常に画期的なアイデアを形にしてきたことで、ランニング業界ならずとも注目を集めてきたOn(オン)。そんな話題の同ブランドが、今度はランニングシューズのサブスクリプションサービス「Cyclon(サイクロン)」を開始した。ランナーがシューズを所有しないことで生まれるリサイクルの仕組みを生み出したOnが目指すランニング業界の未来とは。
ADVERTISING
ユーザーがシューズを所有しないことで循環させる
昨今、スニーカー業界でも環境に負荷をかけない素材でシューズを作るなど、サステナブルな取り組みが盛んに行われている。今回、紹介するOnのシューズサブスクリプションサービスは、シューズを100%リサイクルするための仕組みだという。サブスク=使い放題というと、どうしてもリサイクルという部分と結びつかないイメージもあるが、その真意のほどをPRを務める前原さんに聞いてみた。
「このサービスは、ランナーがシューズを所有しないことで廃棄させないというサイクルを生み出しています。このサービスで用意したシューズは『Cloudneo(クラウドネオ)』というシューズで、サブスクを通じてのみ使えるモデルとなっています。ランナーたちはこのCloudneoを履いて走り、ある程度履きつぶしたらそれを返却して新しいシューズを入手します。Onでは返却された古いシューズをリサイクルして再び、Cloudneoを製造してCyclon(サイクロン)のシステムの中に戻します。これを繰り返すことで、バージン素材の仕様と大量の廃棄物を減らすことができるのです」
シューズは自身が所有するものという既成概念を覆す、この試みにハッとさせられた。ユーザー自身がシューズを所有し自ら廃棄すると、リサイクルされるシステムのなかには入らない。だが、On側がそれを管理することで、リサイクルのシステム上に組み込まれる。これぞ、Onが目指す循環型サブスクリプションというわけだ。
機能面でも妥協なし!サブスクでしか履くことができないCloudneo
OnのサブスクリプションサービスCyclon(サイクロン)でしか使えない「Cloudneo(クラウドネオ)」についても言及しておきたい。
Cloudneoは性能を犠牲にした単なるリサイクル可能なランニングシューズではない。もちろん機能面やスペックにも確かなこだわりを持つ。重さは片足約255gと軽量で動きやすく、また驚くほど高い反発性を備えた2層のCloudTec®(クラウドテック)を備えている。だからこそ、通常のファンランだけでなく、自己記録を狙うようなレースや長距離ランでも高いパフォーマンスを発揮してくれるのだ。前原さんは採用した素材についてもこう語る。
「ほとんどのランニングシューズには複数の素材群からなる60個以上のパーツが使われています。ただCloudneoでは1つの素材群しか使われておらず、パーツの数も10個以下に抑えています。こうすることで、新しいCloudneoに作り替えるというリサイクルが可能になっているのです。またCloudneoはトウゴマの種子から抽出した100%バイオベースの糸からなるシングルユニットアッパーを採用しています。
このトウゴマは食物連鎖と競合しないため、他のバイオベースの素材よりもサステナブルなんですよ。ランナーのパフォーマンスを引き出すことを念頭にデザインされた複雑な幾何学的ニットパターンを採用してるので、必要な箇所に通気性をもたらし、快適さが持続します。サブスクリプションでしか使えないのが惜しいぐらいです(笑)」
販売したら終わりではなく、その先へ
サブスクリプションサービスCyclonのシステムはこうだ。
まずは、Cyclonのサブスクリプションに登録する。そして再生可能なCloudneoを受け取ったら、そのシューズを履いてランニングをする。通常1足のCloudneoは600kmまで走ることができるので、1か月で100km走ると計算すると約半年(6か月)履くことができる。このサービスでは6か月ごとに新しいシューズを申し込むことが可能なので、約600km走り、新たなCloudneoが届いたら、履き古したシューズを梱包してOnに送り返すだけ(もちろん返送料は無料)。
Onはその履き古されたシューズをまた原材料にして、新たなシューズを作るのだ。ランナーたちは次のCloudneoが必要になるまでまた走り続ける……。これをずっと繰り返すのがCyclonというサブスクリプションのモデルとなっている。
「今の社会は完璧な設計の元に成り立っているわけではありません。これから循環型社会を目指すことで、私たちが地球から奪ったものを、また地球に返していかなければなりません。もちろん、私たちはOnの製品への責任も考えていて“販売したら終わり”ではありません。少しでもこのサブスクリプションサービスCyclon(サイクロン)が普及して、循環型のライフスタイルを目指していきたいですね。ついに10月からシューズの出荷が開始されることになり、より多くの方にこの『Cyclon』を広く知ってもらいたいと思います」
ひと口にサステナブルといっても、その方法はさまざま。ただ、ユーザーがシューズを所有しないという逆転の発想をカタチにして循環型社会を展開するOnは、これからもあっと驚く画期的なアイデアで、サステナブルな試みを提案してくれそうだ。
PROFILE|プロフィール
前原 靖子(まえはら やすこ)
神奈川県横浜市生まれ。On Japan立ち上げメンバーのひとりで、PRやイベントリーダーを担当。ロードランニングが中心だが、現在はウルトラマラソンやトレイルランなどを中心に参戦。
Text by Yasuyuki Ushijima
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【Fashion Tech News】の過去記事
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境