論文代筆に試験代行──急増する学生の”ゴーストライター”
COLLAGE: VICE || HÄNDE MIT GELD: IMAGO / PANTHERMEDIA || LEUTE AN DEN TISCHEN: IMAGO / SCIENCE PHOTO LIBRARY
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論文代筆に試験代行──急増する学生の”ゴーストライター”
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2人の学生が他人のテストを受けてお金を稼ぐ仕組みを明かした。
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By Robert Hofmann Translated By Nozomi Otaki
この記事はVICE Germanyに掲載されたものです。
COVID-19は、大学生の講義や試験にも大きな影響を与えた。キャンパスへのアクセスが制限されたこの2年間、世界中の大学がオンライン試験へと移行している。これは予防対策としては理に適っているが、同時に収拾のつかない事態を引き起こした。
それが、まさに今のドイツで起きていることだ。大学生は試験監督の監視の目がないのをいいことに、eBayに学業の問題解決を求めた。このサイトには、あなたの代わりに努力と勉強を引き受けてくれるゴーストライターが待ち構えている。もちろん有料で、だ。
カンニングは英国の教育機関にとっても大きな問題であり、学者たちは抜け道のない試験の考案に乗り出した。例えば、教育情報誌〈Times Higher Education〉によると、エクセター大学の専門家チームは、ひとクラスにつきコンピューターが生成した60の異なるデータで試験を行うシステムを試行中だという。
極端に思えるかもしれないが、これらの対策に根拠がないわけではない。パンデミックのさなか、学生が学位をお金で買えるサイト、通称〈論文工場〉がネット上に急増している。『ガーディアン』誌の報道によれば、2021年、この種のアクティブサイトは英国だけで881個から932個へと増加した。
数学を専攻する23歳のハンスとコンピューターサイエンスを学ぶ26歳のユルゲン(もちろん2人とも仮名)は、生活していくために、ゴーストライティング業界でこのブームから利益を得ている。
彼らのやり方は至ってシンプルだ。料金に関して依頼主の学生の同意が得られたら、大学のログインアカウントを共有してもらう。その後ユルゲンかハンス、もしくは他のメンバーが試験を受けるだけだ。学生がカメラに顔を出さなければいけない場合は、WhatsAppのようなメッセージアプリで質問と答えをやりとりする。
VICEは、このふたりにクライアント、料金、刑罰の可能性について話を聞いた。
VICE:他の学生の代わりに試験を受けているそうですが、ふたりとも優秀なんですね。
ハンス:自分たちの専攻科目の成績がすごくいいんです。
ユルゲン:大学でチューターを始めてから4〜5年になります。スタディグループの監督をして、回答の修正を手伝ったりしています。テストや課題をたくさん見てきたので、試験にパスする方法がわかるんです。
それをサービスに発展させるというアイデアはどこから?
ユルゲン:数学の試験で困ってる友だちがいて、コーヒーを飲みながら一緒に問題を解きました。その後、一緒に住んでいた子に課題を手伝ってほしいと頼まれて、ハンスと一緒にやりました。
彼は料金を払いましたか?
ユルゲン:終わった直後にPayPalで40ユーロ(約5500円)送ってくれました。
ハンス:その後彼に、もっとこういうことをやって金を稼がないか、と訊かれたんです。
起訴される可能性はないんですか?
ユルゲン:ドイツのどの大学にも、他人の答えを代筆してはいけない、または誰かに答えを書いてもらってはいけない、なんていう規則はありません。それは卒業論文も同じです。法的責任を負うのは論文を提出するひと自身です。でも、当たり前ですが、このことを公にしたくはありません。
なぜですか?
ユルゲン:大学には素行不良を理由に学生を退学させる権利があるので。
どのように自分を守っていますか?
ユルゲン:他の誰も知らない匿名のメールアドレスと電話番号、僕たちの名義ではないPayPalを使っています。
ハンス:僕たちを探し出すのはかなり大変です。警察が僕たちを捕まえたいなら、僕たちが試験を代行しているひとたちの捜査令状を取る必要があります。警察がそこまでするとは思えません。
クライアントはどれくらい用心していますか?
ハンス:全く気にせず、リスクを完全に過小評価しているひとがほとんどです。大学のアカウントにアクセスできるメールアドレス、パスワード、学籍番号を全部伝えてきたひともいました。個人用PayPalで送金するひともいます
お客さんはどこで見つけるのですか?
ハンス:eBayに行けば数百人がゴーストライターを探しています。そこでそういうひとを見つけて、僕たちから連絡を取ります。
利益はどのくらいですか?
ハンス:今年の先学期に始めたばかりです。レートは1時間100ユーロ(約1万3700円)です。
ユルゲン:これまでにだいたい6000ユーロ(約82万5000円)稼ぎました。
一番お金になるのは?
ユルゲン:応用科学を学んでいるひとの論文を書くことが多いです。簡単なものばかりですよ。
ハンス:朝食を食べながら300ユーロ(約4万1000円)稼げます。伝統的な大学(の課題)はもっと大変ですけど。
よく依頼してくるのは?
ハンス:経営学専攻の学生ですね。経営学とか経済学とか。統計学、推計学(数理統計学の一分野)、ミクロ経済やマクロ経済も多いです。彼らにとってはあらゆる世界がビジネスなんでしょう。
常連客はいますか?
ユルゲン:先学期に依頼して、そのあと僕たちが対応可能な科目ばかり履修登録したひとがいました。もう勉強する必要がないと気づいたのか、彼は今学期も申し込んできました。
つまり、この料金を払える学生は簡単に学位をお金で買えるということですよね。
ハンス:そうです。お金に余裕のあるひとだけですけど。
ユルゲン:経済学専攻にそういう学生が多いみたいですね。
大学側も懸念しているのでは? 対策はしていませんか?
ユルゲン:ドイツ西部のある大学が試験前に冊子を配ったんですが、その中にゴーストライティングについての記載がありました。大学はゴーストライティングの存在を認識していて、決してそれを容認しない、誰かに依頼した学生は罰せられる、と書かれていました。でも、それは抑止力にしかなりません。
つまり実際の予防措置は何もないと?
ハンス:ときどき、カメラをオンにしなければいけない試験があります。そういう場合はWhatsAppで手伝います。僕たちが携帯に答えを送っていても誰も気づきません。それに、回答が出回ることもあります。友だちがいて、携帯さえ持っていれば、誰でもグループチャットで一緒に問題を解けますから。
コロナによる規制が緩和し、またキャンパスで試験を受けるようになったらどうしますか?
ハンス:別に気にしません。お金は必要ない。どのみち僕たちももうすぐ卒業して、ちゃんとした仕事に就かないといけないので。
ユルゲン:それもいいことだと思います。結局、僕たちが手伝ってるのは学位にはふさわしくない学生ですから。
ハンス:それで300ユーロ稼いでると、そんなことはすぐ忘れちゃいますけどね。
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