伊勢丹新宿本店の外観
Image by: FASHIONSNAP
三越伊勢丹ホールディングスが、6月29日に外商事業説明会を投資家およびメディア向けにオンラインで開催した。同社は今年4月から外商組織を縦割りから横割りに変更した新体制で本格稼働しており、「三越」「伊勢丹」の暖簾を超え、場や店舗にとらわれないサービスを強化する方針。取引先や海外の駐在メンバーとも連携し、海外ブランドのショールーム訪問やパリコレクションのショー観覧のツアーを企画・同行サポートするなど“百貨店外MD”にも力を入れ、好調に推移している外商売上の拡大を図る。
同社の百貨店事業は2022年3月期の通期において2期連続の赤字を計上したが、伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店の実績を合計した個人外商売上はコロナ前(2020年3月期)を10.3%上回る790億円に着地した。両本店の買い上げ額上位5%の顧客による売上シェアは、伊勢丹新宿本店で50.9%(2021年3月期から3.2ポイント増)、三越日本橋本店で48.3%(同 3.0ポイント増)となっており、百貨店事業の業績を支える重要な収益源となっている。主に伊勢丹新宿本店では30〜50代の経営者を中心に若年層の外商顧客が増えているといい、49歳以下の顧客による購入額シェアは28.8%(前年比5.2ポイント増)に伸長した。50〜60代は定番品を求める傾向が強かったが、若年層からはモード系のブランドアイテムの需要が高く、「ファッションの伊勢丹」という強みを活かせているという。
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売上拡大につながった要因として、長い歴史の中で蓄積してきた商品供給力と、商品カテゴリーの専門性に強みを持つ「ストアアテンダント」やバイヤーなどとの社内連携力に加えて、伊勢丹新宿本店では1対1の接客方式をチーム制に変更し、数人体制で接客を行うことによるレスポンスの早さが高い評価を得ている。顧客満足度につながり、外商顧客の紹介による入会希望者も増えているという。こうした成果は外商統括部を一新したことで得られたものとしている。また、チーム制にしたことで、従来の担当制の接客では改善が難しかった働き方改革にもつながっているという。説明会に出席した三越伊勢丹 外商統括部個人外商グループの種村俊彦氏は、チーム制を先行導入した伊勢丹新宿本店での成功例から、チーム制について「今後の外商統括部の働き方の中心となるだろう」と話した。
今後は「百貨店外MD」を強化し、富裕層の暮らしに寄り添うエコシステムを確立させていく方針。これまでは体制上、店舗で扱わない商品に関する要望があっても対応が難しかったが、社内や取引先との連携を強化できる体制に変わったことで、車や不動産関係を中心に売買につなげることができているという。手数料ビジネスでもあることから収益向上も狙っていく考えだ。
説明会ではその他の「百貨店外MD」の成功事例として、海外ブランドのショールームを訪れ、買い付けではなくパーソナルオーダーとして注文したドレスを半年後に着用してパリコレクションのショーを観覧するという、店舗の外を出た「現地でのおもてなしツアー」を紹介。これも社内および海外駐在メンバーとのスムーズな連携があったからこそ実現した取り組みとしている。7月上旬にも若い世代の外商顧客6組を招待し、ブランドのイベントに参加できるツアーを実施する予定だ。
なお、今期(2022年3月期)の個人外商売上については860億円を見込む。
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