WATARU TOMINAGA 2023SS 東京コレクション
Image by: FASHIONSNAP
これまで3回にわたって女性デザイナーによる、新しい女性像を感じさせるコレクションを紹介してきたが、今シーズンに限らず、参加デザイナーの多くは、男性デザイナーであり、当たり前のように、男性デザイナーだからこだわるもの、というものはほとんどない。男子一生の仕事、なんていう言い方もあるが、先日96歳で亡くなった森英恵さんが70年以上にわたってデザイナーという仕事を続けたことを思えば、吹いて飛んでしまうだろう。
とはいえ、人並外れたファッション愛をデザイナーという仕事に結実させたり、いろいろな形で海外を経験し、そこで得たもので肉付けした独自でダイナミックなクリエイションを発表する「男性」デザイナーを紹介しない手はない。
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昨日のサポートサーフェスも、アンリアレイジも、継続してきた結果を鮮やかに見せてくれる素晴らしいショーだった。サポートサーフェスは、デザイナーの研壁宣男が一貫して持ち続けてきた美意識が、削ぎ落とすという形で立ち現れたものだったし、アンリアレイジは、パリコレクションに参加して以来、森永邦彦が築き上げてきた様々なジャンルの才能とのコラボレーションによって、ファッションをドレスメーキングに留まらない、別次元のカルチャーに仕立て上げたことは、周知の通りだ。昨日のショーのフィナーレに、ブランドの最初から継続している細かいパッチワーク(の進化形)とともに、杉原一平のピアノ曲「遥か晴る」が流れたことには感激してしまった。進化がこのように螺旋形に進むのは素晴らしい。
WATARU TOMINAGA 2023SS 東京コレクション
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WATARU TOMINAGA 2023SS 東京コレクション
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WATARU TOMINAGA 2023SS 東京コレクション
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と書きながら、今回のタイトル「新しさを探りあてる」に立ち戻ってクローズアップしたいのは、富永航のブランドWATARU TOMINAGAである。2019年にブランドを設立し、JFWのファッションウィークに参加するのは、今回が初めて。私が実物を見るのも初めてだ。会場には、天井からレースのカーテンが吊り下げられ、高さの違う白い布を張った台があちこちに配置されている。思わず、病室を連想してしまった。デザイナーの釈明は聞けなかったので、これがどういうイメージなのかは不明だが、ここが、病院で、新しい種族がどんどん生まれている、という妄想はどうだろう。ポップで、エスニックで、常識に囚われない楽しい種族は、レッテルを貼られることを嫌って、新しい振る舞いをする。服は、魅力的なテキスタイルで構成されているが、古着をリメークしたようにも見えれば、古着に限らず、不用品をあちこちからかき集めてきてファッションにしてしまったようにも見える。雑然としていながら、カオスではない美を感じさせるのは、テキスタイルに止まらない富永航のもつアート感覚だと思う。この新しい種族が、この特別の空間を出た時に、街にどんな風に混じるのか、あるいは、違和感をもたらすのか、見てみたいのである。
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