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デザイナーが陥りがちな5つの認知バイアスとよくある失敗例

デザイナーが陥りがちな5つの認知バイアスとよくある失敗例

サンフランシスコ発デザイン会社の公式ブログ
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大学院に進学してイノベーションの研究をしたおかげで、気づけたことがある。

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その一つが、バイアスを理解することの重要性だ。

私はUI/UXデザインの仕事を一度離れてイノベーションの研究をするまで、自分が効率化を求めて無駄を排除するような、「柔軟性に欠けた人物」であることに気がつかなかった。

というのも、仕事をしている間に無意識に周りに影響され、先入観(バイアス)を持ってしまっていたからだ。

もちろん、仕事の効率化を求めることは大切だが、創造力が求められる現場だと、このバイアスが邪魔になることも多い。

例えば、新しいコンセプト提案を依頼されたときに、その仕事に慣れている人が効率を重視した方法で行うと、斬新なアイディアが出にくくなる傾向がある。

実際にKim & Ryuの研究によると、経験を積んだデザイナーは、そうでない人と比較して問題のカテゴライズに慣れているため、最初に定義した問題に執着する傾向があることが示唆されている。

このように、仕事への慣れにより、無意識に創造力を下げるバイアスに陥ることがある。

そのため、この記事では創造力を高めたいデザイナー向けに、デザイナーの仕事に慣れることにより無意識にかかりうる5つの認知バイアスと、それらの認知バイアスにかかってしまった際に起こりうる失敗例をピックアップしてご紹介する。

1. ダニング・クルーガー効果 (dunning kruger effect)

ダニング・クルーガー効果とは、初心者が少し仕事に慣れて自信がつき、「優越の錯覚」をした時に起こりやすいもので、正しく自己評価できずに、自身を過大評価してしまうことである。

逆に専門家は同じくらいの自信を持っていても、適切な判断ができるのでダニング・クルーガー効果は起こりづらい。

ダニング・クルーガー効果では下記のような曲線図が広く取り上げられている。縦軸が自信の度合い、横軸が知識や経験を表している。

初心者の段階では、知識や経験が増加するにつれて大きく自信が付き始め、「優越の錯覚」にたどり着く。「優越の錯覚」では完全に物事を理解したつもりになり、自分の行動に対して肯定的になる。

しかし、その山を越えてより知識をつけていく過程で、自分の知識と経験はまだまだ不足していることに気づき、自信を失って、「絶望の谷」に陥る。

そしてそれらをさらに乗り越えることで「継続の台地」に至る。この段階は、更なる学びと経験を繰り返しながら、謙虚さと自信の両方を合わせ持っている状態だ。

自分の苦手なこと、得意なこと、知らないこと、知っていることをそれぞれ理解しており、適切な自己評価ができる状態とも言える。錯覚ではない本当の自信がついてくる時と言われている。

ここで重要な点は何に対して初心者であるかだ。

例えば、クライアントワークで今まで経験しなかった領域のプロダクトに携わるとき、クライアントワークという点では専門家であるが、その領域に関しては初心者の状態になる。

そのため、このバイアスは経験豊かな人でもかかり得る可能性が大いにある。

よくある失敗例:

  • コンセプト立案の際に、既存のやり方に固執したことが原因で、新しい視点を持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。
  • UIデザインの際に他領域の方の声を聞かずに自分の正しいと思った方向に一直線で進んでしまい、偏った考えでデザインの制作をしてしまう。

ダニング・クルーガー曲線の図解。

2. デザイン固着 (design fixation)

デザイン固着とは、既存のデザインの特徴に過度に依存してしまい、デザイナーの創造的なアウトプットが制限される状況である。

例えば、仕事に慣れたデザイナーは短時間で高いアウトプットを出すために、一つの要素にこだわる傾向がある。

そして結果的に、幅広いデザインスタイルの検討ができなくなり同じようなビジュアルが生まれてしまう可能性がある。

よくある失敗例:

