企業の成長のためには欠かせないマーケティング活動。近年はデジタルマーケティングが主流となり、企業ごとにさまざまなツールを使ってマーケティング活動を行なっていることだろう。
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そんな現代のマーケティング活動において必要不可欠となるのが、Martechサービス。
Martechとは、文字通り、MarketingとTechnologyを合わせた言葉だ。営業やマーケティングに関わるテクノロジー全般を指す言葉である。狭義のAdtech(広告×テクノロジー)、Salestech(営業×テクノロジー)などもすべて包括してMartechに含まれる。
あらゆる顧客接点でコンテンツや機能を顧客に伝え、顧客データに変換する役割を担うサービス全般を指す言葉だ。
Martechの興隆
Martech市場は世界規模でここ10年で急拡大している市場である。
2011年には世界で150のサービスしか乗っていなかったカオスマップにも、2020年には8000ものサービスが載るようになった。2022年現在では10000以上のサービスがあると言われている。
上の図に分類されているように、Martechは以下の6つの領域に分けられる。
- Advertising & Promotion
- Content & Experience
- Social & Relationships
- Commerce & Sales
- Data
- Management
現代では、もはやマーケティングがテクノロジーを用いていることは当たり前となってきており、サービスが右肩上がりに増えているのも納得だ。
そんな中でも、近年注目を集めているのがコンテンツマーケティング。上記の6つの分類では「Content & Experience」に該当する。
コンテンツマーケティングとは、ターゲットとなるユーザーに「適切で価値あるコンテンツを作り、それを伝達すること」にフォーカスした戦略的なマーケティングの取り組みだ。
見込客として明確に定義された読者を引き寄せ、関係性を維持しながら最終的に利益に結びつく行動を促すことを目的としている。
すなわち、人が魅了されて物を買う、サービスを利用する決断に欠かせないのがコンテンツマーケティングと言える。
コンテンツマーケティングが重要視される背景には、常に何らかのデバイスに触れ続けているようになり、消費者の「企業広告疲れ」が顕著となっていることが挙げられる。
閲覧ページでの広告の表示を防止するアドブロックツールを入れている人の割合も近年増え続けているというデータもある。
ユーザーの広告疲れが進んでおり、かつインターネットでの検索が日常的に行われる現代、コンテンツマーケティングによってターゲットに対して有益と思われる情報を積極的に発信してユーザーを魅了し、いかに企業やサービスのファンにできるかが、今後の売上にもより密接に関わってくる。
ターゲットが自社のサービスの情報を自ら進んで情報を取りにくるくらいにモチベートできる可能性を秘めたコンテンツマーケティングは、どの企業にとっても大命題になりつつあると言えるだろう。
今回はそんなコンテンツマーケティングをサポートする、アメリカ発のMartechスタートアップをご紹介する。著者自身もマーケターとして、こんな機能は新しい、あったら嬉しいと思ったポイントを重点的に取り上げてお伝えする。
アメリカ発Martech startup5選
- 音声コンテンツを動画に:Wavve
- ビジュアルコンテンツを魅力的に:Visme
- SNS上のコミュニケーションを最適化:Manychat
- メールマーケティングのデザインならおまかせ:Flodesk
- コンテンツを入れるだけでお望みの形に変換:Designrr
1. 音声コンテンツを動画に:Wavve
サウスカロライナ発のスタートアップWavveは、Podcastなどの音声コンテンツを動画に変えられるサービス。
実際にWavveを使って作られた動画を見てみると、音声に関連した映像と、音声によって波打つように動く線が印象的だ。
そして、音声に合わせてキャプションをつけることも可能。音声が流せない時でもSNS上でコンテンツを楽しめるようになっている。
53%の消費者が、企業のSNS上で動画コンテンツを見た場合、そのブランドに対してのエンゲージメントが高まるというデータもある。
通常のPodcastのみよりも、映像がつくことで印象に残りやすくでき、さらに動画とは違ってあくまでも音声を主役とした映像が流れるところが特徴的なサービスだ。
