今、ヘルステックが世界的にも需要が急拡大していることをご存知だろうか。
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2021年は、ヘルステック領域のスタートアップへの年間投資額が2020年に比べ倍増した(下記グラフ参照)。
2021年には、2013年から2017年までの5年間を合わせたよりも多くのヘルステック領域のスタートアップに投資が行われたそうだ。
この流れは、紛れもなくコロナウイルス感染症の感染拡大が影響しているだろう。
病床逼迫に伴う入院難民や自宅療養者の発生、ワクチン接種関連業務等、コロナウイルスの対応が医療・ヘルスケア領域におけるさまざまな課題を浮き彫りにした。
また、その中でも対面での対応を極力控えなければいけない状況も、医療やヘルスケア分野のオンライン化を強力に押し進めた。
世界的に注目が集まるヘルステック市場。
中でも特に、米国のヘルステック市場はグローバル市場を牽引しており、2024年までに 1,520 億ドル(= 約19兆8,278億、*2022年4月時点)規模にまで成長すると予測されている。
今回はそんなヘルステック先進国、アメリカ発のヘルステックスタートアップの中でも、ITを使って時短、業務効率化にとどまらない新たな価値を生み出していたり、特定のターゲットに対して価値貢献しているサービスを取り上げて紹介する。
アメリカ発HealthTechスタートアップ5選
- LunaJoy:女性向けのメンタルヘルスケアサービス
- Alfie:男性向けの減量・健康維持の遠隔サポートサービス
- Ankr Health:癌の治療をサポートするプラットフォーム
- reviving mind:高齢者の孤独とそこから生じる病気を防ぐサービス
- JOON:ADHDの特徴を持つ子のための To-Do管理アプリ
1) LunaJoy
LunaJoyは、フロリダ発の女性向けのメンタルヘルスケアサービス。2022年の国際女性デー(3/8)にローンチされたばかりのサービスだ。
幅広い年代の女性に対して、あらゆるライフステージでの悩みを軽減/解消するため、オンラインでのコーチングや、ヘルスケアチームに24時間365日アクセスし、相談できるオンラインナビゲーターなどを提供している。
個人向けでも法人の従業員向けでも利用可能だ。
自分が抱えている精神的な症状をフォームに入力して送信すると、カウンセラーとオンラインでの1:1のコーチングセッションが受けられる。
このサービスの特徴は大きく分けて2つだ。1つ目の特徴は、悩みに合わせて細かくメニューが分かれており、かなり具体的な悩みに即したカウンセリングが受けられることだ。
メニューとしては、日常で感じる精神的に不安定な状態を解消する目的のメニューもあれば、女性のライフイベントに即したカウンセリングを提供するメニューもある。
- 不安
- 倦怠感
- 大切な人の逝去による悲しみ
- 不妊カウンセリング
- 妊娠出産における精神的負担
- 出産時のトラウマ
- 産後うつ・産後不安やその他の関連疾患による精神的な負担
- 育児の悩み、思春期の悩み
- 更年期の悩み
メニューを見ても、女性のライフサイクルに合わせて、どんな年代の、どんなライフフェーズの女性に対しても開かれたサービスというコンセプトであることが理解できる。
今後ますます多様化する女性の生き方と、それに伴う精神的な悩みを解消できることは、多くの女性にとって助けとなるだろう。
2つ目の特徴は、カウンセリングだけでなく、投薬での治療が必要な相談者には、薬物療法を提供していることだ。その際は相談者の遺伝子検査の結果に基づき、相談者にとって最も効果のある薬を提供している。
推測ではなく、遺伝子検査という客観的な事実に基づく診断、投薬ができることは強みである上、Lunajoyの場合、これらの情報の見せ方として、過剰にハードルを高く見せていないところが特徴だ。
オンライン上でフォームへの動線もシンプル。