  • デザイン制作の際に最初のデザインにこだわって幅広い案を検討することができなくなってしまう。
  • デザインプロセスを進める際に最初に出たアイディアに固執して、方向性を大幅に修正することができなくなる。

デザイン固着の図解。一つの要素にこだわると、全く新しいアイディアは生まれにくく、アイディアの幅が狭くなる傾向にある。

3. サンクコストバイアス (sunk cost effect)

サンクコストバイアスとは「もったいない」という感情に縛られて、合理的な判断ができなくなることである。

例えば、仕事に慣れたデザイナーがデザインスプリントを行う際に、時間対効果的に「もったいない」無駄なことを避けて、いつも通りのやり方を選ぶ傾向がある。

これにより、失敗はしないが、革新性のあるアイディアもまた生まれにくい。

よくある失敗例:

  • 新しいコンセプト提案をする際に、自身の専門知識を元にした方法に固執し、新しい視点が持てなくなり、結果的に斬新な提案ができなくなってしまう。
  • 新しい機能についてアイディアを発散する際に、時間対効果を高くするために既存のアイディアの発散のやり方で進めてしまった結果、斬新性の低いアイディアになる。
  • UIデザインを制作してフィードバックをもらった際に、既存の素材を捨てるのがもったいないと思い、大幅にデザインを変更することが難しくなる。

サンクコストバイアスの図解。時間対効果を高めることを重要視しすぎて、アイディアの斬新性が失われてしまう可能性がある。

4. 認知的定着 (cognitive entrenchment)

認知的定着とは、ある分野の知識が豊富なために、その知見に固執してしまい、新鮮な視点で物事を見ることがしにくくなってしまうことだ。

例えば、医療分野の経験が豊富なデザイナーが医療に関する新しいサービス案を考えるように指示された時、彼らは経験の浅いデザイナーよりも創造性が低い提案が多い傾向がある。

というのも、疑うべき前提を当然のことのように考えてしまい、革新的なものが生まれにくいからだ。

よくある失敗例:

  • 新しいコンセプト提案をする際に、自分が専門にしていた知識からの引用のようなアイディアが多くなってしまう。
  • ランディングページを制作する際に、専門用語を無意識のうちに多用してしまう。

認知的定着の図解。自らの知見に固執してしまうことで視野の狭いアウトプットになってしまう。

5. 同調バイアス (conformity bias)

同調バイアスとは、他者がどう行動するかを参考にして同じ行動をとることだ。

例えば、企業で働くデザイナーはその企業のカルチャーやデザインプロセスに染まり、新しい考え方を持つのが難しくなる傾向がある。結果的に、既存概念を破壊するアイディアを創出しにくくなる。

よくある失敗例:

  • 知らず知らずのうちに所属組織のカルチャーやアウトプットの方法が染み付き、行うべき議論を疎かにしてしまう。
  • 上司のやり方を真似するうちにそのやり方が染みつき、自分のオリジナリティのある考えが減ってしまう。

同調バイアスの図解。企業に属することで、所属組織の方法が染み付き、新たな視点で物事を見たり考えたりすることが難しくなってしまう。

まとめ

チェスの研究では、「プロプレイヤーは既に知っている情報への認知バイアスを防ぐことができないが、一流プレイヤーはできる」と述べられている。

デザイナーの場合もスペシャリストを目指すには、認知バイアスを理解して自分のフレームを知ることが重要になってくると思われる。

そのため自分も、引き続き認知バイアスを学び続けて、デザイナーとしてスペシャリストになれるよう努力したい。

もっと認知バイアスについて学びたくなったら:

参考:

Kim & Ryu​​A design thinking rationality framework: framing and solving design problems in early concept generation(https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/07370024.2014.896706)

Chess Players

Inflexibility of experts—Reality or myth? Quantifying the Einstellung effect in chess masters(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0010028507000102)

Written by: Ryusei Anzai

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