kudos/soduk 2023SS 東京コレクション
Image by: 西谷真理子
今回のファッションウィークで私が見た最後のフィジカルなショーとなった、工藤司の「クードス(kudos)」と「スドーク(soduk)」は、観客の多くが静かな感動を携えて帰ったと思う。もちろん私もそうだった。
なにしろ最初の館内アナウンスが、まるで演劇の舞台のように、パフォーマンス中のスマホ撮影も録画も固く禁止したのだ。丁寧な口調で日本語と英語で2回。これには驚いた。というのも、最近は、ファッションウィークのほぼすべてのショーが始まるや、観客は当然のように、スマホで撮影を始める。このショー取材の風景をリセットすることからクードス/スドークは始まった。便利な機器を取り上げられた観客は、ショーを「自分の目」で見ることを強いられた。
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kudos/soduk 2023SS 東京コレクション
Image by: FASHIONSNAP
ランウェイショーは、男性2組の結婚式とそこに参列する数多くの友人たちの列を思わせた。最初は整然と、それが少しずつばらけて、中央に設置された招待席=観客席に入り込み、ジグザグと動き出し、最後は思い思いに解散する。
kudos/soduk 2023SS 東京コレクション
Image by: FASHIONSNAP
その後、一旦ショーが終わって暗くなったところで、マスク姿のデザイナーの工藤が登場し、スマホを禁止したことを詫び、なんと、今度は自由にスマホで撮れるように、もう一度ショーを見せるというのだ。そしてその通り、観客は撮影のためのショーをゆっくりスマホに収めることができたというわけだ。なんという凝りようだろう。
スマホを禁止さえたおかげで、多分観客は、ジャーナリストさえ、自分の目でしっかり見て、記憶に刻むという、忘れていた行為を思い出したはずだ。一見普通の服のあちこちにデザインの遊びや仕掛けを作っているクードス/スドークは、しっかり目で見て欲しかったのかもしれない。
椅子に乗っていた資料は、工藤司の創作ノートと呼びたい冊子だった。工藤自身が撮った写真とイラストと言葉が、様々な土地の風を届けてくれる。まるで、結婚式のおみやげのようだった。
Image by: 西谷真理子
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