筆者としては、動画ではなく音声を主役にすることで、Podcastの「距離の近さ」や「親近感」があり、ファンを増やしやすいというメリットを保ちながら、映像でより印象深くできるというメリットがあるのではないかと考えている。
2. ビジュアルコンテンツを魅力的に:Visme
メリーランド発のスタートアップVismeは、インフォグラフィック、Facebook広告クリエイティブ、ビデオ、プレゼンテーションスライド、ドキュメント、SNSの投稿素材などのビジュアルコンテンツを作成できるサービス。
このサービスの特徴は、大きく2つある。
1つ目は、このサービス一つでプレゼンテーションスライド、E-book、SNSコンテンツなどのあらゆるビジュアルコンテンツの作成が可能であること。
プレゼンテーションスライドにはPowerpoint, E-bookにはFigma…というように、ツールを使い分ける必要がない。もちろん、複数人で1つのコンテンツを同時編集することも可能だ。
たくさんのデザインテンプレートが用意されており、テンプレートに文章を入れてブランドカラーやテーマカラーに揃えるだけで、デザイン的にもハイレベルなスライドができる。かなりの時間短縮になる優れものだ。
そしてもう1つの特徴は、Visme独自のアナリティクスが活用できること。
例えば、とあるE-bookを何人の人が閲覧したのかを確認するために、エンジニアチーにPDFをサーバーに上げてもらい、Google Analyticsと連携するようにお願いする、ということをせずとも、Vismeのリンクからシェアすることで、何人の人がこのコンテンツを目にしていて、平均的なページ滞在時間がどのくらいかまでを見ることができる。
同社によると、現在120カ国から400万人以上のユーザーがいるグローバルなサービスだ。
3. SNS上のコミュニケーションを最適化:Manychat
カリフォルニア発のスタートアップManychatは、Instagram、 Facebook、SMSのチャットボットサービスを運営している。
今では190か国以上に展開されているグローバルなサービスだ。
Manychatが他のチャットボットサービスと異なる点は、SNSに特化した機能があることだ。
ManychatのInstagramのDM向けチャットボットは、Instagramストーリーズとの連携ができる。
例えば、ストーリーに対して”Ebook”とDMで返信すると、そのキーワードに反応して、DMでチャットボットがEbookのダウンロードの手続きを始める、といったような連携も可能だ。
また、ストーリーで@メンションされた時に、自動的にDMで会話を始めることもできる。
例えば、D2CストアのInstagramアカウントをメンションした人に対して、DMで自動で次回以降使える10%割引クーポンを渡せるなど、販促に結び付けられる。
もちろん、Shopify、Mailchimp、Google Sheetsなどとのインテグレーションも可能で、DM上で得たメールアドレスを元にメールを送信したり、電話番号をもとにSMSでコミュニケーションを取ったりできる。
マーケターにとっては重要となる顧客の接点と、そこでのコミュニケーションの管理を自動化、効率化できるサービスだ。
4. メールマーケティングのデザインならおまかせ:Flodesk
カリフォルニア発のメールマーケティングツールFlodeskを使えば、顧客に配信するメールコンテンツをより魅力的に見せることができる。
リードナーチャリングや顧客との定期的なコミュニケーションにおいて重要な役割を担っているメール。
Newsletterやメールマガジンは、自社の活動を購読者に継続的に共有できる重要なコミュニケーションチャネルと言えるだろう。
そこで大事になってくるのは、まずサブスクライブをしてもらえるか、そして、メール自体の開封率とクリック率。
メールマーケティングに必要な全てのクオリティを上げられるのがflodeskの特徴だ。
Flodeskではまず、メールをサブスクライブするためのLPからデザインできる。Newsletterのサブスクライブテンプレートから、ドラッグ&ドロップで簡単にLPを作成できることはもちろん、登録フォームをWebsiteに改めて実装するといった手間が省けることも利点だ。
また、メールマガジンの平均の開封率は21.5%前後と言われているが、中身の内容が薄かったり、読むメリットがないと思われてしまうと、その次の配信メールを開封してもらえなくなったり、読み飛ばされてしまい、伝えたい情報が伝わらないままになったりする可能性も大いにある。
そのような意味では、デザイン性の高いメールは、ユーザーが「見たい」と思えるコンテンツであるための重要な要素の一つだろう。
