ライフカルチャープラットフォーム「北欧、 暮らしの道具店」を展開するクラシコムが、東京証券取引所に承認され、8月5日にグロース市場に新規上場した。公開価格の1420円に対し、初値は1520円。午後には一時1910円の高値を付け、終値は初値を上回る1760円だった。取引終了後に東京証券取引所で開かれた記者会見には青木耕平代表取締役と、同氏の妹で共同創業者の佐藤友子取締役が登壇し、現在の業績動向や今度の見通しなどを語った。
クラシコムは2006年9月に設立。2007年にヴィンテージの北欧食器などを取り扱うオンラインストア「北欧、暮らしの道具店」を立ち上げ、商品を直接消費者に届けるD2Cのビジネスモデルを展開している。現在は、アパレルやキッチン、インテリア雑貨を主力商材とするD2Cのほか、日々の暮らしに関するコラムや映像の制作・配信も手掛けるなどコンテンツ制作に関する事業にも注力。「北欧、暮らしの道具店」という強固なプラットフォームを軸に幅広いサービスを提供し、広告・販促費を抑えて集客につなげるビジネスモデルを確立している。
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創業以来、業績は右肩上がりで推移しており、2022年7月期(2021年8月1日〜2022年7月31日)は、売上高が51億4900万円(前期比13.6%増)、営業利益が8億2900万円(同6.4%増)、経常利益が8億3400万円(同4.7%増)、当期純利益が5億5000万円(同3.6%減)を見込む。
同社のビジネスの特長は、EC事業者としてだけではなく、スマートフォンアプリやYouTube、各種SNSなどの自社チャネルを通じてコンテンツを配信しファンづくりにつなげるコンテンツパブリッシャーとしての側面を持つ点にある。独自の世界観を構築してきた土台があるからこそビジネスを多角展開できるのが強みだとし、実際にこれまでにドラマや映画制作にもチャレンジしリーチを広げてきた。「クラシコムのビジネススタイルは、『北欧、 暮らしの道具店』という温泉を中心としたリゾート地のようなもの。コンテンツを充実させ『温泉』の価値を高めることが売上増につながる」と青木氏は語る。
同社は、創業時から増資をすることなく自社の利益のみで成長を続けてきた。創業17年目となるこのタイミングで上場に踏み切ったのは、今後も長く会社を存続させていくためだという。「上場は目的ではなく手段。これまで成長させてきた『北欧、 暮らしの道具店』の事業やコミュニティが10年、20年ではなく、もっと長く続いていくものにするために、株主を迎えて客観的意見をもらいながら経営をすることがより良い選択だと思った。いずれ会社の経営が私たちの代ではなくなり、適任者に事業を引き継いでもらった時のことを考えた時に、上場という選択が良いとの結論に至った」と佐藤氏。「創業当初はニッチなビジネスだという認識で、ここまで多くの人に愛されるようになるとは思っていなかったので、上場も考えていなかった。事業規模が大きくなるにつれ、2017年頃から創業者の2人(青木氏と佐藤氏)で上場について話し合いを重ね、ここ2年ほどで本格的に準備を進めてきた。今日から『クラシコム』の第2章が始まるが、15年後に振り返って自分がどのように感じるのか、今から楽しみ」と胸を膨らませた。
上場により調達した資金は、人材の登用・育成に充てる。「会社を盤石なものにしていくために、エンジニアやIR(企業が投資の判断に必要な投資指標を株主や投資家に対して提供する活動)など、現在社内にない能力やキャリアを持つ人材を迎え入れる必要性はますます高まると感じている」と佐藤氏は語る。また、軸となる「北欧、暮らしの道具店」の基盤を固めるため、エンゲージメントチャネル(自社コンテンツの受け手)の拡大にも積極的に投資するとしている。
今後の成長戦略としては、顧客に直接商品を届ける「D2C」、クライアントのブランドや商品を「北欧、暮らしの道具店」上で紹介する「ブランドソリューション」に続く第3、第4のビジネスラインを模索する。佐藤氏は、現時点で具体的に決まっていることはないとしながらも「顧客がどういうものを求めているのか、どういったことが生活を豊かにすると考えているのかを捉え続けることが新しいビジネスのヒントになる。顧客を楽しませるためのアイデアはたくさんあるので、一つずつ挑戦していきたい」と語った。
国内でD2C企業の上場例は極めて少ないが、佐藤氏は「ビジネスの1つの選択肢として、未上場の会社の参考例になれたら」と話す。上場を果たし、企業としての第2章が始まったクラシコムの今後の動向に、注目が集まる。
■クラシコム:企業サイト
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