インターネット上で数多くのECサイトが売上げを伸ばす中、アパレル業界ではオンラインの特性を活かした接客が盛んになり、導入するメーカーやブランドが増加しています。今回は、実店舗での接客とは大きく異なるオンライン接客のあり方やメリット、現状などについて紹介します。
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オンライン接客とは?
アパレル商品を購入する際、多くの人が店舗スタッフに商品のポイントを聞いてコーディネートの参考にします。しかし、コロナ禍以降、感染防止の観点から店先でスタッフの意見を聞きながら、じっくり商品を選ぶ来店客は大幅に減少。売り上げにも大きく影響が出る中、ZOOMやチャットツールなどを使って顧客とコミュニケーションを取るオンライン接客が盛んになり、現在、ECサイトに注力するメーカーやブランドが積極的に導入を進めています。ITコンサルティングを専門とする株式会社アイ・ティ・アールが2018年に実施した調査でも、2016〜2021年にかけてのオンライン接客のマーケットは、年平均で34.6%の成長が見込まれると予測。巣ごもり需要の拡大などもあったため、実際にはこれよりもさらに大きな伸びを示しているかと思われます。対面販売がいまだ根強いアパレル業界ですが、今後は、実店舗がショールーム、購入はオンラインという役割分担がさらに強まると予想され、DXへの移行が必須事項となってくるでしょう。
デジタル接客との違い
オンライン接客とほぼ同義語で語られるのがデジタル接客という言葉。オンライン接客が1対1のコミュニケーションを指すことが多いのに対し、デジタル接客は、SNSのライブ機能を使ったライブコマースの手法など、1対N(多数)のPRが中心とされ、こちらはテレビショッピングなどに近いものと考えられています。明確な区分がないこの2つの接客システムは、メーカーやブランドによって捉え方が異なり、それぞれのマーケティングに沿った形で顧客とのコミュニケーションツールとして活用されています。また、顧客のデータをAIが解析し、チャットボットなどで自動対応するシステムもデジタル接客の一つとして浸透しています。
メリット・デメリット
社会のニーズに呼応するように進化を遂げてきたオンライン接客。アパレル業界で導入する上で最大のメリットと言われているのが、集客率と成約率の増加です。ロケーションにより来店客が限られる実店舗とは違い、オンライン接客では全国各地の顧客との手軽なコミュニケーションが可能。子育て中の母親やベテラン・シニアなど幅広いスタッフを揃えることでニーズに沿ったアドバイスを送ることができ、客層の拡大にも繋がります。実例として、売り上げに伸び悩んでいた地方の販売員が、オンライン接客で都市部に匹敵する成長を見せたという事例も聞かれます。
一方、デメリットに目を向けると、コストや手間がかかることが第一に指摘されます。しかし、近年ではECへの参入もハードルが下がっており、増えすぎた実店舗を減らすなど、コスト削減の効果を考えれば大きな問題ではないと思われます。もう一点は、やはり対面販売のように商品を手にとって特徴を知ってもらうことができない、スタッフがネット越しのコミュニケーションに順応するための時間がかかるというところにあります。この点については、マニュアルなどを作成してオンライン接客のシステムを確立することが第一の課題となるでしょう。
オンラインでの接客ポイント
オンライン接客で成約率を上げるには、対面販売の要素に加え、インターネットならではの特性が重要となってきます。
まず、オンライン接客を行う場合、スタッフは顧客のニーズをある程度把握した状態が前提となってきます。対面販売のように趣味嗜好を探りながら距離を詰めるコミュニケーションではないため、本題から話を始められるのは合理的ですが、ともすればスタッフ側が一方的に話してしまうという状態になりがちです。プレゼンテーションだけにこだわるのではなく、顧客が質問したがっている気配を察知し、対応するという、おもてなしの精神は対面販売と変わらず求められるところです。画面を共有してコーディネートの参考資料などを提示する際も、スムーズな操作をこころがけ、ストレスを与えないようにしましょう。また、スマートフォンやパソコンのモニターを見続けていると著しく体力や集中力を消耗するので、限られた時間で要点を伝え、顧客の要望も聞くための段取りをしっかり組んでおく必要があります。
取り入れているブランド例
ベイクルーズ
ベイクルーズストアが展開している「Online Styling Service」は、接客を希望するスタッフのスケジュールから都合の良い時間を選択し、顧客情報を入力すると予約が完了。直後にZOOMミーティング用のアクセスURLが送られ、当日にアクセスするだけでファッションアドバイザーに相談することができます。手順が簡単でスマートフォンやパソコンなど端末を問わず利用できることから利用者数、顧客満足度ともに上昇しています。
23区
オンワードのブランド・23区では、ビデオ通話の機能を利用したオンライン接客システム「#StayStylish STORE」を提供。事前予約を行うことで、実店舗と遜色のないスタイリングのアドバイスを受けることができます。担当するスタッフは、いずれもInstagramやブログで自身のファッションについて発信しているので、信頼度は抜群。また、このシステムでは、23区以外のオンワードブランドの商品も購入することができます。それぞれの店舗を見て回るよりも効率的で、大手の利点を活かしたサービスが利用者の増加に繋がっています。
ボッテガ・ヴェネタ
イタリアのラグジュアリーブランド、ボッテガ・ヴェネタでは、ブラウザ上で高品質なビデオ通話を行えるシステム・ライブコールを使用し、オンライン接客を実施。事前に要望を伝えておくことで知識豊富なスタッフがニーズに沿った商品や新たなコーディネートを提案してくれます。サイズや素材の質感など、細かいニュアンスについてもじっくり説明してくれるので、実際に店頭に行っているかのようなショッピング時間を楽しむことができます。
アダストリア
アパレルだけでなく飲食事業も展開しているアダストリアでは、グループの公式WEBストア内の「STAFF BOARD」で、店頭スタッフが自身のスタイリングやライフスタイルを発信。約1500人ものメンバーによる投稿は膨大なデータベースとなっており、性別・ブランド・身長などを選択することで、ニーズに沿ったスタッフのスタイリングを見ることができます。また、Instagramのライブ配信による商品紹介が好評だったことを受け、2020年には動画コンテンツ「.st CHANNEL」を開設。Webストアとも連動し、視聴者の購買意欲を高めています。
TEXT:伊東孝晃
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