基幹店の伊勢丹新宿店
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三越伊勢丹ホールディングスが2022年3月期の通期業績を発表した。百貨店業は前期から239億円改善したののの、営業損失63億円を計上し、2期連続の赤字となった。一方で、個人外商セールスは好調に推移しており、伊勢丹新宿店と日本橋三越本店の外商売上は前期から180億円増、前々期から74億円増の790億円に着地。今期(2023年3月期)の外商売上は860億円を見込む。
同社は“高感度上質”戦略の一環として、個人外商で従来の1対1型の接客を刷新。外商セールスの力に、AIを用いた「データ分析」、各ストアのバイヤーの感性を活かした「バイヤーネットワーク」、商品カテゴリーの専門性に強みを持つ「店頭アテンダント」の3つをかけ合わせ、組織全体で商品提案を行っている。同社はコロナ禍でインバウンド売上が落ちたものの、外商では顧客の人数と買い上げ額ともに伸長。店頭アテンダントが外商顧客が求める商品に付随した買い物のサポートを行うことで購買額が上がったという。この取り組みは基幹店の伊勢丹新宿店と日本橋三越店で先行導入しており、他の支店や地域店にも展開して売上を拡大させる計画だ。なお、2022年3月期末時点の両基幹店の全体顧客数に対する外商顧客数の比率は約2割を占めている。
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三越伊勢丹ホールディングスの連結業績では売上増加による差益増や収益構造改革がプラスに働き、新しい会計基準を適用した売上高は4183億円、営業利益は計画値の30億円に対し59億円と上回った。今期は売上高4940億円(同18.1%増)、営業利益140億円(同135.7%増)を目標に掲げ、百貨店業では4140億円、営業利益40億円の黒字転換を目指す。近年力を入れるオンライン売上は440億円を見込む。
今年4月度の月次売上においては伊勢丹新宿店がコロナ前の実績を超え、5月度はゴールデンウィーク商戦の追い風もあり前月よりも10%上回って推移するなど、すでに手応えを感じているという。4月度はラグジュアリーブランドのバッグやシューズ、宝飾品、時計、絵画をはじめとするアートなどの高額品が外商顧客を中心に売れた。国内アパレルの消費も戻ってきているという。日本政府が6月をめどに外国人観光客の新規受け入れ再開を検討するという報道もあり、インバウンド売上回復にも期待がかかる。しかし、インバウンド売上の9割が中国人によるもので、中国では現在上海でロックダウンが続き、北京でもロックダウンが噂されるなどの状況を鑑み、細谷敏幸 取締役代表執行役社長CEOは「中国の動向がどうなるのか、そちらが非常に大きい」として慎重な姿勢を示した。
なお、百貨店事業を展開する競合企業も外商売上は好調で、具体的な外商売上を開示していないが、高島屋(2022年2月期)では外商売上の増加率が前年比17.7%増、高額品売上は33.6%増となったと発表。松屋(2022年2月期)も外商会員の売上高が29%増、そのうち年間100万円以上を買い上げた外商会員数は32%増加したという。J.フロント リテイリング(2022年2月期)は外商売上高2000億円規模を目指すと公表している。
■三越伊勢丹ホールディングス
・2022年3月期通期連結業績
総額売上高:9121億円(11.8%増)
売上高:4183億円
営業利益:59億円(前期は209億円の赤字)
・2023年3月期 通期見通し
総額売上高:1兆500億円(15.1%増)
売上高:4940億円(18.1%増)
営業利益:140億円(135.7%増)
■百貨店業単体
・2022年3月期通期実績
総額売上高:8617億円(14.6%増)
売上高:3739億円
営業損益:63億円の赤字(前期は303億円の赤字)
・2023年3月期 通期見通し
総額売上高:9600億円(11.4%増)
売上高:4140億円
営業利益:40億円
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