そのため、スムーズに情報を入力して、申し込みができるところは、「病院には行きたくないけれど、客観的な診察を受けたい」「まずは抱えている悩みを話したい」人にとって、気軽にかつ安心して任せられるサービスではないだろうか。
このサービスのカウンセラーは女性のメンタルケアを専門としており、サービスの設計としても女性が対象となっているが、男性でも登録すればサービスの利用は可能だ。
2) Alfie
Alfieは、男性向けの減量・健康維持の遠隔サポートをするサービス。
具体的なサービスとしては、 FDA(アメリカ食品医薬品局)承認薬の処方、減量をサポートする1:1 ヘルスコーチの利用、減量を目指す他のメンバーとのコミュニティに参加することができるなど、減量に対して総合的にバックアップするサポートがある。
このサービスのユニークなところは、「男性の減量の成功」を徹底的に追求したこと。
Alfieが男性に特化した背景は、男性は女性と同じような肥満率であるにもかかわらず、競合の減量プログラムの「食事制限」などの戦略が男性には女性ほど効果的に機能していないためだ。
競合のプログラムの一例としてLEAN プログラムダイエットが挙げられるが、確かにファスティング、エクササイズ、食事記録を行うといった内容だ。
男性はより筋肉質な体を好む傾向にあり、しっかり食べて、かつ痩せすぎないことを望む傾向にある。
そのため、男性の多くが、ほとんどの減量プログラムは「女性向け」に作られていると考えていることが研究で明らかになっている。
対して女性は筋肉質というよりは、よりスリムなスタイルを手に入れる、体重を減量することに重きを置く人の割合が男性よりも多い傾向にある。
ジムに通う時間がない、ジムを契約しても結局失敗してしまう、それでも痩せたい、という男性のために、アメリカ食品医薬品局承認の減量薬の提供、ヘルスコーチがついて相談ができ、同じ目標を持つ仲間と共にプログラムに参加できるサービスはありがたい存在ではないだろうか。
欧米では、BMIが25以上の割合が半数以上を占めている。
その結果、肥満に起因する心筋梗塞やがんで多くの方が亡くなっており、”アメリカ人の死亡理由の13%は、BMIが25以上の肥満に起因している”との推計もあるほど、肥満はアメリカで大きな社会問題になっている。
肥満大国であり、医療費の自己負担も高く、予防医学が重要視されるアメリカの課題に、ダイレクトにアプローチするサービスと言えるだろう。
3) Ankr Health
Ankr Healthは、癌治療クリニックに通う患者に対して、治療の全てをサポートするプラットフォームを提供するサンフランシスコ発のスタートアップ。
癌のある体の部位と、進行ステージを選択すると、AIが最適な治療法を複数提示してくれる。患者は医師と相談しながら、自分に合った治療法の検討・選択ができる。
癌は一般的に、抗がん剤や放射線など、治療方法が複数ある病気。患者の意思決定でどの方法を採るかの意思決定と、それを医師と相談できることが強みだ。また、副作用の予防・管理までこのプラットフォーム上で可能だ。
このプラットフォームの特徴は、医師や治療チームにはもちろんのこと、自分の症状を知っておいてほしい家族や身近な人とも自分の情報が連携ができることだ。
副作用や治療の進行状態はもちろんのこと、治療の日記やボイスメッセージも残せるようになっており、患者の身体の状態だけでなく、心の状態をも記録し、共有できるようになっている。
また、患者の個人情報を扱うこのプラットフォームで重要になってくるのは、治療のための情報の正確性や、患者の情報を守るセキュリティ面だろう。
この点に関し、Anlr Healthでは、政府機関の国立がん研究所の情報を採用するなど、権威性の高い情報を引用している点や、確固としたPrivacy policyが確立されている点など、情報の正確性やセキュリティ面も担保されている。
4) reviving mind
reviving mindは、高齢者の孤独・孤立に対処し、そこから生じる病気を防ぐ保険対象サービス。サービス利用者は、他のサービス利用者と6~10名のグループを組んで、グループサポートを受けられる。