また、ShopifyなどのECプラットフォーム、WordpressなどのCMS、各種SNSとの連携も可能。
特にShopifyのアパレルD2Cブランドにとっては、ブランドの世界観の発信という観点でも、おしゃれが好きな人がターゲットとしているという点でも、デザインの凝ったメールを送ることも多い。
その際、グラフィックをAdobe Illustratorで作成して、その画像をコーディングして…といった手間をかけなくても、自由に文字を入れ込み、レイアウトを変更するだけで、ブランドの雰囲気に合ったメールが完成する。
もちろん、グラフィックではなくとも、ブランド独自の写真を使用することも可能だ。
狙ったターゲットに即したデザインで、顧客とのコミュニケーションが図れることは、ブランドイメージの醸成に効果的だろう。
5. コンテンツを入れるだけでお望みの形に変換:Designrr
最後にご紹介するのは、デラウェア発のスタートアップDesignrr。このサービスでできることは大きく2つだ。
1つ目は、E-bookの作成。YouTubeのビデオ、ポッドキャストのエピソード、ブログの投稿などの既存のコンテンツからE-bookが作成できる。1枚1枚別のページになっていたPDF資料をE-bookの形にすることも可能だ。
2つ目は、動画やPodcastの音声コンテンツのスクリプトを自動で生成できるということ。
どのサービスにもデモンストレーションビデオが紹介されており、どのように使用するかがクリアに理解できるが、特に特徴的な既存コンテンツからのE-bookの作成に関して言及する。
デモンストレーションビデオでは、ブログ記事をE-bookに変換しているが、ブログ記事のURLをDesignrr上にペーストするだけで変換できてしまうから驚きだ。
その後、デザインテンプレートの中から好みのデザインを選んだ時点で、E-bookのベースはその時点で完成。
ベースとなるE-bookのフォントや文章コンテンツ、色も変更できる。また、他の記事を追加したかったら追加できる。
満足するコンテンツが作成できたら、Publishを押すだけでPDFの形でエクスポートできる。
コンテンツを1から考える時間、デザインの時間、E-bookを作るためにFigmaをはじめとした複数のサービスを使う場合の金銭的なコスト、全てを削減しつつ、クオリティの高いコンテンツをこのサービス1つで作成できる。
まとめ
今回はMartechの中でも特に、コンテンツマーケティングに特化したアメリカ発のスタートアップとそのサービスをご紹介した。
今回のサービスを調べてみて感じたことは、業務の効率化や他のサービスとのインテグレーションはもちろんベースの機能として備わっているものが多く、ユーザーの心を動かすような工夫がデザイン、コミュニケーション方法でなされていることが多いということだ。
もはやどの企業、役職でもマーケティング視点、デザイン視点は必須になってきている。ユーザーの心をつかむにはどんな工夫が効果的なのか、今回紹介したようなサービスから学べることも多いだろう。
btraxはサンフランシスコと東京にオフィスを持つデザイン会社として、今後もアメリカの最新スタートアップ情報を発信していく。ぜひ次回もご期待いただけたら幸いだ。
参考
- https://explodingtopics.com/blog/martech-startups
- https://chiefmartec.com/2021/09/47-new-martech-companies-just-two-days-y-combinator/
- https://chiefmartec.com/wp-content/uploads/2022/05/state-of-martech-2022-report.pdf
- https://explodingtopics.com/blog/marketing-trends
- https://www.geekly.co.jp/column/cat-technology/martech_companys_introduce/
- https://business-textbooks.com/mar-tech/#toc-2
- https://chiefmartec.com/2022/05/marketing-technology-landscape-2022-search-9932-solutions-on-martechmap-com/
- https://ferret-plus.com/50429#p2
Ayaka Matsuda
松田彩佳
Marketing Associate
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