたことで赤字幅が縮小し、当初計画から7億5000万円の上振れとなった。
今上期は全チャネルで前年超えを達成。百貨店、直営店、アウトレットを合計したリアル店舗の売上高は前年比29%増と好調に推移したほか、粗利率は計画比で1ポイント、前年実績比で3.1ポイント上昇し61.4%となった。大江伸治社長は「新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し市況が回復したほか、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限につながる規制が実施されなかったことが好調の要因となった」と分析した。
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ブランド別でも、不採算事業「ラブレス(LOVELESS)」を除く全てのブランドで前年の数字を上回った。「ポール・スチュアート(Paul Stuart)」「マッキントッシュ ロンドン(MACKINTOSH LONDON)」「エポカ(EPOCA)」「マッキントッシュ フィロソフィー(MACKINTOSH PHILOSOPHY)」「クレストブリッジ(CRESTBRIDGE)」といった基幹ブランドがそれぞれ好調で、中でもポール・スチュアートは前年比49%増、マッキントッシュ フィロソフィーが同31%増と売上を牽引した。
ラブレスについては今年5月から単月ベースで前年割れが続いているが、店舗数を15店舗から5店舗に減らしたほか、品番数の絞り込みや仕入れ抑制などの行動改革を推進したことよってようやく均衡点が見えてきたという。大江社長は「今秋冬シーズンからは粗利率も改善しており、ヒット商品も出てきた。収益化への道筋が僅かに見えてきている」と現状を説明した。現状、店舗数を5店舗から削減する予定はないとしている。
決算会見を開いた三陽商会 大江伸治社長
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同社は上期の実績を踏まえ、通期の業績予想で売上高を566億円(期初予想から6億円増)、売上総利益を351億2000万円(同4億円増)に上方修正し、営業損益は16億円の黒字(同4億円増)を見込む。達成できた場合、7期ぶりの営業黒字化となる。販管費は前年から27億2000万円増となる335億2000万円の着地予想だが、増加分のうち22億円程度は売上増に伴う販売手数料で、その他の変動費および一過性費用を除けば前年比ほぼ横ばいで推移しているという。
また、通期計画の上方修正に伴い、株主還元を強化することを発表。2024年2月期からDOE(株主資本配当率)2%の配当実施を目指していたが今期に前倒しし、年間配当は従来予想から10円引き上げ50円を見込む。今後はDOE2%の配当を基本方針としながら、自社株買い実施も含めた株主還元の更なる強化を検討し、1株あたりの利益の向上を図る。
10月11日からは全国旅行支援が始まるなど経済活動の回復が期待される一方で、原材料の高騰や円安による下期への影響も懸念される。大江社長は下期について「円安の状況下におけるコストマネジメントの難易度は格段に上がっている」とした上で「商品コストの50〜60%は素材によるもので、当社は基本的に日本の素材を使用しているため円安の影響を受ける割合は相対的に低い。コストマネジメントについて工夫の余地はある」とコメント。その上で「価格と価値が見合わない商品は受け入れてもらえない。我々の本質的なタスクは商品価値に見合った価格設定だと考えているので、そのために最大限の努力をする」と話した。
■三陽商会 2023年2月期通期予想(修正後)
売上高:566億円(前年比14%増)
営業利益:16億円(前年は10億5000万円の赤字)
経常利益:17億5000万円(前年は7億3000万円の赤字)
当期純利益:14億4000万円(前年比118%増)
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決算会見を開いた三陽商会 大江伸治社長
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