このサービスが競合サービスと異なる点はグループサポートのみならず、ライフスタイルに合わせて栄養バランス、食生活、マインドフルネス、睡眠、タバコやアルコールとの付き合い方、人間関係、といった、幅広い健康に関わる項目に対して、利用者が相談したいことを解消できる、スタッフとの1on1のセッションを提供していることだ。
社会的な生物である人間にとって、孤独が健康に与える悪影響はかなり甚大だ。
アメリカ・ブリガムヤング大学の研究によると、「社会的なつながりを持つ人は、持たない人に比べて、早期死亡リスクが50%低下する」とまで言われている。この死亡リスクは、1日15本の喫煙に匹敵するほどだ。
アメリカは特に国土が広く、気軽に人と会うことが困難になりやすい。
まして、年を重ねて体力が落ちてきたりしたら長距離の移動も憚られ、なおさら孤独感が増すばかりという方もいる。
そんな方に対して、オンラインで家から誰かと交流できる、そしてさらに自分が年齢とともに気になる心身に対しての問題を相談できるサービスは、いつまでも心身ともに健康でいたい人にとって大きな効果を発揮する。
一人暮らしの高齢者にとっては特に、孤独感の解消や社会との隔絶感を解消できる。
「参加し始めて、一緒に笑ったり話したりする存在ができたことで、自分は一人ではないと感じることができた」という実際の利用者の声もある通り、楽しみながら健康を維持する助けになるサービスと言えるだろう。
5)JOON
JOONは、注意欠如・多動症(ADHD)の特徴を持つ子のための To-Do管理アプリ。
言葉で伝えるだけで行動に移したり、物事を習慣となるまで続けることが難しい子も、ゲーム形式で楽しみながらToDoをこなすことができるようになっている。
ゲームの内容は、クエスト(毎日のタスク)を達成するごとにバーチャルペットを成長させることができるというもの。
親が子にやってほしいことを、クエストとして設定することも可能だ。
もちろん親として、まだ安全/危険の分別がつけられない子どもにアプリを触らせる不安があるかもしれないが、個人情報の入力は最低限で、ゲームの中でも暴力的な内容は表示されない、子どもが使うにも安全なアプリになっている。
注意欠如・多動症(ADHD)の特徴を持つ子は、集中力を持続させることが苦手。
身の回りのことがうまくできず、家や学校で叱られることが多くなってしまい、自尊心が低下することが多くなる。
自尊心の低下や失敗体験が積み重なると「うつや不安障害といった二次障害」を合併しやすくなる。
重い二次障害を起こしてしまうと、なかなか元の生活に戻るのが困難になる可能性もある。
一方ADHDは、うまく折り合いをつけて付き合っていくもの特性と言われている。
したがって、やることをリストアップしておく、スケジュールを見えるようにしておくなど、可視化しておくことで物忘れを防ぎ、指示を明確に書き出しておくことでタスクを実施できるようにするといった工夫が必要だ。
このゲームはタスクを可視化してそれをやり遂げることに喜びを見出す手助けをしている。
今後の生活においても、やるべきことを可視化して一つずつ解消していく方法を学ぶ手助けとなっているのではないだろうか。
まとめ
今回はヘルステックにまつわる5つのスタートアップとそのサービスをご紹介した。
ITの力で、業務効率化にとどまらないヘルスケアのサービスが提供されていることが理解いただけたかと思う。
また、特にLunaJoy、Alfie、Ankr Health、Reviving Mindは、一人のユーザーに対して、幅広い解決策を提供している。
それは、ユーザーが「何か困ったら、またこのサービスに頼ろう」という感情を抱きやすくなる効果があり、サービスのファンを増やす一因でもあるのではないか。
「健康」が何にも変えられない資産であり誰にとっても健康であることが一番であるからこそ、ヘルステック領域は今後も社会に大きな影響を与えていくと予測される。
Ayaka Matsuda(松田彩佳)
Marketing Associate
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