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「売らない店」のビジネスモデルを展開する「ベータ(b8ta)」が事業拡大に攻勢をかける。2025年までに最大10店舗体制を目指すほか、新たな取り組みとして、ベータのビジネスモデルを外販する新サービス「バイベータ(by b8ta)」を開始し、“売らない店”の拡大を仕掛ける。「日本と“売らない店”は相性が良い」と語るベータ・ジャパンの北川卓司社長に、今後の展望を聞いた。
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「買わなくてもいい」 ピュアな来店客の行動分析データが強み
ベータは商品をその場で売ることを主目的にせず、展示品を体験する場を設け、店内に設置したAIカメラから来店者の行動分析データを取得しマーケティングデータなどを提供する「RaaS(Retail as a Service、小売のサービス化)」のパイオニアとして2015年に米サンフランシスコで誕生した。ブース出品からスタートでき、店頭に立つスタッフもベータ側が用意するため、小規模のブランドにとって手軽にオフラインに挑戦できる点が特長の一つ。「商品を買わなくてもいい」という環境から得られる純粋な来店客の行動分析に強みを持ち、データ提供にとどまらず、データを元にカスタマーサクセスチームによるコンサルティングも行っている。
日本へは2020年8月に上陸し、有楽町と新宿に2店舗を同時オープン。その後は渋谷、越谷レイクタウンに続けて出店し、常設では4店舗体制で運営している。出店企業のカテゴリーはガジェットから家電、ビューティ、アパレル、雑貨、食品まで幅広い。突出するカテゴリーは存在しないが、「接客で説明を受けることでより良さがわかる商品」が“売れる”商品の共通項だという。
出品企業はひと月30万円、最低半年の契約が要件だ。ベータの店舗に出品するスマートリング「エブリング(EVERING)」のマーケティング責任者 富重豪氏は、ベータからの集客でコンスタントにオンラインへの集客が得られることに加えて、定量・定性データの提供に利点を感じているという。「その場で購入しなくてもいいという環境の中で、何パーセントのお客様が商品を手に取ったのか、素通りしたのかといったデータの内容も豊富で、コストパフォーマンス的にもベータは魅力的だ」。
2025年までに最大10店舗体制へ
ベータの2022年度上半期(1月〜6月)の売上は、前年同期比で約63%成長。事業は軌道に乗り始めているが、北川社長は「認知向上」を大きな課題の一つに挙げる。その施策として、今後は出店を加速させていく。
今月24日からは、関西初出店となるポップアップストアを阪急うめだ本店9階の祝祭広場にオープン。大阪への出店を要望する声は以前から多く届いていたといい、阪急阪神百貨店としてもベータのビジネスモデルに関心があったことから実現した。会場ではエブリングのほか、G.Mコーポレーションの「デンキバリブラシ 2.0 +ボディ」や「エネボール(ENE BALL)」、デイリーバックパック「エイブルキャリー(ABLE CARRY)」など19商品をラインナップしている。
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ポップアップストアは9月に福岡のソラリアプラザ(SOLARIA PLAZA)、10月には名古屋のJRゲートタワーにも続けて出店する予定。常設店舗は2025年までに最大10店舗体制を目指す。タイや韓国、台湾などの海外出店にも前向きの姿勢で、1〜2年以内のポップアップ実現に向けて準備を進めていくという。
売っても売らなくても大事なのは「人」
阪急うめだ本店だけではなく百貨店業界は今、新たな収益モデルを模索し、ショールーミングストアの導入が相次いでいる。常設では、西武渋谷店の「チューズベース シブヤ(CHOOSEBASE SHIBUYA)」や大丸東京店の「明日見世(asumise)」、高島屋新宿店の「ミーツストア(Meetz STORE)」があり、いずれも各百貨店独自のビジネスモデルを打ち出している。
一方で、集客や売り上げなどの面で課題も聞こえてくる。北川社長は「テクノロジーを使って店頭スタッフが接客しないスタイルに振り切るなどの新しいチャレンジが見られるが、リアルの良さは販売員との会話から得られる体験」とし、人を介した接客が最も大事だと強調する。
日本のアパレル消費は縮小傾向にあるが、北川社長はファッションに関する取り組みについて検討の余地があるとする。まだ模索段階だと前置きしながら「商品の良さを理解してもらうためには着ていただくことが大事。試着室に特別な機能を持たせたりなど、できることはある」と前向きな姿勢を示した。
次に仕掛けるのは「“売らない店”の販売」
日本での展開開始前から“売らない店”のビジネスモデルに「勝ち筋がある」と見込んでいたという北川社長。コロナ禍の事業スタートはまさに苦境だったが、オフラインでの可能性を求めて出品企業が集まったことで確信に変わったという。「購入しなくてもいい」という環境も来店客に好意的に受け止められていることから、ベータのビジネスモデルは「日本と相性が良い」と分析している。一方で、米国では新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受け、20店舗以上あった直営全店舗を閉店。昨年末には日本国内向け事業における商標権およびソフトウェアのライセンスをベータ・ジャパンに売却し、ベータ・ジャパンは独立した。
米国事業の影響に左右されることがなくなった今、北川社長は「売らない店」の拡大に向けて、直営店の出店以外の新施策に着手する。それがベータのビジネスモデルの外販だ。
ソフトウェアからハードウェア、店舗デザイン・施工、レイアウト・什器制作、接客トレーニング、「テスター」と呼ばれる店舗スタッフの派遣、PR・ブランディング、店内イベントをはじめとする集客案までの8つの側面から「売らない店」の展開をサポートするというもので、今年末に正式ローンチを予定する。
EC市場の活性化に伴いオンラインでの差別化が難しくなり、「オンラインとオフラインの両方を上手く活用していくことが常識になってくる」と北川社長。「日本には店舗がたくさんある。その1区画を体験型コーナーにすることは増えていくと思う」と外販事業の可能性に期待を寄せる。
■b8ta Pop-up Osaka - Hankyu Umeda
開催期間:2022年8月24日(水)〜8月28日(日)
場所:阪急うめだ本店9階 祝祭広場
住所:大阪府大阪市北区角田町8-7
※最終日は18時に終了
■b8ta Pop-up Fukuoka - SOLARIA PLAZA
開催期間:2022年9月16日(金)〜9月25日(日)
場所:ソラリアプラザ1階イベントスペース ゼファ
住所:福岡県福岡市中央区天神2-2-43
■b8ta Pop-up Nagoya
開催期間:2022年10月12日(水)〜10月16日(日)
場所:JRゲートタワー1階イベントスペース
住所:愛知県名古屋市中村区名駅1-1-3
■ベータ・ジャパン:公式サイト
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