今年4月から不妊治療が保険適用になった。体外受精などの治療全てが保険適用対象となり、窓口での治療費が3割負担となる。これまでは自費負担だったことから、その反響も大きなものとなった。
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そんな不妊治療領域にフォーカスし、これまで事業を展開してきた会社がある。「AI×女性医療」を軸にサービスを展開するvivola株式会社だ。不妊治療患者向けの治療データ検索アプリ「cocoromi」を開発・運営しており、先日新たに株式会社 明治とコラボレーションした特別コンテンツを公開した。
そのコンテンツは妊活に必要な栄養素の説明、それらの栄養素を含んだレシピ特集だという。どのようなコンテンツなのか、そしてコラボレーションに至った経緯をvivola株式会社のCEO 角田夕香里さんに聞いた。
患者と医師の両方の課題解決を目指す
vivolaは女性医療×AIを事業領域とし、特に創業初期は不妊治療の領域にフォーカスして事業を展開してきた。ここでは不妊治療患者向けの治療データ検索アプリ「cocoromi」をはじめ、不妊治療の医療機関向けのデータ解析業務等も行っている。
角田さん自身も経験のあるという不妊治療に対し、患者と医師の両方の課題解決を目指し、不妊治療の世界をより良くしていきたいと考え会社を設立したという。
「2021年4月に『cocoromi』をリリースした当初は広く認知拡大をしていくよりも、アプリに賛同いただける自治体や医療機関にリーフレットやポスターを置いていただくなど、地道に患者の皆様に知ってもらう活動をしてまいりました。不妊治療はセンシティブな話題であるのと同時に医療領域なので、民間企業だけでなく、弊社の医療監修の先生をはじめ治療に携わっている医療機関の方々にご理解、フィードバックをいただき、ユーザーである患者さんの正しいリテラシー向上のサポートしていくべきだと考えております。」
明治とのコラボでおすすめレシピを提案
『cocoromi』には主に治療ログ機能、データ分析機能、トークルームのコンテンツがある。治療ログ機能では、不妊治療は高頻度な通院のスケジュール管理や血液検査をはじめとした多くの検査や服薬の記録をアプリで一元管理できる機能を搭載。
データ分析では過去に不妊治療をしていた方の治療の統計データと、その中から治療ログ機能でデータを登録すると、「自分の似た人」の同質データが閲覧でき、より自分に合った治療がどのようなものなのかを知り、自身の治療への理解や今後の治療計画に役立てられるという。
トークルームではリアルな友人同士ではなかなか話づらい不妊治療についての疑問を、患者同士が治療内容や費用、治療の卒業やパートナーシップなどテーマごとに話し合える場となっている。
「特にデータ分析機能は他社にはない機能で、不妊治療で過去に妊娠された方のデータが参照できる点と、そのなかから自分に合った情報を同質データで閲覧できるので、定量的かつ個人にとって付加価値のある情報の提供が強みです。」
不妊治療はこれまで自費診療だったため、病院によって治療方針や受けられる検査、費用が異なっており、患者が治療を体系的に理解することが難しいと感じたことが「cocoromi」開発の背景にある。
「世の中にどのような選択肢があって、自分に必要な治療は何なのか、データエビデンスに基づいて知りたかったけれど、そのようなデータを閲覧する方法がありませんでした。長期に渡る治療優先のスケジュール管理の負担や高額な治療費負担を抱えた、非常に負担の大きい治療生活を経ても授かれない可能性もあるなかで、自身も『治療でできることはやった』と納得して治療を卒業したいと思い、サービスを作りました。」
今回『cocoromi』に新たに登場したのが「明治の食育おすすめレシピ」だ。このコンテンツでは妊活に必要な栄養素の説明、それらの栄養素を含んだレシピを明治の食育サイト「明治の食育 おすすめレシピ」から管理栄養士が厳選して紹介するコンテンツとなっている。
「今回のコラボレーションは株式会社 明治様の運営するアクセラレータープログラムに採択いただいたことがきっかけで始まりました。弊社のアプリは主に治療に関する情報提供になりますが、毎日の食事を気にされているユーザーさんも多く、より日々の暮らしの中で役立てていただく情報を提供したいと思い、レシピ掲載を弊社から提案したのです。」
実際に利用したユーザーからは「毎日の食事について見直すきっかけになった」「治療以外に自宅でケアできることがわかって嬉しい」「男性に必要な栄養素やレシピも増やして欲しい」などの声が上がっているそう。今後のレシピの拡充では、治療中は女性側の通院負荷が高いこともあり、時短レシピや普段料理をしない方も作れるような簡単なレシピを追加していきたいとのこと。
「不妊治療はどうしても治療中心の生活になりやすく、視野が狭くなってしまったり、生活の彩りが失われてしまったりすることが多いと思います。精神的な負担が大きく、パートナーとの話し合いも感情的になるなか、治療の客観的なデータ分析の機能は夫婦で冷静に話し合う材料になったというお声もいただきます。弊社も今後は、このパートナーシップを促進できるようなアプリの機能を追加していき、少しでも治療中の精神的負担をパートナーと共に乗り越えるお手伝いができたらと思っています。」
フェムテックが女性の生きづらさを本質的に解決
今後フェムテック市場はどのように変化していくのだろうか。角田さんの考えを伺った。
「生理や不妊治療など人前では話づらかったタブー意識に関しては、少しずつですが変わりつつあると思います。それは多くの民間企業が、様々な商品やサービスで市場に参入したり、百貨店等の商業施設のリアル店舗も出てきており、女性の生きづらさを話したり、その解決を積極的にしていこうとする女性自身の姿が当たり前だと、社会自体も受け容れてきているからだと思います。その分、私たち女性はその商品やサービスをしっかりと見極め、自分にとって必要なものかを判断していく目利きが必要になってきます。同時に、企業も選ばれる努力を怠ることなく、より良いものを提供してき、このフェムテックの市場が一時的なブームではなく、女性の生きづらさを本質的に解決していく動きになっていくことを願っています。」
婦人科疾患を保有する不妊治療患者も多いといい、治療データを豊富に持っている会社として、「今後も女性ホルモンが影響するライフステージごとの女性の健康課題や現代の女性に多い子宮内膜症等の婦人科疾患領域についても同様に、データエビデンスに基づいて事業を展開していきたい」と最後に教えてくれた。
経済的負担や精神的負担など、多くの課題がある不妊治療。その不妊治療に関する情報面においてアプリを通してあらゆるサポートをしているvivolaの展開に今後も期待したい。
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